デカいな……
インフルエンザで寝てました。
お待たせしてしまい申し訳ありません。
みなさんも体調には気を付けてくださいね。
すみませんトニーの口調間違えてました。それを修正
「どうする?この七色羊っての受けてみるか?」
「本当に居るんですかね?」
「どうだろうな?見つからない気がするが」
「とりあえず話だけでも聞いてみます?帽子も返さないとですし」
「そうするか」
他にも気になるクエストはいくつかあったが書類が整ったらしくギルドの職員から声がかかった。
「ではクラークさんこちらの書類を確認してサインをお願いします」
サインをして手続きを終える。とりあえずトニーの家を尋ねてみるかと出口へ向かっているとギルド職員が追いかけてきていた。
「あのメリッサ・ハルトマンさんですよね?」
「そうですけど、なにか?」
「ヒクイドリの件もありましてAランク冒険者へ昇格が認められていますので、手続きしていただけますか?」
ギルド職員はメリッサの腕を捕まえるとグイグイと引っ張っていく。これは時間が掛かりそうだ。いまのうちに終わらせてしまうか。メリッサの帽子と一緒に買っておいた銀の小さな指輪を取り出して付与魔術を掛ける。
キラキラとした魔力の光を残しながら完成した指輪には硬化の魔術がかかっている。その様子をじっと見ていたジェームズは期待するような目で俺を見つめる。俺は完成した指輪をジェームズの人差し指にはめてやる。
「魔力はそれなりにあるようだし、こうギュッと魔力を指輪に集めてみろ」
「えーっと。えいっ!えいっ!」
しかし何も起こらない。ジェームズは何度も試しているが全く魔術が発動する様子はない。
「ちょっと貸してみろ」
ジェームスから指輪を受け取り小指にはめる。魔力を集めて魔術を発動する。指輪が一瞬小さく光ると硬化が発動した。全身が硬化していくのが分かる。もう一度魔力を込めて解除すると、指輪をジェームズに返した。
「今指輪が光ったよ!すごいん」
「慣れればジェームズにもできる様になるさ」
「うん」
ジェームズは受け取った指輪を人差し指に戻して硬化を発動させようと色々とやっている。
「上手く発動したら同じようにもう一度魔力を込めると解除されるんだ」
「うん。でも僕これまだ上手くつかえないん」
「暇なときに練習すればいいさ。俺とメリッサで守ってやるつもりだが万が一の時はこれで身を守れ」
「うん。頑張るん」
必死に練習しているジェームズをほのぼのとした気分で眺めているとギルドに大きな歓声が響いた。声がする方を見るとちょうどメリッサがAランク冒険者の腕輪を受け取るところだった。見物している冒険者が史上最年少とか言っているのが聞こえてくる。確かに十五歳でというのは他に聞いたことがない。
冒険者たちから質問攻めにされているメリッサを遠巻きに眺めていたのだが、ギルド職員が俺を指さして何か言ったかと思うと冒険者たちに引っ張られるようにメリッサの所まで連れていかれてしまった。
「あんたがこのお嬢ちゃんを育てたのかい?」
「あー俺知ってるよ。このおっちゃんSランクの中でも有名人だよ」
「俺も聞いたことがあるぞ」
「そっちの小さい子も冒険者に育てるのかい?」
質問攻めから解放されるのに随分と時間を取られてしまった。代わりにこの街の主要な冒険者たちと顔見知りになれたし美味い店の情報なども教えてもらう事ができた。あのドネルケバブはこの街でかなりおすすめの味だったらしい。
やっとギルドの冒険者から解放された俺たちは、魔族の羊飼いトニーの家を尋ねていく。道行く人に聞くとすぐにトニーの家の場所は分かった。そこそこ大規模な街なのに羊飼いのトニーというだけで家が分かるという事に違和感を感じたが、家にたどり着いた時その謎の一部は解けた。
「デカいな……」
「大豪邸ですね……」
「羊飼いってそんなに儲かる職業だったのか?」
