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第三話 ハルとジン

ご覧いただきありがとうございます。

さぐりさぐりで書いている分、ところどころ違和感を覚える箇所があるかもしれません。

しばらく、プロローグとして、起承転結のわかりやすい風にはイメージしておりますが、なかなか難しいですね。

「ゆうべはお楽しみでしたね」


グスターブは山彦亭のソファーで寝ていた二人をその言葉で起こした。


「「うああっ」」


二人ははっと飛び上がる。

そして、それぞれに自分の体を確かめる。

着崩れはしていたものの二人とも服は着ていた。


「どうしたんだい?」

グスターブはとても悪い顔をしながら二人に尋ねる。


「あ、朝か・・・・」

ジンが呟く。

そして、グスターブの顔を見るや、自身の顔を真っ赤に染める。


「お、おはようございます」

ハルも絞り出すように声を出す。


「どうだい? リラックスできたかい?」

「ああ・・・・」

「世の中にはこういう世界もあったのですね・・・・」


二人は昨晩のことを思い出しているようだ。


「そいつぁ、よかった。余韻を浸っているところ悪いんだが、ちっと手伝ってほしいことがある。報酬は出す。準備ができたら、飯を食いに顔を出しな」

とグスターブは奥の部屋から出ていった。


「なぁ、ハル」

「なんでしょう? ジン」

「俺たちの視野って狭かったんだな」

「たしかに決闘していたら得られない世界でしたね」

「あのおっさんはすげぇな」

「そうですね。どうして、私たちをもてなしたのか、それがわかりませんが」

「まぁ、おいおい聞いてみようぜ。で、どうする? 手伝うのか?」

「貴方との決闘はいずれすることにして、お世話になっていることには違いありません。私にできることならあの方の力になりたい」

「俺も同じだ。じゃあ、いくか」


服装を整え、部屋を出る。

グスターブが座る席のテーブルに食事が置かれていた。


「おお、来たか。ここだ、来て座れ」

グスターブが二人を促す。


ハルとジンはお互いを見合わせ、それぞれ隣に座る。

昨晩と違い、距離が近くても抵抗はないようだ。

その様子を見て、グスターブはにやっと笑う。


「どうしました?」

その表情にハルがグスターブに尋ねる。

「いや、なんでもねえよ。飲みもんはどうする?ミルクか、オレンジか、コーヒーか?」

「水がいい」

「私もです」

「そうかい、大将水ふたつ!」

「はいよっ」と声が聞こえる。


食事が進む。

若者二人は昨日深酒をしたようで胃に優しいメニューが並んでいるようで手が進む。


「で、手伝ってくれる気になったかい?」

「そりゃ、昨日の恩がありゃ断れねぇ」

「私も同じです」

「そりゃよかった」


しばらく、食事の音だけが店内を支配する。

二人は気が付いた。

食事している3人と大将以外に人がいないということに。


「どうして、私たちだけなんですか?」

ハルが尋ねる。


「そりゃ、この店は夜だけだからなぁ・・・・」

と、グスターブはハハッと笑う。


「で、俺たちは何をやればいいんだ?こういっちゃ悪いが、俺たちは戦うこと以外世界を知らねぇ。おっさんがもてなしてくれなけりゃ、女と話すこともなかった」

食事を先に終えたジンは正直にグスターブに伝える。


「そりゃよかった。お前たちは未来がある。それをがっちりと掴むためにちっとな」

と、ジンに剣を2本渡した。


「それは私の!」

と、ハルが声を荒げる。


「どういうことだ?」

ジンが疑いの目を向ける。


「それをもって大青寺に向かえ。そして、当主とやらになってこい」

グスターブはそう言い放った。


「それは許せません。決闘はまだだし、私は生きています」

ハルは食い下がる。


「わかっているよ。それが今日の依頼だ。ハル、お前にも別件で手伝ってもらう。何、二人を悪いようにはしねえ」

その言葉にハルは次の言葉が出なかった。


「いい子だ。ジン、準備ができたらとっとと行ってこい。ここに野営の準備はある。ここまで一人で来たお前のことだ、道中の魔物も訳はねえだろう?」

「行って、当主になってどうしたらいいんだ?」

「うちの領主が経営する店がお前の所の寺のお得意だってよ、その店を懇意にしてくれたらいい」

「わかった」

ジンは剣と荷物を受け取って、すぐに旅立っていった。


表情から納得がいかない様子のハル。

それはもっともだろう。

人生をかけたものが昨日出会った男に邪魔されたのだから。


だが、グスターブは神妙な顔つきになったのをみて、ハルはその怒気を内に沈めた。


「ハル、ジンはかしこいな」

