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15.禁忌の書

しかし、やっぱり海は危険だな。

ステータスにペナルティを食らってる状態だから、危険な海から離れよう。


海を背に歩き出すと、さっきの漁師たちが兵士らしき人を連れて戻ってきたのが見えた。

別に悪いことをしたわけではないが、反射的に岩陰に身を隠した。


「兵隊さん、こっちです。ここに魔物が!あれ?縄にかかってるな?」

「ん?誰かが縄で捕まえたのか?」

「いや、誰も縄は投げてねえです。」

「今がチャンスだ、倒すぞ!」

「あれ?こいつ、もう死んでねぇっすか?」

「そのようだな。早くしないと消える。剥ぎ取るぞ。」

「いや、これは俺の縄だ!剥ぎ取るのは俺に権利があるぞ!」

「何を言ってる、逃げた時点でお前は権利を放棄してるだろう。」

「そうかもしんねえけど、あんたに権利があるわけじゃねぇだろう。」


醜い。

なんという低レベルな争いだ。

このまま岩陰から出ると見つかりそうなので【デコンブ】で戻ろう。




俺は地下室に戻る。

やることがないので、とりあえず合成装置の前に座ってみた。


 《合成装置》

  ようこそ!合成装置へ

  どれを合成しますか?

   【低級回復薬】

   【劣化毒消し】


そういえば、レベルが12になったんだから、新しいレシピを覚えていいよな?

まだ2つしか表示されてないのが不思議だ。


そういえば、レシピが増えたとき、インフォメーションが流れた気がしたな。

なんか、変なタイミングで上がった気がする。

レベル2に上がってから、少ししてからだったような。


うん、忘れたな。しゃーない、レシピの増やし方をギルドで聞いてみるか。

チュートリアルで出てきた爺さんなら知ってそうだな。


1階にあがると、精霊4人衆が勢ぞろいだ。

ガールズトーク展開中である。

これは首を突っ込んではいけない。そそくさと出ようか。


A「あら、お出かけ?」


俺に話しかけてるよね?

仕方ない、返事するか。


「うん、ちょっとギルドにね。」

A「夕飯はどうするの?」

「俺の分も作ってもらえるなら、ありがたくいただくよ?」

A「4人も5人も変わらないから作ってあげる。」

C「ちょっと、今日の料理当番私なんだけど?」

A「うん、知ってる。だから言ってみた。」

C「ひどくない?アリス鬼だよね。」


ガールズトークが盛り上がってきたので、さっさと出よう。




ギルドに到着した俺は、生産職ギルドの受付の人に聞いてみた。あの爺さんじゃなかったけど、まあいいか。


「すみません、【合成】のレシピってどうやったら増えるんですか?」

「レシピの成長は、器用値に対応していますので、器用値が上昇するタイミングで新たなレシピも増えます。」

「え?器用値が上がるタイミングですか?」

「はい、こちらの装置でポイントを割り振ると思いますが、器用値にポイントを振ったときに、増える仕組みになっています。」


えっと、俺の器用値は255で、これ以上は上がらないよな。

正式な手順で器用値を上げてないから、もしかしてもう上がらない?

なにそれ、裏技による弊害か?一旦、器用値を下げなきゃダメか?


いや待てよ、【劣化毒消し】は勝手に増えたぞ?

しかもそのインフォが流れたタイミングは、器用値が増えたときじゃなかったし。

何だったんだ、あれは。


俺は無意識に、いつもの悪い癖が出たようで、独り言を言っていた。


「じゃあなんで【劣化毒消し】を覚えてるんだ・・・」

「【劣化毒消し】は器用値が10になるタイミングで追加されるものですね。」


いや、俺が覚えたのは器用値が10になったタイミングじゃない。

何か、他にレシピを増やすやり方がありそうだな。


「器用値上昇以外のタイミングってないんですか?」

「基本的にはないです。」

「基本的ってことは、例外があるんですか?」

「はい、虎の巻を読むことで覚えることができます。」

「それって、わざマシンみたいな物ですか?」

「ちょっと何言ってるかわからないです。」


わかったぞ。

【劣化毒消し】を覚えたタイミングは、地下の読めない本を読んだ時だった。

読めないからすぐに中断しちゃったけど、その時【劣化毒消し】のレピシを覚えたのか?

