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10.出せなかったラブレター

先ほど見つけた地下室に入ってみる。

地下なので、当然窓はない。天井には裸電球のようなものがあったので点灯させる。

あっ!【ライト】の魔法を使えばよかった!


壁際には本棚があって、年季の入った百科事典のような本が数冊並んでいた。

適当に一冊手に取ってみる。


すると、本と本の隙間から、一枚の手紙が落ちた

その手紙は未開封で、『愛するユミンへ』と、恥ずかしい宛名書きがあった。


なんだこれ、出そうとして出せなかったラブレターか?

それとも、受け取ったけど読んでもらえなかったのか?

前の住民の物だろうな。後で見て爆笑しようか。

とりあえず【アイテムボックス】に放り込んでおく。


他人のラブレターよりも、今はこの本が読みたい。

A4よりも、少し大きいサイズだ。B4かな?まあ、規格通りに作られているとは思えないが。

本の厚さは10cmぐらいありそうだ。ずっしりと重い。


表紙に何か書いてるが、解読不能だ。

中を見てみたが、読めない。

何か記号のようなものが並んでおり、おそらく何かの言語なのだろう。

ま、読めないものは仕方ない。レベルが上がったら、読めるようになるのかもね。


 《Information》

  新たに【劣化毒消し】のレシピを覚えました。

  合成装置に手を乗せると、レシピリストが表示されます。


なんだ?

変なタイミングでインフォメーションが来たぞ?

とりあえず確認は後回しで、この部屋を調べようか。


部屋の中央には、陶器を作るためのロクロのような装置があった。

何だろう?ここは前の住人の趣味の部屋かな?ここで湯飲みでも作ていたのかな?

装置の前に座ってみると、見慣れた文字が現れた。


 《合成装置》

  ようこそ!合成装置へ

  どれを合成しますか?

   【低級回復薬】

   【劣化毒消し】


お!これは!【合成】の装置じゃないかっ!

たしかチュートリアルで、失われた技術だからギルドにしかないって言ってなかった?

なんだろう?これって裏技の一種なのかな?


本当にこれで【合成】できるか試してみよう。

えーっと、素材は・・・持ってないな。

そろそろ【ロッソベリー】が収穫できるんじゃないかな?確認してみよう。


1階に戻り、ロビーに行くが誰もいなかった。

外に出て、花壇の様子を見る。

なんと【ロッソベリー】が実をつけているではないか。

よし、収穫だ。

実を取ろうと手を伸ばした瞬間、後頭部を叩かれた。


D「チョップ!調子に乗って、全部取らないでね!いくつかは種にするから。」

「あ、そうだね。全部取ったらなくなっちゃうもんね。じゃあ2個だけもらうよ。」

D「知らないと思うけど【ロッソベリー】って限られた環境でしか育たないの。」

「へー、あ、俺、河原に成ってたやつ、全部持ってきちゃったけど、大丈夫かな?」

D「マジで?あと数ヶ月は野生の【ロッソベリー】は手に入らないよ?」


そうだったんですか?

最初に合成するアイテムだから、そんな貴重品だと思わなかったっす。


「ま、ここにあるし、いいか。」

D「あんたはいいかもしれないけど、他の人に迷惑だよ?」

「やべ。まあ知らなかったのはしょうがない。みんなには黙っててね?」

D「全部取られないように【ストーンフロッグ】が守ってたはずだけど、どうしたの?」


なるほど。

だから俺が取りまくってるときに飛んできたのか。

ダメだよ、弱すぎる。


「あいつ、番人だったんだ。思いっきり投げちゃったけど。」

D「投げたってあなた、まあいいわ、私も別に困らないしね。」

「ついでに【薬草】ももらってくよ。」

D「【薬草】ならいくらでも持って行っていいわよ。こいつらは勝手に生えてくるし。」

「じゃあ適当に10株ぐらいもってくね。」


2つの素材を入手して地下室に向かう。

さて、確認作業しますか。


 《合成装置》

  ようこそ!合成装置へ

  どれを合成しますか?

