表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/53

42.盗人は泥棒の始まりだい!

突然俺の前に姿を現したメイメイ。

今度は転移ではなく、無事に日本に帰ってから、ゲームのプレイヤーとして出現したのだった。

なぜかその行為を自慢げに語っている。

俺は無視して次の質問をした。


「じゃあ次の質問だ。」

「あれ?褒めてくれないのかい?」

「・・・さっきは、どうして全力少年してたんだ?」

「無視ですかそうですか。走ってたのは、逃げてたからさ。」

「誰から?」

「ギルドで、ボクに講師を斡旋した人からだよ。」

「あー。」


メイメイは、誰にも言わず突然元の世界に飛んでしまった。

講師を依頼していたギルド側としては、突然講師がいなくなったので困っていた。

いくら探しても見つからないので、諦めかけていたが、ひょっこりギルドに現れたところを発見され、追いかけられたようだ。


「別に逃げる必要なんて、なかったんじゃないのか?」

「そうなんだよね。追いかけられたから逃げるのがお約束かと思ってさ。」

「なんだそれ。」

「それに、突然いなくなったことについて、怒られるの嫌だったし。」

「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。」


怒られるのが嫌だから逃げる。

なんと短絡的な発想だ。

逃げてたら、ギルドに行けないぞ?

このゲームは、何かとギルドに行かなきゃいけないゲームだし。


「そんなに見つかりたくなかったらさ、外見を変えればよかったじゃん」

「そんなー。これ作るのにメチャ時間かかったんだよ?」

「時間かけてまで、なぜその外見にしたんだ?」

「キミに見つけてもらうためだい!」

「おい、頬を赤らめるな!惚れるぞ!」


とりあえず、今の状況は理解できた。

始めたばかりだから、まだレベル1なんだろうな。

そりゃ体力もないだろう。


「そういえば、手紙は届いたかい?」

「ああ、届いたよ。地下室から音がしたから、また誰か来たのかと思ったよ。


その時だった。


「ガッシャーン」


「またメイメイが飛んできたのか?」

「ここにいるよ(C)テルマ」

「じゃあ誰が?」

「サンタさんじゃないかい?」

「よし、行こうぜ!サンタ狩りだ」

「ペーペポペーペポ ペーポポポポ~~~♪」

「お前本当に中二か?」


パンダカーには乗らずに、歩いて地下室に向かう死ね死ね団。

そこで見かけたのは、田中でもサンチェでもない。

知らない、柄の悪い男だった。


「おい!そこで何してる!」

「いててて、ケツ打っちまったな。」

「お前は誰だ?」

「そう言うお前こそ誰だ?」


世紀末のザコキャラのような風体の男が偉そうにしている。

あんた、ここは俺の家で、不法侵入ですからね?

残念!世紀末ヒャッハーー斬り!


エアギターで人斬りのポーズをしていると、メイメイがザコキャラを見て驚いていた。


「え?どうしてここにいるんだい?」

「こいつ、お前の知り合いか?」

「うん、前の世界の知り合いで、スラッシュって言うんだ。」

「レボリューション!」

「それはゴー☆ジャス。全然違うじゃん。」

「ちゃんと☆を入れるとは、なかなかヤルな?」


世紀末ザコキャラを放置して、メイメイと盛り上がっていたところに、ザコキャラが邪魔をしてきた。


「やっぱりいやがったな、オカマ野郎。」

「まて、俺はオカマじゃない。」

「お前じゃねぇし。」

「スラッシュはさ、どうやってここに来たんだい?」

「とりあえずさ、ロビー行こうか。」


いつもは見目麗しい女性陣が陣取るエリアに、今は男が3人だけ。

姉さん、事件です。

家主である俺をほったらかしにして、男二人が語り合ってます。


「どうしたんだいスラッシュ。こんなところに来て。」

(こんなところ、だと?)

「色々聞きたいことがあるが、まずこの古ぼけた家は、どこなんだ?」

(古ぼけた、家?)

「ここは、ヨシュアの家だよ?」

「ヨシュアっていうのは、そこにいる冴えない顔をしているやつか?」

(冴えない、顔?)

「スラッシュ失礼だよ?そんなにストレートに言わなくてもいいじゃないか」

(それって、冴えない顔を肯定してないか?)