きっと、そうに違いない。


そうとわかれば、地下室にGo!だ。




地下室の壁際にある本棚。その中から、1冊の本を取り出す。

俺が【劣化毒消し】を覚えたときに手に取った本だ。

分厚い表紙をめくり、中を見る。

やはり、解読不能な記号のような物が並んでいるだけだった。

前回読んだときは、1ページだけで見るのをやめてしまった。

次のページをめくってみる。

何が書いてあるのかわからないけど、これで新しいレシピを覚えるのかな?


 《Information》

  新たに【煙幕玉(小)】のレシピを覚えました。


おお!期待通りだ!

こうやってレシピが覚えられるみたいだ。


次々読んでいこう!

と思ったけど、読めない本を読むのは苦痛しかない。

しかもこの本重いし。ちょっと休憩。


本棚に本を戻す。

本の数を数えてみると、全部で11冊あった。

だめだ、これを全部読むなんて、絶対無理。

そう、自慢ではないが俺は面倒くさがりなのだ。


今まで覚えたレシピを思い出してみる。

【低級回復薬】

【劣化毒消し】

【煙幕玉(小)】

どれも、上位のアイテムがあることが想像できる。

なら、最初から上位のやつだけ覚えておけばいいんじゃないの?


俺がさっき手にしたのは、本棚の一番左にあるやつだ。

きっちりとした性格の人なら、左から順番に並べるだろう。

ということは、一番右の本だけ見ておけば良い気がする。

しかも一番右の本は、他と装丁が異なる。

1冊目から10冊目までは、深い緑色の表紙になっているが、一番右の11冊目は臙脂色になっていて、他と違うように思える。

さらに、11冊目はそれ以外と比較してページ数が少ないのか、薄い作りになっている。

これなら何とかいけるか。


短い休憩のあと、一番右の本を取り出す。

薄いはずなのに、なぜか1冊目よりも重く感じた。

「おもっ」

持ち直すために、合成装置の作業台の上に本を一旦置く。


すると、表示に変化があった。


 《合成装置》

  レシピ虎の巻11巻『禁忌の書』を認識しました。

  禁忌とされるレシピが含まれています。

  このレシピをインポートしますか? <Yes> <No>


ちょっとまて、これ、読まなくてもいいの?

しかも禁忌とか、怖くない?

怖いよね。じゃあ<Yes>にしますか。


マウスを操作して<Yes>を選択。


 《合成装置》

  以下のレシピがインポートされました。

  禁忌とされるアイテムが生成されますので、熟考してご使用ください。


  【全快玉】HP/MP/状態異常をすべて回復

  【無敵の実】物理攻撃/魔法攻撃/状態異常がすべて無効(※)

  【不死の首飾り】致命傷を負っても、ステータス全回復で復帰する。(1回のみ有効)

  【蘇生粉】死者を復活させる

  【千里眼鏡】魔物・プレイヤー・NPCをマップ上に表示させる(※)

  【不可視薬】対象物を透明化する(※)

  【半速目薬】相手の動きが通常の半分の速度に見える(※)

  【金縛り笛】笛の音色を聞いた対象は、動作不可となる(※)

  【服従液】その液体をかけることで、相手を服従させる

  【致死毒】大型のドラゴンも即死させるほどの強烈な毒薬

  【天使の翼】飛行を可能とする(※)

  【瞬移の羽】マップ上の任意の場所への移動を可能とする

  【巻戻の指輪】時間を最長で1時間前まで戻せる

  【忘却の香水】相手の記憶を最長で1時間消すことが可能

  【亜空間扇】扇であおった風で、魔物を亜空間へ飛ばす

  【破滅の結界】3点で囲まれた場所の魔物をすべて破壊

  (※)効果は最長で6時間継続。

  【無効水】(※)の効果を強制的に無効にする

  

これ、アカンやつやん。

ステータスだけでも十分チートなのに、このアイテムはダメだ。

作るなよ、作るなよ、絶対に作るなよ!


