47. そんなキャラだった?
A「かけられた妖術を解く方法ってないの?」
E「それは、わからないわ。」
A「なーんだ、わからないんだ。」
E「何よその目は。ヒントがあるんだけど、教えない方がいいかしら?」
A「ちょっと、もったいぶらないで言いなさいよ。」
E「素直じゃないわね。まあいいわ。ヒントは、ガーネットを猫にしたもの、妖術って事ね。」
そういえば、あいつが何かを猫に食べさせたら、人間になったのよね。
それを食べれば治るってこと?
A「ねえ、あいつが持ってる変なアイテムって、地下で作ったのよね?」
E「うん、パパの持ち物なのに、勝手に使って失礼よね。」
A「そのアイテムの中に、妖術が解けるようなのある?」
E「知らないわ。でも、病気でも怪我でも、何でも直っちゃう薬ならあるわ。」
A「それね。それをあいつに食べさせれば・・・。」
E「ウフフ、必死ね。」
私は、どうにかその薬をあいつに食べさせられないかを考える。
一つの案が思いついたが、それはちょっと・・・。
他の案を考えよう。
そうだ!彼女なら協力してくれるはず!
A「ねえ、メドゥーサは協力してくれるかしら?」
E「なるほどね。あいつのピンチと知れば協力してくれるはずたよ!」
A『突然すみません、メドゥーサさんですか?』
メ『そうだけど、あなたは誰?』
E『おひさー、私、前に神の使いで来たエリザちゃんでーす。』
メ『そんなキャラだった?ところで何か用?』
私は、これまでの経緯について、メドゥーサに説明した。
テレパシー越しに、メドゥーサの怒りが伝わる。怖いです。
A『それで、石化しちゃえば、その薬を使ってくれると思うのよね。』
メ『それってつまり、私がそっちに行くってこと?』
A『うん、お願いできないかしら?』
メ『無理な相談ね。どうして私が人里離れた場所に住んでるかわかる?』
A『でも、あいつのピンチなんだし。』
テレパシーはすでに切れていた。
メドゥーサは、必死に何かに堪えるかのようだった。
本当は助けたいのだろう。
でも助けられない自分がもどかしい。
そんな気がした。
E「ダメだったね。」
A「ええ、実は、もう一つ案があるんだけど、協力してくれる?」
もう一つの案。
それは、私が最初に思いついた案だ。
でも、それをするには勇気がいる。
私は、その案をエリザに伝え、協力を要請する。
説明しているだけなのに、なぜだろう、ドキドキが止まらない。
E「その案だけどさ、私以外には内緒にしといた方がいいよ?」
A「どうして?」
E「わかってるくせに。」
***** ヨシュア視点 *****
フッフフフーン♪
自然と鼻歌が出てしまう。
だって、ガーネットと二人で、洗濯物を畳んでいるからだもんね。
「まるで新婚さんみたいだね?」
G「あら、いやですわ。」
俺は今、最高に幸せだ!
地球に生まれて、良かったー!
そんな俺たちを、生暖かい目で見守るBCDがいる。
ちょっと、雰囲気壊れるじゃない?
気を遣ってどっか行ってくれないかな?
「もう、一層の事、居候には出て行ってもらおうかな?」
G「居候というのは?」
「ほら、そこにいるじゃん。全員揃ってないけどさ。」
G「居候だったのですか?奥様かと思っておりました。」
「やだなー、そんなわけないじゃん!そんな関係じゃないしさ。」
G「そうでしょうか?わたくしには・・・」
そのとき、この幸せな空間をぶち壊す声が聞こえた。
E「誰かー!来てー!」
2階から、エリザがなんか叫んでる。
邪魔だな、まったく。
E「アリスの意識がないんだよ!」
え?
どうしよう。
BCDは、走って2階に上がっていった。
まあ、あの3人が行ったから、大丈夫か。
G「行かなくて、いいのですか?」
「だって、もう3人も行ってるし、邪魔になるだけじゃん?」
G「わたくし、心配ですので、行ってまいります。」
え、ガーネット行っちゃうの?