「じゃあなんだ、ジャガイモが昼寝したような顔とでも言えばいいのか?」


「だーーー!お前ら言いすぎだ!」

「うわぁ、ヨシュアがキレた!」

「刑事物語4 くろしおの詩のセリフまで出しやがって。」

「何の事だい?」


何なんだお前ら。

好き勝手な事ばかりいいやがって。

ここは俺がイニシアチブを取ろうじゃないか。


「えーっと、君はフラッシュって言ったかな?」

「ちげぇよ、スラッシュだ。」

「なんだよ、ノリが悪いな。『フラッシュは眩しいっ!』とかクロちゃんみたいに言ってくれないと。」

「お前、何言ってるんだ?」

「もしくは『うぉい!スラッシュだよっ!』って児島のような反応をしないと。」

「おいオカマ!こいつ頭おかしいのか?」

「俺はオカマじゃないぞ?」

「だからお前じゃねぇし。」

「ねーヨシュアー。話が進まないよー」


俺が主導権を握ると、リアル中二に突っ込まれる有様だ。

もうわかった。お兄さん、黙っとくよ。


「信じられないと思うけど、ボクたちがいるのは、スラッシュがいた国とは別の世界なんだ。」

「ん?グェラヴィアラとは違う国?じゃあここはアルガルゲなのか?」

「それもちがう。国っていうレベルじゃなくて、世界そのものが違う。」

「はあ?じゃあ何か?違う星って事なのか?」

「ちがうってば。フラッシュがいた場所とここは、物理的に隔たれている、言わばパラレルワールドとでも・・・」

「あーあーあーあー。頭がおかしくなる。つまり、遠い場所ってことでいいんだな?」

「んとね、距離では表現できない位置関係にあって。」

「トリャ!」

「イテ!何するんだい?」

「遠い場所ってことでオレは納得した。それでいいだろ?」

「は、はい・・・」


さすが脳筋野郎だ。理解できまい。

問題は、どうやって来たのかっていうのと、何しに来たのかだな。

メイメイさん、そのあたりを詳しく聞き出すようお願いします。


「スラッシュはさ、どうやってここに来たんだい?」

「これだよ、これ」


スラッシュは懐から紙の束とインクと筆を取り出すと、テーブルに広げた。

インクと筆は、以前メイメイが使っていたものと同じものだが、紙の束は初見だ。

冊子のように製本されたそれには、細かい文字が書き込まれていた。


「あ!これはボクノートじゃないか!ダメだよ勝手に見たら。」

「見られちゃマズいものなら、しっかりと処分しろ。置きっぱなしだったぞ。」

「迂闊だったなぁ。日本に帰れるって舞い上がっていて、これの存在を忘れてたよ。」

「何ゴチャゴチャ言ってるんだ?とにかくここに書いてある『転送魔法陣』ってやつを使ったら、ここに来たわけだ。」


全力少年がボクノートですか。どこかの隙間にスイッチでもあるんですか?

でも表紙に書いてある『マル秘ノートやでー!!』って、これ彦一ノートじゃん。

要チェックですか?アンビリバボーですか?


「じゃあスラッシュは、そこに書いてあった失敗作の魔法陣を使っちゃったんだね。」

「はあ?失敗作だと?」

「うん、本当はここじゃない、別の場所に転送されるように作ったものなんだよね。」

「わからねぇ。じゃあ今、お前がここに居るのは、失敗したからか?」

「それは違うんだよね。別の方法でここに来てる感じかな?」

「益々わからねぇ。」


おまいさんには一生わからないだろうよ。

オンラインゲームを説明するだけで、5GBぐらい必要だろうな。


「そもそもスラッシュはさ、どうして『転送魔法陣』なんか使ったんだい?」

「それを答える前に聞きたいんだが、この魔法陣を使えば、どこでも一瞬で行ったり来たりできるのか?」

「さっき言ったけど、これは失敗作でさ、どうやってもここにしか来れないんだよね。」

「これじゃなかったのか。ったく、紛らわしい名前を付けるなよ。」

「何の話だい?スラッシュは、何かを探してるのかい?」


さて、俺なりに分析してみますか。

変なオッサンが俺の家に転移してきた原因は、メイメイが残した転送魔法陣を使ったからだ。

ひとつ間違えれば危険と思われる行為をするに至った経緯は不明。

しかし、先ほどの発言(これじゃなかったのか)より、何かを探している模様。

さらにその前の発言(どこでも一瞬で行ったり来たりできるのか?)から、そのような手段を探していると推測。


それってさ、メイメイがこの世界から向こうの世界に帰るときに使った

メイメイ謹製のマップと俺の【瞬移の羽】の合わせ技でできるやつじゃないか?


「なあメイメイ、お前あの羽を向こうの世界でも使ったのか?」

「手紙に書いたじゃん?マップの技術と転移の道具を引き換えに、日本に帰してもらったって。」

「そういえば、そんな事書いてあったっけ。」

「もー、頑張って書いたんだから、ちゃんと読んでよー。」

「だってお前の手紙、オチとかないからつまんないし。」

「えー、手紙にオチが必要なのかい?」


意中の女性からのお手紙だったら、そりゃ何度も読み直しますよ。

一言一句、見落とすことなく読みますよ。

でも、中二男子からの手紙なんて、斜めに読んでおしまいですわ。


「おーーい、盛り上がってるところ悪りぃが、今、転移の道具とか言ってなかったか?」

「ん?フラッシュか、まだいたのか。」

「こら、ずっといるっちゅーに。それにスラッシュだ。」

「そのリアクションは不合格だな。」

「うるせ、付き合ってらんねぇよ。で、転移の道具ってなんだ?」


こいつが嗅ぎまわってるのは、おそらくこれだな。

でも、気軽に教えていい物なのかな?