さて、素材は何が必要なのかな?

調べてみますか。

確か、手をかざすとわかったはずだな。


 《合成装置》

  ・低級回復薬=薬草+ロッソベリー

  ・劣化毒消し=薬草+にがり草

  ・煙幕玉(小)=火薬石+けむり草

  ・全快玉=岩竜の心臓+ユニコーンの角

  ・無敵の実=麒麟の髭+マッカムの実

  ・不死の首飾り=不死鳥のくちばし+太古の鎖

  ・蘇生粉=地獄樹の没薬+天国樹の乳香

  ・千里眼鏡=ギガンテスの目玉+天空竜の爪

  ・不可視薬=変色龍の皮膚+千日悪草の露

  ・半速目薬=爆走怪鳥の肝汁+海竜の鱗

  ・金縛り笛=暴君蜥蜴の声帯+月のしずく

  ・服従液=鵺の尻+黄金

  ・致死毒=ヴェノムフロッグの毒袋+ポイズンスコーピオンの毒袋

  ・天使の翼=イカロスの堕翼+死神の蝋燭

  ・瞬移の羽=時空鳥の羽毛+女王魔蜂のプロポリス

  ・巻戻の指輪=火車の肉球+クロノスの指輪

  ・忘却の香水=誇張茗荷の新芽+海中鹿の香嚢

  ・亜空間扇=羅刹女の扇+青狸猫の衣嚢

  ・破滅の結界=エデンの杭+アンゴルモアの涙

  ・無効水=聖水+トリケシ草


これはひどい。

素材の名前だけで、入手困難というのがわかる。

やーめた。めんどくせー。


地道に他の本をインポートして、まじめに生産職しましょうかね。

そう思い、本に手を伸ばしたところで、上から声が聞こえた。


C「ご飯できたよ。早く来ないとなくなるからね。」


うひょ。メシだメシだ。

一番優先されるべき事案だ。

1階へ急ごう。


「ありがとう、俺のために作ってくれたんだね?」

C「べ、別に、あんたのために作ったんじゃないんだからね///」

「一度でいいから言われてみたかった。」

C「一度でいいから言ってみたかった。」


5人での食事となる。


「いただきまーす」


4人の女性陣は、いつもの通り、終わりのない会話で楽しんでいる。

俺はというと、空気だ。無言で食物を口に運んでいるだけだ。

会話に入る突破口を探しているが、見つからない。

次に俺が発した言葉は


「ごちそうさまでした」


はい、介入を諦めました。


食器を下げ、【クリン】と【ドライ】をかけて食器棚に戻す。

今回の食事は拷問に近かった。

明日はどうしよう?逃げちゃダメか?


また、地下に潜るか。

そう思い、キッチンからホールに出ると、チャミに話しかけられた。


C「あんた、顔色悪かったから、元気がつく料理にしたのよ?感謝しなさいね。」


俺の顔色が悪い?

ああ、死に戻りでステータスが低下していたからか。

やばい、泣きそうだ。

料理がどれだけ効果があったか確認してみよう。


 《ステータス》

  攻撃力:255

  防御力:255

  敏捷性:255

  器用値:255

  知力:255


お!デタラメみたいな数値に戻ってる。

すごくレアな料理を作ってくれたんじゃないか?

惚れてまうやろー

そういえば、俺の禁忌のレシピでも似たようなものがあったな。

さっさと地下室に行くか。




 《合成装置》

  ようこそ!合成装置へ

  どれを合成しますか?

   【低級回復薬】

   【劣化毒消し】

   【全快玉】

   【無敵の実】

   【不死の首飾り】

   【蘇生粉】

   【千里眼鏡】

   【不可視薬】

   【半速目薬】

   【金縛り笛】

   【服従液】

   【致死毒】

   【天使の翼】

   【瞬移の羽】

   【巻戻の指輪】

   【忘却の香水】

   【亜空間扇】

   【破滅の結界】

   【無効水】


しっかし、増えたもんだな。

まじめに素材を集めるつもりは毛頭ないので、また止めてみますかね。


Ctrl+C


さて、どんなファイルがあるんでしょ?


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