23.神様Help!
***** ヨシュア視点 *****
しかしあれだな。
石化っていうのは、身動きが取れなくなるだけで、意識はあるんだな。
これ、ある意味地獄かも。
この地獄から解放するには、どうすればいいんだろうね?
使えそうなアイテムは・・・
【全快玉】HP/MP/状態異常をすべて回復
【無敵の実】物理攻撃/魔法攻撃/状態異常がすべて無効
これなんだが、石化の影響でアイテム操作ができなくなってる。
誰かに渡して使ってもらうしかなさそうだが、渡すこともできない。
んー、いい案はないかな?
そういえば、石化って感覚もなくなるみたいだね。
さっきからメドゥーサが「バカ!バカ!」って言いながら俺を殴ってるけど、痛くないや。
あまり強く殴らないでね?割れちゃうから。
そんなメドゥーサを放置して、ステンノとエウリュアレはお話し中だ。
ちょっとメドゥーサ、静かにして!聞こえないから。
エ「なるほど、温泉ねー。そこに入れれば石化は解けるってわけ?」
ス「うん、あくまでも噂よ。問題はその温泉がどこにあるかわからないってこと。」
エ「ダメじゃん。どうする?外にぶん投げとく?」
ス「そんなことすると、アレがもっとひどくなるわよ?」
エ「アレねぇ・・・。」
なんかひどいこと言ってません?全部聞こえてますけど。
二人がアレって言ってるのは、相変わらず俺を殴ってるやつのことだろう。
やっぱり石化させちゃったっていう罪悪感なんだろうね。俺が軽率でした。すまんかった。
ス「可能性があるとしたら、神々なら温泉の場所を知ってるかもね。」
エ「でもさ、私たちをこんな僻地に幽閉した奴らだよ?そいつらに頼るのは癪に障るね。」
ス「でも、そうでもしないと、アレが収まらないわ。」
エ「アレねぇ・・・。」
まさに神のみぞ知るか。
教えて神様。
早くしないと、俺が割れちゃうよ。
神様Help!
1から・・・100までI Love You.
俺が気分転換に懐メロを脳内再生していたところで、アレ扱いされていたメドゥーサが殴るのをやめ、外に飛び出した。
振り向けないから何をしてるのかわからんな。
姉2人は驚いた表情で、お互い顔を見合わせている。何をやってるんだか。
振り返ると、いつも君は、笑ってくれるのか?
メ「神々に石化が解除できないか頼んできた。」
エ「あなた、あんなに嫌ってたのに?」
ス「それで?神々は何て言ってたの?」
メ「石化の状態を見ないとわからないってさ。」
エ「じゃあ、ここに神々が降臨するわけ?」
メ「神々が直々に?まさか。使いっぱしりを送るそうよ。」
ス「誰が来るのでしょう?」
メ「頼りない二人だけど、面倒見てやってくれって。」
エ「なにそれ?面倒なやつなの?」
よくわからないが、戻れる希望が見えたようだ。
じっと待つか。
まあ石化してるから、じっとするしかないんだけどね。
??「こんちわ。神に言われてきたんだけど、ここでいいの?」
??「おねえちゃん、なんか怖い人がいっぱいいるよ。」
あれ?聞いたことがある声だ。
メ「あなたたちがエリザとフリオね?よろしくね。うん、よろしくお願いします。」
やっぱりあいつらか。
神々と繋がってたのか?
まだまだ我が家の居候は謎が多い。
F「おねえちゃん、この石化してるのって・・・」
E「フハハ。面白いものを見せてもらったわ。」
F「どうする?」
E「このまま放置しちゃおうか。そしたら我が家はまた私たちの物。」
おいおい、お前たち。
いくら出番が少ないからって、そんな怖い冗談はやめてくれよ。
冗談、だよね?
メ「どうなの?直りそうなの?どうすれば直るの?何が必要なの?なんでも協力するから教えて。」
F「おねえちゃーん、この人怖いよぉ。うわーん。」
E「え、えっとね、石化はしてるけど、動けないだけ。まだ死んでないわ。」
メ「死んでたまりますか!一緒にビーフシチューを食べるのよ!」
エ「ハッシュドビーフだけどね。」
F「ビーフストロガノフじゃないんだー。うわーん。」
ス「確かに、頼りなくて面倒ね。」
なぬ?ハッシュドビーフだと?