   【低級回復薬】

   【劣化毒消し】


そのまま素材を乗せて、蓋をしてみよう。


 《合成装置》

  【薬草】と【ロッソベリー】を認識しました。

  合成することで【低級回復薬】になります。

  合成しますか? <Yes> <No>


おお、ここまでは順調だ。

いつもここで画面をタップして悔しい思いをしている。

きっとあるんだろう?あのキーボードが。

下を見ると、ありました。キーボードとマウスが。


え?マウス?


こっちの装置の方がハイテクマシンなのか?

マウスが使えるかやってみよう。


マウスカーソル動かして<Yes>の上でクリック!

光が漏れるおなじみの演出のあと、蓋を開けると【低級回復薬】が出来上がっていた。

おー、ちゃんと機能するじゃないか。マウスが使えるだけで、ストレスが半減だな。

わざわざギルドまで行く必要がないのが嬉しい。


そういえば、さっきレシピを覚えたというようなインフォメーションがあったな。

履歴を確認してみるか。


 《Information履歴》

  新たに【劣化毒消し】のレシピを覚えました。

  合成装置に手を乗せると、レシピリストが表示されます。


手を乗せるとレシピリストが表示されるのか。

どれどれ、手を乗せてみますか。


 《合成装置》

  ・低級回復薬=薬草+ロッソベリー

  ・劣化毒消し=薬草+にがり草


なるほど、こんな感じね。

【劣化毒消し】には【薬草】と【にがり草】が必要なのか。

商人ギルドに依頼すれば、手に入りそうだな。

ギルドに行ってくるか。




ギルドに行くと、何やらざわついていた。

いつもガラガラの商人ギルドにも行列ができていた。

仕方ないので最後尾で待つことにする。

並んでいる人は、気が立っているようで、怒声も聞こえてきた。

クレーマーか?困りますね、もう少し落ち着いてください。


あと一人となったところで、前の人の会話が聞こえてきた。


客「回復薬はないか?低級でもいい。あるだけ売ってくれ。」

職員「現在回復薬の入手が困難になっておりまして、お一人様3個までとさせていただいています。」

客「バカヤロウ!そんなんじゃ足りない。冒険に行けないじゃないか。」

職員「申し訳ございませんが、在庫が厳しい状況ですので、ご理解いただきたく。」

客「わかった、3個だけでいいから売ってくれ。ったく、回復魔法が使えるやつをパーティーに入れないとな・・・。」


回復薬が枯渇してるだと?

その原因がなんとなく想像できる。

超心当たりある。


俺の番になった。


「すんません【にがり草】ありますか?」

「よかった、回復薬じゃないんですね。【にがり草】ならありますよ。おいくつ必要でしょうか?」

「とりあえず10個ください。」

「はい、すぐにお持ちします。」


俺は【にがり草×10】を入手し、ギルドカードで支払った。

そのギルドカードを見たのか、ギルド職員から声をかけられた。


「失礼ですがお客様、生産職でしょうか?」

「はい、そうですよ。」

「可能であればで良いのですが【低級回復薬】もお作りできますか?」

「ええ、レシピは知ってるので作れますよ?」

「それが、材料の入手が困難な状況らしく、生産職ギルドからの納品が滞っているんですよ。」


あーあ、やっぱそうか。ドリーの懸念が現実のものに。

すごく責任を感じた俺は、こう言い放った。


「それは大変ですね。」


逃げるように生産職ギルドに移動する。

【劣化毒消し】の依頼がないか、クエストボードを探す。

なんと!クエストがないではないか!!【低級回復薬】のクエストばっかりだ。

まったく、常時クエストにあるのに、なんでわざわざ個別に出すんだ。

よく見ると、常時クエストと個別クエストでは、達成時のボーナスが違っていた。

軒並み金額が上がっている。需要と供給のバランスが狂ってますね。

俺のせいですね。すみません。


そうか、常時クエストか。そっちに【劣化毒消し】ないかな?

あったあった。危なく同じミスをするところだった。


納品の仕方は、前回覚えた。

そう、セルフレジだ。

依頼書をガラス面にかざして、納品物をカゴに入れる。


あ、そういえば、キーボード操作ができたな。

ちょっと試してみようかな~


俺は、ギルド裏にある工房で【合成】することに。

【アイテムボックス】の中はこんな感じだ


 《アイテムボックス》

  薬草×13

  ロッソベリー

  にがり草×10


今更だが、2個以上あると×で表示されるようだな。

さっき、家の花壇からとってきた【薬草】の残りと、さっき買った【にがり草】で【劣化毒消し】を作る。


 《合成装置》

  ようこそ!合成装置へ

  どれを合成しますか?

