第四話 騒乱! 大青寺!
ご覧いただきありがとうございました。
見切り発車は危険だということがよくわかりました。
作者の方の才能、改めて感服します。
ですが、書いて楽しかったのは事実です。
ドォォーーーン
ドラの音が寺内に鳴り響く。
奥の本堂にある境内に剣を持った若者が二人。
一人はジン、もう一人は長老の言っていた孫の男。
(こいつは誰だ?)
ジンはこの男のことをよく知らない。
「これより当主を決める戦いを始める」
長老が大きな声で宣言した。
僧兵たちが二人を遠巻きに囲い
「おおーーー!!」
と声を上げた。
見渡しても知り合いは誰もいない。
(ここは本当に大青寺なのか?)
ジンの動揺は隠せない。
「一人は一般兵より試練を勝ち抜いたジン、もう一人は我が大青寺の精鋭のコウ! この一騎打ちにて勝者を今日からの当主に据える。異論は認めん!」
ジンの体調は少しずつだが良くはなっている。
だが、悪化した原因がわからない。
そして、こんな状態で戦いを命令される理由もわからない。
(俺はここで何をしているんだ?)
グスターブからの依頼とはいえ、当主は悲願だ。
証拠を持ってさえくれば、それで夢は叶ったと考えた。
しかし、延長戦なぞ聞いていない。まして、対戦相手など知らない相手だ。
相手はどれだけ強いのか、それに俺は生きて勝てるのか。
動揺は隠せない。
「では、はじめ!」
その一声で一騎打ちは始まった。
◇
「そろそろだねー」
アリスは太陽の位置を確かめてそう言った。
「そうか」
グスターブも準備を整えた。
「ここは寺の裏門・・・・」
ハルがつぶやく。
「まずは魔方陣を破らないとね。ジンも動きが鈍ければ、大立ち回りはできないでしょ」
と、アリスは裏門の近くの塀を事もなく飛び越えていく。
グスターブ、ハルも後に続く。
「あれ? 見張りがいない」
ハルは普段との違いに疑問を抱く。
「今、ジンが戦ってるからね。その長老の直属兵の見物人たちと、ほら?」
「たしか正門で野党が襲来したと」
「そ、だから一般兵は全員出払っちゃった。今日のイベントは寺にとって門外不出だから。一般兵にはそのことを知らされてはいない。ただ、本堂には近づかないように言われているだけで、それ以外は通常勤務なの」
「お嬢はいつもながらなかなかえげつないな。自分の馬車を自分の自警団に襲わせるなんざ」
「被害がでないからいいでしょ?自警団にも適当に戦って引くように伝えてあるんだから、けが人も出ないよ?」
「そこまでする理由があるんですか?」
ハルの疑問はもっともだ。
もし、グスターブの話が本当でハルやジンが死ぬこととなったとしても、自警団をこんなところに使う理由にはならない。
「あははー、君たちは実はおまけみたいなもんだよ」
とアリスは笑う。
「他に何の理由が?」
魔方陣が敷かれているらしい建物まで走りながら、ジンは問う。
「魔法使いはね、いちゃいけないの。味方ならまだしも、敵ならね」
ハルは驚く。
いままで生きてきた中で魔法など見たことがない。
魔方陣とアリスは言っているが、信じてはいない。
また、自分の寺が敵だというのも意味が分からない。
それならば、グスターブとアリスは自分の敵ではないのか。
ハルは混乱が止まらない。
「ここだね」
ハルは自分の行動を決めかねているうちに目的地に着いたようだ。
建物の中に入る。
「これは・・・・」
ハルはさらに驚く。
確かに入ったことのない建物だ。
その中に大きな円が描かれていて、その中に奇妙な文様がきれいに描かれていた。
「じゃあ、グス。頼んだよ?」
「わかった」
グスターブは右手拳を突き出し、左手で右手の手首をつかむ。
「おおおおお」
目をつぶり、その声にグスターブの体は震える。
全身に力を込めているのだ。
「これは・・・・?」
「グスの魔法だよ」
グスターブの右手拳の少し先から、何もなかった水が宙に浮く。
「そろそろでてようか。巻き込まれるよ?」