「住み込みで働いてるとかなんですかね?」
どうするか悩んでいると執事服に身を包んだ老紳士が中から出てきた。
「当家になにかご用事でも?」
「羊飼いのトニーにこれを返しに来たんだが……」
そういってトニーから借りていた羊毛の帽子を差し出す。
「これは確かに御当主さまの物に間違いありません。話は聞いておりますお通り下さい」
執事さんが案内してくれる、外から見た以上にとんでもなく広い屋敷だ。
「おい、めちゃくちゃ広いなここ」
「ですね。羊飼いって儲かるんですね……」
「いえ、御当主様は特別です」
執事さんに聞こえていたらしく訂正されてしまう。やっとたどり着いた広い部屋でトニーは食事を食べていた。
「いい所に来てくれたっすね。夕食一緒にいかがっすか?」
俺達が来た事は既に報告されていたらしく、既に俺たちのための席が用意されていた。礼をいって席に着くとすぐにメイドたちが湯気の立つとても美味しそうな料理をはこんできた。焚き上げた米を羊肉と共に炒めた料理と、それによく合うやはりこちらも羊の肉が入ったスープで非常に美味しい。
「これは美味いな」
「お昼に食べたドネルケバブも美味しかったですけど。これも美味しいですね」
トニーは少し残念そうな表情をみせて言う。
「あちゃーもう食べちゃったっすかー。この後にうちの包丁人自慢のドネルケバブが出てくるっすよー 美味いんで食べていってほしいっす」
俺はクエストに出ていた七色羊の事を聞いてみる事にした。
「さっきギルドで見たんだが七色羊ってなんだ?」
「あの依頼を受けてくれるんすか?」
「話をきいてからだな。幻を追いかけるだけの無駄足は困る」
「なるほ。そうっすよね」
トニーはフォークとナイフを皿において話始める。
「この家は七色羊で大金を稼いだうちのじーさんが建てたものっす。だから七色羊が存在しているのは確かっすよ」
「実在はしたということか」
「そうっすね。おい、あれを持ってきてくれ」
トニーに言われた執事は部屋をでていき、しばらくして一枚の織物をもって帰ってきた。それは確かに七色羊と呼ぶのにふさわしい色彩を放つ織物だった。執事は俺にその織物を手渡す。
「それが、七色羊の毛織物っす。どうっすか?」
執事から受け取った毛織物は見る角度によって虹のようにころころと色を変える。たしかにこれをなんと表現するかと聞かれたら七色羊というしかないだろう。
「こんな毛並みの羊が居るんだな」
「じーだんだけがその七色羊の毛織物を作れたっす。当時の王侯貴族が競って七色羊の毛織物を買ってくれて、うはうはだったらしいっすよ」
確かに見る角度によって七色に輝くこの織物は莫大な富を生み出しただろう。
「でもそのじーさんが、七色羊の育て方をおやじに教える前に亡くなったっんすよ」
「なるほどな。それで冒険者を雇ってさがしていると」
「そうっす。スコットさんたちもどうっすか?」
悩むところだ。冒険者たちを雇って探し続けているという事は既に多くの冒険者が色々と探し回った後だという事だろう。今更それに参加して見つけられるとは思えない。やはり断るべきだろう。
「考えていることは分かるっすよ。ギルドに出てしてる報酬っすが、あれは失敗しても支払われる報酬っす」
「と、いうと?」
「今まで俺とおやじで探していたのに見つからなかったんすから、失敗しても手間賃として払うっす」
「なるほどな。もし、見つけられた時はどうなるんだ?」
「見つけた時は、それとは別に白金貨を二十枚お支払いするっす」
白金貨で二十枚というと金貨百二十枚分になる。とんでもない金額だ隣でメリッサも息をのんでいる。
「どうっす?もちろん見つけた場合の為に守秘義務契約にサインしてもらうっすが」
俺とメリッサは顔を見合わせる。羊を探すという子連れでも安全そうなクエストで見つかった場合には高額の報酬。考えるまでもなく答えは決まっていた。