じゃあ俺も行くよー、待ってー。
2階のエリザの部屋に行くと、ソファーにアリスが横になっていた。
みんなの呼びかけに対して、反応がない。
E「ねえ、あんたパパの工房で作ったアイテムあるでしょ?」
「ん?あ、ああ、持ってるよ」
E「何でも直っちゃう薬、あるよね?あれをアリスに出してあげて。」
ん?なんで俺が?
でも、それでまた幸せな空間に戻れるなら安いもんか。
ガーネットも心配しているし、特別サービスしてあげよう。
俺は【アイテムボックス】から【全快玉】を取り出して、アリスの口に突っ込んだ。
その瞬間だった。
アリスは突然目を開き、両手を俺の首の後ろに回してきた。
強引に引っ張られる。
アリスの顔が近づく。
俺の口の中には【全快玉】が入っていた。
A「それ、飲んで!早く飲んで!」
アリスの突然の行動と悲痛な叫びに混乱し、何も考えずに、言われた通りに飲み込んでしまった。
あれ?
さっきまで、視界がモヤに包まれていたような感じだったが、鮮明になった。
そして、意識もふわふわした状態から覚醒した気がする。
A「あと、石化にならないアイテムもあるわよね?あれ使って!すぐに!」
「あ、あ、ああ。」
理解が追い付かないが、言われるがまま【無敵の実】も使用した。
なぜ俺にこれを使わせるのだろう?
「使ったけど、アリス大丈夫?」
A「うん、私もあなたも、これで大丈夫よ。」
意味が分からないが、大丈夫っていうんだから、大丈夫なんだろう。
G「それでは、わたくしは戻りますわ。まだお洗濯物を畳み終わっていませんから。」
「それより、いつまでもこの家に居られないと思うんだけど、どうしようね。」
G「え?」
ガーネットは俺の近くに来て、両手で俺の手を握った。
潤んだ瞳で俺を見上げる。
G「わたくし、また捨てられてしまうのですね?」
いかん、これは効果が・・・あれ?ないな?
じめんタイプが追加されたか?
「捨てるわけじゃないよ。ここは君がいるべき場所じゃない。正しい場所に戻すだけさ。」
G「王城に戻ったら、今度は何をされるかわかりません。」
「わからないから、ここに逃げるの?違うでしょ?そうならないように解決の道を探すのでは?」
そういうと、ガーネットは握っていた手を離した。
そして、理解不能なことを言い出した。
G「おかしいわ?かからない。」
「なにが?」
G「諦めるしかないわね。ここは居心地が良さそうでしたのに、残念でしたわね。」
「あの、理解できないんですけど。」
G「ふっ、みなさん苦労しているみたいね。頑張ってね。」
最後は、俺の後ろにいる女性陣に向けて言ったようだ。
まったく意味が分からん。
A「ねえ、ちょっと手を出して?」
俺が手を出すと、アリスは俺の手のひらに何かを置いた。
【テレパシーの指環】だ。
もう、いらないって意味なんだろうか?少し寂しいな。
A「取れちゃったから、つけて!」
アリスは俺に左手を差し出す。
前は右手に付けた気がするけど、取れちゃったから指を変えるのかな?
アリスはまだ調子が悪いのか、真っ赤な顔をしている。
俺が指環を付けると、今度ばベリーだ。
B「あ、私も取れちゃったみたい。つけて!」
ベリーまでもが左手を差し出す。
アリスの真似か?仲いいなお前ら。
G「それでは、私は失礼させてもらうわ。短い間ですが、お世話になりました。」
ガーネットは、貴族令嬢らしく、深々と一礼して去って行った。
あまりのもあっけない結末に拍子抜けだ。
A「外は夜よ。送ってあげなさいよ。」
「あ、そうか、女性の一人歩きは危険だな。」
A「相変わらず気が利かないわね。それだからあなたは・・・」
「あれ?アリスまだ体調悪いの?さっきからずっと顔が赤いけど。」
A「ち、ちがうわよ!さっさと行きなさい!」
うん、よくわからんが、いつも通りの生活に戻ったって事だな。
でめたし、でめたし。
B「アリス?ちゃーんと説明してもらうからね?」
C「事前に相談してもらいたかったわね。」
D「抜け駆けは良くないわね。今のは事故。これでリードしたと思わないでね?」
何か声が聞こえたが、こいつらが言い合いしてるのも、この家の風物詩だ。
今日も、平和です。
ガーネットには、門のところで追いついた。
「夜道は危険ですよお嬢様。お供させていただきます。」
G「あら、気が利くわね。どうせ、誰かの入れ知恵でしょ?」
「ご名答!」
薄暗くなった街を、【ライト】の魔法を頼りに歩く。
家から追い出してしまった罪悪感から、言葉が見つからない。
しばらくの沈黙ののち、ガーネットが口を開いた。
G「あなたは、幸せ者ね。」
突然なんだろう?