「ええ、乱暴な口調は治りませんが、人の考えを読むのは昔から得意でした。ですが、なぜ貴方がそのことを?」

「うん? 俺の言うことを素直に受け入れたからさ」

「ほんとグスターブさんは不思議な方ですね。で、当主になれなくなった私は何をしたらよいのでしょう?」

と、ハルは白旗を挙げる。


「お前ら二人は本当に素直だな。その性格は大事にしな」

と、前置きをした後、


「ハル、おめぇには先に事実だけを伝えておこう。このまま何もしなければ、ジンは寺についた翌日に死ぬことになる」

ハルは驚く。

「どういうことですか?」

「領主関係者からの確かな情報だ。あそこの当主の決め方は独特らしくてな。ジンを助けに行くぞ。作戦は道中でおいおい伝える。どうせ3日ほどかかるんだ」

ハルから次の言葉はでなかった。


「おまたせー。準備はできたー?」

と、アリスが元気に店内へ入っていく。

外には馬車と従者が控えている。


ハルの混乱は止まらない。

「アリスだ。領主のお嬢さん、確かな情報の持ち主さ」

「あら、この子が川原の子ね。グスから聞いているよ。アリスです、よろしくね」

「ああ、はい・・・・」



大青寺に向かう街道、馬車の中。

「このままではジンを追い越してしまうんでは?」

ハルが心配する。


「大丈夫。彼を見張ってくれている子がいるから。だから、タイミングもばっちりだよ?」

「な、なんといっていいやら」

「まぁ、自分の運に感謝することだ。後は俺たちを信じている己の目にもな」

そう言って、一振りの剣をハルに手渡す。


「なじみの剣でなくて悪いが、一応、お前には死んだことにしてもらわないとならんからな。終わったら、元の剣は返ってくるさ」

ハルは剣を鞘から抜く。


「こ、これは・・・・!」


自分が使っている剣は寺からの支給品だ。他の剣などどんなものかよく知らない。

もらった剣は人生と同じくらいボロボロだった。

それを自分なりに修復し、大事に使ってきた。

愛着は十分にある。

だが、このグスターブから渡された剣はなんだ?

剣とはこんなに綺麗で輝いているものなのか。


「わ、私の育った寺はなんなのですか?」

これまで寺で一生懸命に生きてきたことは自負している。

自負しているものの、あまりに現実の違いに気持ちが追い付いていない。


「まぁ、いきゃわかるさ。お前らは人ではなかったんだ」



「おお、これはジン。戻ってきたということは無事役目を終えたのだな」

大青寺の講堂で仏像を背に老人が座っている。


「ああ、これが証拠だ」

と、老人の前に座っているジンはハルの剣を差し出す。


「よくやった。長旅で疲れておろう。今宵は豪華な食事でもてなそう。祝いじゃ」


ジンを祝う宴が行われた。

料理はジンがこれまで食べたことのない本当に豪華なものだった。

(この寺でこんなものがあったのか・・・・)


ジンはこれまでの人生を思い返していた。

寺での修業は本当にきついものだった。

同じ孤児の同門が修行を苦に死んでいったのを何回も目の当たりにした。

その度、ジンは頂点を目指し、仲間を守りたいと思うようになっていった。


当主試験も違和感があった。

ジンと同じ同門で無双を誇るハルと寺外で決闘をさせることに。

寺内で試合でいいではないか。

そう思いながらも、長老の命令には従っていた。


グスターブに会うまでは。


山彦亭のグスターブの提案はまさに渡りに船だった。

ハルを殺したくない。

それは本音だった。

だが、殺す以外の選択肢もグスターブと会うまではなかった。

グスターブは俺に一体何をさせたいのか。


(まぁ、おいおいわかるだろう)


宴が終わり、寝床に案内された。

いつも使っていた部屋とは異なる部屋だ。


(こんな豪華な部屋があったとは)


ここ数日で己の常識を覆されることが多かった。

酒もある程度嗜んだので眠気が襲う。

ジンは普段とは違う布団で一夜を過ごした。


朝、ジンが目覚める。

体がすこぶる重い。


(毒か? しかし、昨日の夜はそんな異変はなかった)


「目が覚めたかの」

長老が顔を見せる。


「長老、これは一体?」

ジンは声を出すのが精いっぱいだ。


「これから最後の試練じゃ。同門の下、わしの孫と試合をせい」

周囲には護衛がびっしりと控えている。


(こ、これはまずい・・・・)

ジンの額からびっしりと汗が噴き出している。

ブックマーク、評価ありがとうございます。

早速のブックマーク、評価はかなりの驚きと大きな自信を頂戴しました。

重ねて、お礼を申し上げます。

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