と、アリスはハルの手をつなぎ、外へ導く。
ハルは導かれながらも、グスターブから目を離さない。
グスターブが作り出したと思う水の塊はだんだんと大きくなっていく。
やがて、直径が2mを越えたくらいで完全に外にやられ、扉は閉められた。
さて、建物の中。
グスターブは集中を続けていく。
(なかなかしんどいな)
大きな水の塊が魔方陣を覆うくらいの大きさになった時、グスターブは目を開き、右手の拳を大きく開かせた。
その瞬間、水の塊ははじけ、魔方陣をはじめ、床をすべて水で覆っていく。
水が魔方陣をすべて覆ったことを確認したグスターブは、もう一度右手を握り込んだ。
その瞬間、建物内から光が溢れる。
ハルは驚き、なんとか中を見ようと試みる。
アリスはそれを遮った。
「実際に見たら命はないよ? いまの君ならね」
その言葉にハルは踵を返して、見ることを我慢する。
光が収まって、グスターブが建物からでてきた。
「おかえりー」
アリスはグスターブに抱き着く。
「さぁて、こっからが本番だ」
アリアスとグスターブは本堂めがけて走り出す。
ハルもついていくが、一瞬だけ建物の中を見た。
魔方陣が消えていた。
◇
決闘の最中
(たいした奴ではない。だが、体調が悪すぎる)
相手の攻撃をなんとかいなすので精一杯のジン。
幸いに敵の攻撃はすべて見えている。
攻撃に転じる余裕はない。
敵は笑みを浮かべながら、一撃一撃と確実に攻めてくる。
まるで絶対に負けないことを知っているかのように。
(なぜだ。なんとかならねぇか、この体は・・・・)
なんとかしのいではいるが、やがて訪れる決着の時。
キィィン
しのいでいた愛剣が二つに折れたのだ。
(マジでやべえ)
その様子にコウはとどめを刺すべく剣を振りかぶった。
そして、振りおろし、ハルに振れようかとその瞬間
キィィンとコウの剣が弾けていった。
「誰だ!」
長老の声。
「なんとか間に合ったみたいだな」
グスターブの一言。
「おっさん!」
ジンが叫ぶ。
その後ろにはアリスとハルがついてきていた。
「お前らは一体?」
長老が叫ぶ。
僧兵たちは直ちに臨戦態勢に入る。
「マーシャルの領主の娘、アリスだよ!」
と、アリスはエッヘンと両手を腰に当てる。
「ア、アリス殿。なぜ今このような場所に?」
長老は焦る。
「知ってるでしょ? かつての恨み晴らしに来たよ?」
「なんのことでしょうか? わしにはさっぱり・・・・」
「そう? 10年前に私をさらった黒幕をやっと見つけたと思ったのに。なら、こういうのはどうかしら?あなた、魔法、使えるよね?」
その言葉に長老の表情が変わる。
「出合え、出合えー! あいつらは知らない狼藉者だ。生きて返すな!」
その言葉に30人ほどいた僧兵は一気にグスターブたちのもとに襲い掛かった。
「お前、ホント好きだね。そういうの。だから「お嬢」って呼ぶんだよ」
「もー、余裕だからいいでしょ? やっとつかんだチャンスなんだから!」
ハルは戸惑う。
(俺はどうしたらいいんだ? グスターブたちを倒す?)
悩んでいるうちにハルも襲われる。
グスターブはまずジンの下へ向かった。
「大丈夫だったか?」
「ああ、助かった。なぜ助けてくれたんだ?」
「それは、後回しにしようや。まずはこの剣を取って戦え。殺す殺さないは任せるが、できれば生かしてほしいね」
「ああ、わかった」
ジンは体を起こす。
(体が軽い・・・?)
「お、具合もよくなったみたいだな」
「おっさんが何かしたのか?」
「さぁてね」
グスターブは殺陣に混じる。
ジンもそれに応じる。
アリスもナイフで僧兵をさばいていく。
ハルも戸惑いながら、襲ってくる相手を気絶させていく。
やがて、残ったのは長老とコウの二人となった。
長老は力なくその場にひざを折り崩れた。
コウはぺたんと座り込んだ。
決着だ!
ブックマーク、評価ありがとうございます。
見える形の評価は嬉しく思います。
魔法についての伏線は今後に期待ってことで。