俺が持ってきたのは、ビーフシチューではないと言うのか?
何が違うんだよー。同じじゃないかー。
エ「それで、どうやったら石化は直るの?」
E「それなんだけど、石化を直す泉があって、そこに長時間漬け込めば直るかもしれない。」
メ「どこにあるの?今すぐ行くわ!早く教えて!」
E「そんなにがっつかないで。怖いから。問題は漬け込む時間なの。」
ス「どれ位かしら?」
E「ざっと200年。」
うーん、石化した状態って、寿命も停止するのかな?
普通なら死ねる時間だよね。
つーか、このまま200年も水の中って、死ぬより辛いんじゃないか?
メ「そんな・・・。もっとほかの方法があるでしょ!言いなさいよ!」
E「ちょ、まって、そんなに押さないで。」
メドゥーサは興奮してエリザの胸倉をつかんで突っかかってる。
その時、フリオの足にぶつかり、エリザとメドゥーサはもつれ合ったまま倒れ込んだ。
俺を巻き添いにして。
ガシャーン!
大きな音を立てて、俺が砕け散った。
メドゥーサは茫然としているエリザに殴りかかる。
二人の姉に止められるが、メドゥーサの勢いは止まらない。
フリオは泣きながらオロオロしている。
しかし不思議だ。
俺はなんでこの光景が見えてるんだ?
死んだら自宅のベッドに強制送還のはずだが、なぜか場所が変わってない。
ヤバッ、また足元から石化が始まってきた。
【全快玉】で回復だ!ついでに【無敵の実】も使え!
よし、何とか危機は脱した。
ん?ってことは、俺はさっきので死ななかったのか?石化はどうやって解除された?
恐る恐る砕け散った自分の体を確認すると、あれ?砕けてない。
いや、一部だけ砕けている。
あの悪趣味なドクロをあしらった首飾りが粉々になっていた。
これだ。
【不死の首飾り】致命傷を負っても、ステータス全回復で復帰する。(1回のみ有効)
このステータス全回復って、状態異常も直るってことか。
なるほど、だから俺は死なずに石化まで解除されたのか。
付けといてよかった。
あ、今のうちに新しいのを付けとこっと。
さて問題は、目の前で繰り広げられるキャットファイトだ。
俺が死んで暴動が起きてるのに「実は生きてました」なんて言い出しにくい。
小野田さんの心境と一緒か?いや、違うだろう。
俺は、近くで泣きつかれて眠そうにしているフリオの肩を叩いた。
F「うわぁ!お化けだー!」
それはお前だろう。
「どうやら俺、死んでないみたいなんだよね。」
F「ああ、その首飾りか。」
「どうした?急にキャラ変わったぞ?」
F「おっと。じゃあ石化も直ってるみたいだし、ボクはこれで帰るよ。」
玄関に回れ右して出て行こうとするフリオの首根っこを捕まえた。
「あいつらに教えて欲しいんだよね。」
F「こわーーーーいーーーー」
勇者フリオの活躍により、俺が生きていることが伝えられた。
首飾りの事もだ。
気まずい。水を打ったような沈黙が続く。
沈黙を破ったのは、意外にもフリオだった。
F「じゃあ僕たちは帰るね。おねえちゃん、帰ろ。」
E「う、うん。お邪魔しましたー。」
逃げるように帰る二人。
よし!俺も帰ろう。
しかし回り込まれてしまった。
楽しいディナーが待っています。
すっかり冷めてしまったビーフシチューならぬハッシュドビーフを温めなおしてディナーの再開だ。
三姉妹はソワソワして誰も話し出さない。
仕方ない、俺から切り出すか。
「これ、厳密にはビーフシチューじゃないけど、これで良かったですか?」
メ「うん。」
会話終了。
キャッチボールしようぜ。
会話がないもんだから、食事だけが進む。
微妙な空気のまま、食事は終了してしまった。
「じゃあ、食器とか洗っときますね。」
返事ぐらいしてくれてもいいじゃないか。
俺、嫌われたよね。
だってさ、俺だって首飾りの事なんてすっかり忘れてたし、こんな効果があるなんて知らなかったし。
うん、俺は悪くない。悪くないよな。
便利な魔法のおかげで、後片付けもすぐに終わってしまった。
あのテーブルに戻るのが憂鬱だな。なんか空気重いし。
せっかく買ってきたワインも、誰も手を付けてない。
お酒、飲めなかったかな?
