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ロリっ子のLか?

「本当なのか?!」


 師匠の言葉につい大声をだしてしまう。なにせ付与術師であることが俺の存在証明のすべてだから。


「あたしの故郷に居る回復魔術専門の奴ならおそらく治せるはずだよ」

「治癒術師なら他にもいるんじゃないのか?」

「ドラゴンに食われた腕を生やせるような回復術師が他に居るならね」

「なんだそりゃ?そんな話聞いたことがない」

「ただ、それでも確実に治るとは限らないよ」


 師匠の性格からして治る確信があるならあの場ですぐに話しただろう。それを今になっていうのだから良くて五分五分なのかもしれない。


「その時は別の生き方を探すことにするさ……」


――


 家に戻り三人でテーブルを囲み夕食を食べる。師匠が用意してくれた料理は全てここを出ていく前、まだ少年だったころに好きだったものばかりだった。


「俺の好きだったもの覚えてくれてたんだな」

「そりゃそうさ。何年一緒にいたと思ってるんだい」


 メリッサが話に加わってくる。


「へえ、スコットさんはこういう料理が好きなんですね」

「今は酒の肴になるようなものの方が好きだがな」


「生意気なことを言うようになったねえ。昔はあんなに素直でかわいかったのに」


「えっ?どんな感じだったんですか?聞きたいです」

「あれはスコットが十四歳になった日の事なんだがな――」


「うわあああ!!やめろやめろ!!!」


 俺が必死に止めるのも無視して、過去の恥ずかしいエピソードがつまびらかにされていく。そのたびにメリッサは俺をちらちらとみてはくすくすと笑っている。


「ほんと辞めてくれよ」

「まあこのくらいで勘弁してやるか」


 やっとやめてくれたのはいいんだが、ほぼ全部暴露され終わってるのであまり意味はない。師匠の興味はメリッサのほうへ移ったようだ。


「メリッサちゃんのその羊っぽい角珍しいね。それにその羽もね。あたしの知り合いにもいたよそういう人」

「そうなんですか?」

「ふうん、まあいいか。それよりメリッサちゃんとスコットの関係はどうなってるんだい?」


「なにもないぞ!ただのパーティー組んでる仲間だ」


「私なんてただのパーティーの仲間ですか。そうですか」

「いやそうじゃなくて、家族というか娘みたいなものというか」


 師匠はにやにやと見ていて、俺の反応を楽しんでいるようにしか思えない。


「家族ねえ……ならメリッサちゃんもアタシの事を家族みたいに呼ぶかい?」

「ええと、スコットさんがおとーさんなら、アナスタシアさんはおばあ――」

「へえ……その若さで死にたいのかい?」

「いや!おかーさんですね!」


 慌てて言いなおすメリッサの言葉に満足げにうなずいた師匠は俺に向かって、「お前もおかーさんと呼べ!」と、しつこく迫ってくるのだった。


――


 師匠に教えてもらったエルフたちの神域にいるという治癒術師、彼に会うために旅に出る日がやってきた。魔術が使えない事以外、俺の体調は完全に戻っている。


 俺とメリッサが旅の準備をしていると、師匠も旅の支度をして現れた。


「さあ、さっさとギルドへパーティー登録しにいくよ」

「まさか師匠も一緒に行くのか?」

「師匠じゃなくておかーさんと呼べ!あたし抜きでエルフの神域に入れるわけないだろう」

「まだそれを言う……そろそろ師匠で諦めてもらえないか」

「諦めるのはスコットのほうだよ。なぜならあたしは絶対に諦めないからな」


 どや顔で胸を張られても困るんだが。どうみても十歳くらいにしか見えないちびっ子相手に無精ひげのおっさんがおかーさんと呼んでいる姿を想像してみてほしい。もはや罰ゲームなんてレベルは遥かに超えている。拷問といってもいいくらいだろう。


 ギルド職員は奥の応接室で対応中のようで、御用の方はしばらくお待ちくださいという札が出ている。こういった小さな村は冒険者の数も少ないし、普段は猟師をしながら依頼があれば冒険者としてクエストをこなすといった人も多い。一人でも専属のギルド職員が居るだけましなほうだ。