まあ、ゲーム本来の楽しみ方はしていないと思うが、幸せなんだろうな。
G「わたくし、羨ましくなってしまって、ちょっとだけ意地悪をしてしまいました。」
「え?何かした?」
G「わかってらっしゃらないのですね。家の皆様にはわたくしが謝っていたことをお伝えください。」
「よくわからないけど、伝えておくよ。」
俺の知らないところで、何かしたようだ。
アリスが倒れたのは、それが原因かな?
G「ところで、わたくしをどちらに連れて行くおつもりですか?」
「王城だけど?」
G「歩いて行くには、遠いですよ?」
「あれ?馬車が出てなかったっけ?」
G「夜は走らないと思いましたわ。」
な、なんだってー
これはあれか?もう終電がないのと同じ流れか?
二人で宿屋に入って、朝、「お楽しみでしたね」とか言われちゃうパターンだな?
そんな妄想を精一杯の努力でかき消す。
王太子の妾に手を出したら、どんなことが起こるのか考えただけで恐ろしい。
絶対に手を出しちゃいけない。
馬車をチャーターできないかな?
俺の知り合いで馬車なんて持ってる人なんて・・・いた!
俺は以前に一度だけ行ったことがある、奴隷市場に向かった。
サーカスのテントのような建物に入り、目的の人物を探す。
「これはこれは、お久しゅうございます。」
以前、助けたことがある奴隷商だ。
名前は・・・思い出せない。
「折り入ってお願いがあるのですが、こちらの女性を・・・」
「なんと!こんな絶世の美女を奴隷として売っていただけるのですか?これは高値がつきますよ!」
「いやいや、そうじゃなくてですね。」
奴隷商は残念そうな顔をし、ガーネットはそれをみてクスクス笑ってる。
奴隷扱いされそうになって気分が悪くなってないか心配だったが、大丈夫のようだ。
「はい、馬車ならありますが、これから王都ですか?魔物に襲われないか心配ですね。」
「じゃあ、俺が護衛しますよ。」
「でしたら安心です。準備しますので、ちょっと待ってくださいね。」
奴隷商は慌ただしくテントの中に消えて行った。
G「奴隷商にも、お知り合いがいるのですね。」
「まあ、ちょっとした縁があってね。」
G「買われたのですか?」
「奴隷を?いやいや、いらないですよ。」
G「クスクス。あなたに買われたなら、その奴隷は幸せでしょうね。」
クスクスって笑う人を初めて見た。
これがゲームの世界か。
「準備ができましたので、こちらまでお越しください。」
奴隷商に呼ばれて馬車に行く。
ガーネットには悪いが、一人で荷台に乗ってもらおう。
中身が見えると襲われる可能性があるので、帆で完全に覆う。
俺は護衛のため、奴隷商の隣に座った。
「では、王都に向けて出発進行!」
王都まで魔物に襲われることはなかった。
夜は狼の魔物などに襲われることが多いらしいのだが、不思議と現れなかった。
ホント、不思議ですね。俺の右手にある【亜空間扇】が大活躍した結果だろう。
王都では、入国審査がある。
そのため、一時的にガーネットには奴隷ということになってもらった。
身分を隠さないと、面倒だしね。