そうか!食後のデザートか!
季節の果物でも買ってきましょうか?
うん、その理由でここから脱出できそうだ。
「そういえば、デザートなかったですね。買ってくるのでちょっと待っててくださいね。」
メ「・・・かないで」
「え?」
メ「行かないで」
「もう、おなか一杯でしたか。それはそれ・・・」
突然メドゥーサにタックルされた。
いや、抱き着かれたのか。
メ「心配したんだから。バカ。」
「うん、ゴメン。」
胸に頬をうずめ 泣いていたね・・・
今日はやけにチェック柄が頭をよぎるな。
姉二人の生暖かい視線が気になるが、今はされるがままにしよう。
メドゥーサさん、力の調整できてます?結構苦しいんですけど。
また首飾りが砕け散りそうです。
姉二人に助けられ、やっと俺は解放された。
場の空気も戻ったように思える。
エ「じゃあ、ワイン飲むか。」
ス「せっかく買ってきてもらったんだから、いただきましょう。」
メ「でも3本しかないよ?あんたの分は?」
え?一人1本の計算なの?
この姉妹、かなり酒が強いです。
ザル?いや、編み目もない。枠です。枠。
コーラでも飲むように、みんなラッパ飲みで一気飲み。
一瞬で消費してしまった。
エ「足んないね。追加だ追加。」
メ「秘蔵の酒、出しちゃおうか?」
ス「そうね。メドゥーサちゃんの記念日だもんね。」
メ「ちょ・・・///」
あれ?誕生日か何かだった?
それなら言ってくれればバースデーケーキでも買ってきたのに。
そんなことより、出てきた酒が問題だ。
4リットル入りそうな瓶の中に、ヘビが入ってますよー。
マムシ酒みたいなものか?
絶対度数高いでしょ、これ。
ス「はい、グラスどうぞ。」
俺はグラスを渡されたが、これがまたビッグサイズ。400mlぐらい入りそうだ。
エ「じゃあメドゥーサ、お酌してあげれば?」
メ「はぁ?まあいいけど。ほい、さっさとグラス出しな!」
まあ色っぽい。
逆らえるわけもなく、俺がグラスを差し出すと、並々一杯注がれた。
ストレートですか、そうですか。割ったりしないんですね。
三姉妹は、まるで水を飲むかのようにグビグビ飲んでいる。
恐る恐る一口だけつけてみると、唇が燃えそうです!
ス「あら、お口に合わないかしら?」
エ「遠慮すんなって、色々世話になってるからな。」
メ「私の注いだ酒が飲めないのかしら?」
えい、ままよ。
俺は一口飲み込んだ。
喉がカッと熱くなる。胃袋でも感じるほどだ。
これは絶対酔うやつだ。間違いない。
しかし、二口飲んでも三口飲んでも酔わない。
あ!アイテムの効力で状態異常が無効になってるのか。
酩酊って状態異常の一種だったのね?
結局俺は、ビッグサイズのコップで3杯ほど飲み干してしまった。
全然酔わない。
これだと飲む意味が全くないな。
そんな俺をみて、三姉妹は驚いているようだ。
一番驚いてるのは、俺ですよ。
ス「あら、いやですわ?少々飲みすぎたみたいね。まっすぐ歩けないわ。」
エ「うー、クラクラするよー。」
メ「あれれ?お姉が4人に見えるぞ?」
みなさん、セリフが棒読みですよ?
余りにも酒が強すぎる女性は嫌われるから、酔ったふりしてるのかな?
なかなかかわいいところがあるじゃないか。