 俺たちがカウンターの前で待っていると、奥の応接室から怒鳴り声が聞こえてきた。


「だから、なんで教えられないんだよ!」

「ですから、個人情報をお教えするわけにはいかないんです」

「こんな狭い村なんだから、どうせすぐ見つかるんだからいいだろ」

「だったら、そうすればいいじゃないですか」

「使えねえ職員だ!もういい!いくぞ」


 壊さんばかりに乱暴に開けられた扉から出て来たのはキリアン達だった。俺と目が合うとにこにこしながら近寄ってくる。


「スコット!お前を探してたんだよ」


 キリアンがにこやかな表情で話しかけてきた。他のメンバーも口々に久しぶりだとか会いたかったなどと言う。懐かしく思いながら見ていると、キリアン達がつけている腕輪が黒い赤銅のものに変わっているのに気づいた。前にBランクに落ちたと聞いたはずだが、今はCランクにまで下がってしまっているようだった。


「まあ、俺たちの仲だ。固い挨拶は抜きにして本題に入らせてもらうよ。俺たちのパーティーに戻ってこい」


 ズバリというキリアンの言葉を聞いて、隣にいるメリッサが不安そうな表情を見せる。だがメリッサが心配しているような事は起こる訳がない。


「わざわざこんな田舎にまで来てもらったのにすまないな。断らせてもらう」

「なぜ断るんだ!何年も一緒にやってきた仲間だろう?」

「今の俺にはメリッサと師匠という家族パーティーがあるからな」


 俺の返答を聞いたキリアンは怒りを隠そうともせず声を荒らげる。


「ずっと俺と一緒に旅してきただろう!そんな魔族のガキとエルフの子供がそんなに大事か!」

「そうだそうだ。俺たちの仲間だろう!Bランクの小娘なんてどうだっていいだろ」

「そんな幼女が冒険者になれるわけないじゃない」


 ヤバい……こいつ言ってはいけない事を言ってしまった。その思いは同じだったのだろう事情を知っているはずのギルド職員が顔を青ざめさせて飛び出してきて叫ぶ。


「あなたちCランク冒険者が何いってるですか!アナスタシアさんはLランク冒険者なんですよ!すぐに謝ってください!!」

「Lランクってなんだよ?聞いたことないぞロリっ子のLか?」

「違いますよ!歴代で五人しか認定されていないレジェンドランクの冒険者なんです!」


 歴代五人だけというのを聞いて流石にキリアン達も落ち着いたのか静かになる。だからといって諦めた訳では無いらしくまたも説得しようとする。


「頼むから戻ってきてくれよ」

「何度頼まれても無理だ。それに毒のせいで魔術が使えなくなっているしな」

「なんだって」


 毒で魔術が使えなくなったと聞くと、キリアン達はあっさりと引き下がる。口々に「時間の無駄だった」や「わざわざこんな田舎まできたのに」だのと言い捨ててギルドからでていく。魔術を使えない付与術師に対する態度なんてこれが普通だろう。そうではないメリッサと師匠は本当に稀有けうな存在だ。大切にしようと心からそう思う。


「なんだあいつら!よくあんなのと組んでたな。見る目なさすぎだろう」

「私と組むのはあんなに嫌がったのに、あんな人たちとはずっとパーティー組んでたんですね」


「うん……まあ……面目ない」


 パーティーの申請やそのほか留守にするのに必要な手続きが終わると、旅の荷物を取りに家に戻る。


「久しぶりの冒険だ。わくわくしてくるねえ」


 そういって師匠は自分の身長よりも鍵型の金具が付いた長い棒を振り回している。見ていたメリッサが不思議そうに師匠に聞く。


「棍棒?ですか?変わった武器ですね」

「いいや、これは棍棒なんかじゃないよ。よく見てな」


 そういって師匠が魔力を流すと柄の長さより長い槍の刀身が飛び出し大身鑓おおみやりになる。刀身と柄を合わせると俺の身長よりかなり長い。


「こっちの刀も同じ仕組みさ」

「すごい……」


 そういって、刀のほうも見せびらかしている師匠に向かってメリッサは「すごーい」を連発している。気を良くした師匠が派手に振り回してパフォーマンスを見せている。相変わらずあんな重いものをまるで軽い竹の棒のように振り回す師匠の腕は全くなまっていない。


 あれには見た目はただの棒だが高度な付与魔術がかかっていて刀身を格納する仕組みになっている。腰に下げている柄だけの刀も同じだ。俺にはまだあんな高度な付与魔術は使えない。


「そのやりと刀まだ持ってたんですね」

「そりゃそうだろう。あたしの人生の相棒達だからね」


「あっちにはアイツもいるから魔術が使える様に戻ったら、こういうのも教えてもらえばいいさ」


 俺と師匠に付与魔術を教えてくれた人。もう一度あの人に会えるなら今度こそ付与魔術の神髄を極めたいと思う。


「じゃあ、いくか」

初投稿作品です。


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