転移って、軍事利用すれば、戦争そのもののあり方を180度変えてしまう危険なものだ。

これは悩ましいなぁ・・・


「その名の通りだよ?好きな場所に一瞬で飛べちゃうんだ。便利だろう?」

「おいこら。俺が悩んでいたのに、さらっとネタバレしてんじゃねぇよ。」

「さらにボクの開発したマップと組み合わせれば、世界中どこでも、狙った場所に飛べちゃうしね。」

「お前さ、それ、元居た世界の偉い人に教えたりしてないだろうな?」

「だから手紙に書いたじゃん!これを教えて日本に帰してもらったって。」

「お前、アホだろ?どんな使われ方されるか想像できないのか?」

「買い物とか、超楽w」


世は令和。日本に住んでいる限り、戦争とは無縁の世界。

だからだろうか。この中二男子は、まったく危機感がないようだ。


「これだから平和ボケした日本人は・・・。軍事利用されると思わないのか?」

「え?どうなるの?」

「お前なら、どうする?」


10秒・・・20秒・・・30秒・・・

メイメイ名人、長考に入りました。

残り時間は5分です。


どんだけ平和ボケしてんのよ。

お前の頭の中はお花畑か。


「少し前に、アルガルゲの武器庫と備蓄倉庫が何者かによって襲撃された。」

「お、オッサンいたのか?」

「スラッシュだ。それにオッサンじゃない。取り消せぇー。」

「で、その襲撃した犯人は見つかってるのか?」

「見つかってないさ。まるで瞬間移動したかのような手際の良さだ。わかるだろう?」

「すでに使われてしまったか。」


俺とオッサンの会話を、卓球の審判のようにキョロキョロしながら見ているメイメイ。

これでやっとわかったか?


「そんなの、ズルいじゃん。単なる盗人だよ。盗人は泥棒の始まりだい!」

「なあ、それを手引きしたのは、お前だぞ?」

「そんな、スラッシュまで・・・」

「お前さ、第3部隊に使い方教えただろう?」

「何で知ってるのさ!あれ、国家機密って言ってたよ!」

「知らねえさ。ちょっとカマかけただけで白状しちまうようじゃ、まだまだだな。」


オッサン、中二相手に容赦ないですね。

メイメイはもう涙目ですよ。

仕方ない、助け船を出してあげますかね。


「スラッシュさんよぉ。襲撃はその2回だけか?」

「ああ、それ以降はないな。」

「なぜそう言い切れる?敵国は隠してるかもしれないぞ?」

「そうだな、そうかもな。」

「ふん、簡単に尻尾は出さないな。」

「何の事かな?」


怪しいぞこのオッサン。

わざわざ危険とも言える魔法陣を使ってまで調査していたんだ。

普通のオッサンじゃないだろう。


「スラッシュのオッサンに認識してもらいたいことがある。」

「オッサンという認識はないぞ?」

「ここから元の世界に帰るには、俺とメイメイの力が必要だ。」

「そう、なのか?」


俺の言うことが信用できないようで、メイメイに視線を向ける。

メイメイは、無言でコクリと頷いた。


「だから、嘘はつかない方がいいぞ?」

「お前らが知ったところで、何の得もないだろう?」

「そう、損も得もない。俺もメイメイも、そっちの世界に行けないしな。」

「そう、なのか?」


俺の言うことが信用できないようで、メイメイに視線を向ける。

メイメイは、無言でコクリと頷いた。

やだこの展開。


「マップがね。もうボクのマップは、こっちの世界しか見えないんだよ。」

「オレはどうなんだ?」

「以前のボクと同じ条件だから、向こうのマップが見えて、そこに飛ぶことができるはずだよ?」

「じゃあ、お前はもう、帰れないのか?」

「うん。」

「ああ、あの子に何と伝えたらいいか・・・」

「あの子って、誰だい?」

「うるせぇバカ」

「ねえ、オコ?スラッシュ、オコ?痛い!何で叩くんだい?」


中二とオッサンがじゃれ合ってるのは放置することにして、どうしますかね?

さっさと返してもいいけど、そのせいで戦争が激化して、多くの死者が出たりするのは目覚めが悪い。

ったく、後先考えずにチート級の技術を広めるからこうなるんだ。


「んで、オッサンは、こうしてメイメイとじゃれ合うために、わざわざ来たわけじゃないだろ?」

「そうだよ、何しに来たんだい?」

「あれだよ、たまたまお前のノートを見つけたもんだから、どんなのかって試したら、このザマさ。」


あやしい。

絶対何か隠してるな。

このオッサンを戻していいのだろうか?

戦争が激化したりしないか?


マップ上を自由に転移するには、俺のアイテムが必要になる。

これが量産されてしまったら、シャレにならないな。

まずはそこから確認してみようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