第二話 山彦亭の夜
ご覧頂きありがとうございます。
コンセプトのみ脳内で温めて、見切り発車で進めてます。
いろいろ矛盾点があればご指摘ください。
「ちょっと真ん中に詰めてくれる?」
艶っぽい女の子たちがハルとジンの横に座る。
「あのグスターブさん、この方たちは・・・・?」
興味はあれども、あまり接したことのない異性に若者たちは心が乱れる。
「ん? 見ての通り、かわいいお姉さん方だ。いろいろ話を聞いてもらいな。同じ初対面ならおっさんよりきれいな方がいいだろう? 彼女たちはそういうのが仕事だから気兼ねしなくていい。じゃあ、後は任せたよ」
「今度、グスさんがご指名してね?」
「へへっ、考えとくよ」
「ふふっ、それは楽しみね。じゃあ、お兄さん、楽しく飲みましょ~」
とグスターブは出ていく。
ハルはとても困った表情でグスターブを見送り、ザンは体のひとつも動かさず、彼女たちが来てから一言も言葉を発せられていないが、大丈夫だろう。
グスターブは奥の部屋から入り口近くのカウンターへと席を移した。
「ありがとう、大将」
「おう、グスから依頼ならだれも断らねえよ」
と、茶色い液体の入ったグラスを差し出す。
「で、あの子たちは一体何なんだ?」
と、大将が聞いてくる。
「ん~、よくわからんが、ウェストウォリアにある寺の傭兵らしい。あいつら二人が決闘して勝者が次世代の当主なんだと」
出されたグラスを口に近づけ、酒を一口含む。
「仲間同士で殺しあいか。えげつねえな」
「だろう?」
と、大将は両手の平を天へ向け、肩をすくめた。
「まぁ、そいつはおまけだな。で、一体どこが気に入ったんだ?」
「へっ、大将にはバレバレだね。散歩していた時にたまたまみつけたんだよ。あの川原で決闘しようとしているバカどもをね」
「まさか、あそこかい?」
「そ、俺がこの町に来た時にあんたと決闘した川原さ」
と、ニカッと爽やかな笑顔を対象に見せる。
「なつかしいね。あの頃はお互いに若かった」
「いやあ、あの時は俺が全面的に悪かった。大将が言った通り、新参者が正義を振りかざしてもろくなことがない」
「だからか」
「そ、だからだよ」
「でもま、あんたが俺をぶちのめしてくれたおかげでこの町に居つくことができた」
「その前にお前が町の声の代表になってくれたからな。結果的にああして王族に許しを請う生贄にしてしまったが、町民たちはあの一瞬でお前を認めた。それは間違いない」
「認めてほしかったわけじゃないんだがなぁ」
「そこがお前の魅力なんだよ」
2人が納得し、それぞれで酒をぐっと煽る。
それはもうナイスミドル的アダルティな時間になっていた。
「あ~、やっぱりここにいたーーっ!」
この紳士の静粛な空間を斬って落とす声が店内に響く。
「・・・と、お嬢じゃねえか。どうしたんだい?」
お嬢と呼ばれた女の子、年齢は16、7歳くらいで銀髪、服はワンピースといったところだろうか。
「むー、もうお嬢じゃないし。それにア・リ・ス!」
「はいはい、悪かったよ。アリスさん」
名前を呼ばれたことを聞いて、アリスは上機嫌になった。
「で、どうしたんだい?」
グスターブは改めて尋ねる。
「そうそう、今日の川原の騒ぎ、収めたのグスだってね」
「おー、よく知ってんな! さすが、お嬢!」
「もー!」
話が進まないことに大将が咳払いをする。
グスターブもへへっと愛想笑いをしながら、質問を重ねた。
「それで、そいつらを捕まえに来たのか?」
とグスターブがアリスに尋ねる。
アリスは首を横に振って
「ううん。貴方が二人を連れて町に戻ったって報告を受けたからね。その顛末を聞きに来たのよ」
「あいつらは今、奥にいるよ。お姉さん方に任せてきた」
「なるほど、スパイかどうか確認してるんだね」
「そういうこった」
と、アリスは腕を組んでうんうんと頷く。
「で、あいつらはなんなの?」
さっき大将に説明した通りを繰り返す。
「ふぅーん、川原ね。確かに運命を感じるね。ねー、グスターブ!」
「なるほどね。あいつらをどうこうしたいってのはないんだが・・・・。もし、あいつらを説得したら、自警団に雇ってもらうことはできるか?」
「あら、グスの推薦なら文句はないよ。ただ・・・・」
「ただ?」
「なにかしら見える形で実績があれば、私だけでなく、周囲も納得しやすいかな?」
「なるほどね。で、俺に何をさせたいんだ?」
とグスターブが聞くと、アリスはニヤリと笑った。
「話が早くて助かるわー。ねぇ、グス。明日からしばらく護衛を頼めないかしら?」
「お、俺の護衛が必要な外出とは。どこに行きたいんだい?」
「秘境のお寺ってのはどーかな?」
「・・・俺の周りはどうもお人よしが多いみたいで」
大将は二人のやり取りを見てニヤニヤしている。
ーーーー
グスターブと大将の決闘の理由はこうだ。
領主の娘アリスがまだ小さかったとき、彼女の誘拐事件が起きた。
たまたま、通り過ぎその光景を目の当たりにした若いグスターブは犯人を捕まえ、アリスの救出に成功する。
しかし、捕えた犯人は王族の関係者だった。
街中で姿を隠していたとはいえ、王族を捕えるのは不敬罪と訴えてくる犯人。
そこで領主は、当時の部下の長であった大将と決闘させる提案する。
なぶり殺しが見られると考えた王族はこの話を了承した。
そして、川原で決闘が始まった。
当時若かったグスターブとベテランの域を迎えていた大将の実力差は雲泥だった。
結果は、大将が一方的にグスターブを痛めつけていた。
グスターブはどれだけ痛めつけられていても、必ず立ち上がった。
熾烈極まる痛めつけに流石の王族も白旗を上げ決闘は終えた。
その後、領主宅にて怪我の治療をあてがわれ、完治した後はこの町に残り冒険者として働くことになった。
からくりとして、大将が攻撃の際、王族たちにバレないように鎧の中だけ回復魔法を与え続けていたこと。
決闘前に領主からグスターブに向けて、初対面相手に謝罪と生きる残るためのこの作戦を与えてきたこと。
これらは領主、大将、グスターブの3人以外は知らないはずだ。
ーーーー
その後、たわいもない話で3人が盛り上がった。
すると奥から、女の子が一人でてきた。
「いよぅ。どうだった?」
「グス~、なんてかわいい男の子を連れてきたの? 可愛すぎて一晩借りていい?」
「お気に召したなら何よりだ。借りるかどうかは本人に聞きゃいい。で、どうだった?」
「大青寺だっけ? あそこの子で間違いないみたいね。背景はなにもないわ。もう一人の黒髪の子もね」
「ご苦労、じゃあ、アリス。明日の朝までに大青寺のことを探ってくれるか」
「むっふっふー、大青寺は私の管轄するお店のお得意様のひとつだよ」
「そりゃ助かる。で、どういった情報?」
その言葉で、アリスの表情と態度は少しインテリ風になる。
「待っていました。このことば!」
とばかり、腕を組み、エア眼鏡をくいっとする仕草を見せる。
「残念だけど、このままじゃあ、2人とも死ぬみたいよ?」
なんとも、剣呑な話ではないか。
若者についていた女の子を奥の部屋に戻して、3人で作戦タイムに入った。
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将棋とは少しテイストを変えてみました。
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