   【低級回復薬】

   【劣化毒消し】


さて、一気に10個ずつの載せますか。


 《合成装置》

  【薬草×10】と【にがり草×10】を認識しました。

  合成することで【劣化毒消し×10】になります。

  合成しますか? <Yes> <No>


キーボードで<Yes>を選択してEnterだ!

お、ちゃんと【劣化毒消し】が10個あるじゃないか。

よし!納品だ納品だ。

納品で、レベル上がるかな?


そういえば【低級回復薬】が貴重品っぽいから、今の手持ちで作っておくか。

ま、1個しか作れないけどね。


セルフレジで納品する。


 《依頼》

  依頼者:商人ギルド

  依頼内容:劣化毒消しの納品

  達成ボーナス:20ガル/個

  取得経験値:2ポイント/個


個数の指定はない。

1個につき20ガルがもらえ、2ポイントの経験値が得られるようだ。


 《依頼》

  依頼品を右側のカゴにお入れください。

  カゴに入らないサイズの場合は、職員をお呼びください。


俺は、カゴに【劣化毒消し×10】を入れる。

すると、画面の表示が変わった


 《依頼》

  納品数は9個でよろしいですか?<Yes> <No>


あれ?10個入れたのに。

見ると、2つの【劣化毒消し】がくっついていた。

それをバラバラにして、もう一度カゴに入れる。

それでも表示が変わらないので<No>を選択した


 《依頼》

  正しい納品数を入力してください。


俺はキーボードで10を入力してEnterを押す。


 《依頼》

  確認中...


という画面から


 《依頼》

  納品数が10個あることを確認しました。この内容でよろしいですか?<Yes> <No>


に変化した。


<Yes>を選んで納品は完了した。レベルアップはどうか?


 《Information》

  依頼達成によりヨシュアのレベルが上がりました。

  クエスト達成報酬として200ガルを入手しました。

  ボーナスポイントが1ポイント付与されます。ポイントの割り当ては、ギルド端末から行ってください。


きたきた!意外とレベルアップ簡単じゃん、このゲーム。

レベル2になるときに、【低級回復薬】を60個も納品してるから、結構レベル3の近くまで行ってたのかもね。


ところで、レベルアップのタイミングって何だろう?

今まで獲得した経験値がわからないけど、勝手に想像、いや妄想で計算してみよう。


レベルが2になったタイミングは、納品で60個を納めた時だ。

この時に経験値を60獲得した。

でも、このうち30個は商人ギルドで買ったものだから、自分で作ったのは30個だ。


一つの【低級回復薬】を作ったときに、どれだけの経験値が得られるのか未知数だが、納品で得られる経験値よりも多いということはないだろう、と勝手に想像。

そうなると、自然数であると想定して、1個作ると経験値が1ポイントとする。


その想定が正しければ、30ポイントではレベルアップしなかったが、90ポイントでレベルアップした。

レベル2になるために必要な経験値は30~90の間となる。まあ妄想だが。


【劣化毒消し】を作るときに得られる経験値は不明だが【低級回復薬】よりは多いだろう。

んで、納品時のポイントを上回ることがないと想定した場合、2ポイントになるのだろうか?

案外、納品時のポイントと、作成時のポイントは同じなのかもしれない。


【劣化毒消し】は10個作ったので、これで20ポイントがプラスされ、90+20=110ポイント。

あとは自宅の工房とギルドの工房で、それぞれ【低級回復薬】を1個ずつ作った。

これで2ポイントが追加され、112ポイントとなる。


この状態で【劣化毒消し】を納品してレベルアップした。

【劣化毒消し】は、納品時に1つあたり2ポイント貰える。

10個を納品したから20ポイントが上乗せされたことになる。

現在の経験値は112+20=132となる。

このことから、112~132ポイントの間に、レベル3になる閾値があるわけだ。


ちょっと、レベルアップのメカニズムを考えてみますかね。

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