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旅立ちの前日2

「やあ、よく来たなロナウド」


 俺の目の前には背が高い男性がとても良い笑顔で立っている。

 彼は父上の弟、つまりは俺の叔父だ。

 俺が到着するのをわざわざ外で待っていたようだ。


「お久しぶりです、叔父様」


 こうして会うのは1年ぶりだ。

 前回に会った時は彼らが城まで来てくれた。


「しかしまた大きくなったなー。まあ積もる話もあるだろうし、早速中に入ってくれ」


「はい」


 目に入ったのは城とまではいかないが立派な建物だ。

 我が国は実際に国を治める者が王位につく事になっている。

 それ以外の王族は政治では無く外交面や省庁へ勤めている。

 ちなみに叔父の役職は内閣総理大臣に相当する宰相だ。

 法改正や重要な決議には父上と各国務大臣の会議、つまり国会で議論される。

 議員は国務大臣の直属の部下という扱いになっている。

 これらは王族以外で雇う事も出来る。


「ロナウド、そういえば今日は挨拶だって聞いてるけどなんの挨拶なんだ?」


 建物内を2人で歩きながら会話する。


「小学校に入学するのでその挨拶です」


「そうかそうか! そういえばもうそんな歳だもんな!」


 ニコニコと笑っている。

 彼は裏表の無い良い人だ。


「それで、どこの小学校なんだ?」


「テスカドル魔法大学附属小学校です」


「おお! ウェークと同じじゃないか!」


「本当ですか!? 凄い偶然ですね!」


 なんとウェークも同じとは。

 

「ウェークはどこの校舎なんですか?」


 実はテスカドル魔法大学附属小学校には校舎が5つある。

 元々テスカドルという国が広いのもあって、何個も校舎が作られたそうだ。

 校舎が出来た順番に番号が付けられている。

 だが偏差値は各校舎で差が出ている。

 『第一校舎』は大学の近くにあり「テスカドル魔法大学附属小学校」と言えば大体はここを指す。

 小学校から大学までが寄り集まっている。

 『第二校舎』は大学よりも離れた場所に位置しており、この校舎では小学校から系列の高等学校までが集まっている。

 最も教育に力を注いでおり必然的に1番偏差値が高い。

 ちなみに俺が入学する予定の特別魔法科はここだけに存在する。

 『第三校舎』は小学校のみである。

 『第四校舎』は小学校から中学校までが同じ校舎に入っている。


「ウェークは第一校舎。ロナウドも同じか?」


「いえ、僕は第二校舎です」


「あの第二校舎かい!? いやー、凄いな。何科に入ったんだ?」


「特別魔法科です」


「おいおい超難関の学科じゃないか……!! 本当にロナウドは凄いな! この国の将来も明るいもんだ!」


 叔父さんはとても笑顔だ。

 その豪快な笑顔が似合っている。

 この人はやはり良い人だな。


「さあ着いたぞ。中に入ってくれ」


 立ち止まった先には立派なドアがあった。

 俺がドアの前に立つとなんと勝手に開いた。

 自動ドア……だと!?

 この世界にも存在していたのか


「やあやあ、ロナウド。久し振りだねぇ」


 中に入るとお祖父様とお祖母様が椅子に座っている。

 ちなみに先ほど自動ドアと思ったものは中から使用人が開けていただけだった。


「お祖父様、お祖母様。お久し振りです」


「立ってないでそこにお座り?」


「はい」


 俺が椅子に座ると使用人が紅茶とケーキを出してくれた。


「ごめんなさいね、紅茶しか無いのよ」


「ははは! 母さんは昔っから紅茶が好きだからなぁ!」


 2人で微笑ましいやり取りを繰り広げている。


「して、ロナウド。今日は挨拶に来たんだったかい?」


「はい、小学校の寮に入る事になったので。明日の昼頃から出発します」


「そうかそうか、ロナウドももうそんな歳か。ウェークといいロナウドといい、2人とも成長が早いのぉ」


「本当ですねぇ。ついこの間はこんなに小さかったのに」


 どうやら歳をとると時間が早く感じるのは全世界共通のようだ。

 お祖父様とお祖母様はのんびりとしていて、とても優しい。


「どれ、入学祝いをやろう。何か欲しい物はあるか?」


 お祖父様が熱い紅茶を啜りながら言う。


「いえ、必要な物は大方もう揃えてしまったので特にはありませんね」


「そうかぁ。必要な物では無くともロナウドが欲しい物でも良いのだぞ?」


「うーん。欲しいものですか」


「まあ紅茶でも飲みながらゆっくりと考えれば良い」


 2人とも微笑みながらそう言ってくれた。

 欲しい物か。

 中々思い付かないな。

 この歳にしては物欲が薄い気がするぞ。

 まあ、この頭の中には16歳の記憶が入ってるし当然か。

 欲しいものかー。

 無いなー。

 欲しいもの……。

 無難に本でも頼もうかな。

 あ、そうだ。


「政治に関する書籍をください」


「政治に関する?」


「ええ。今のうちに知識を身につけておきたいのです」


 俺はいずれ政治を行う身だ。

 俺が持っている武器と言えば前の世界の知識、それも高校生のだ。

 勿論前の世界の良い点は取り入れるつもりだが、この世界の法則を新たに学んだ方がもっと良くできるかもしれない。


「ロナウドは勉強熱心なんだねぇ。いいでしょう、それを入学祝いにしましょう」

 

「細かいリクエストは何かあるかい?」


「外国の本も出来れば欲しいですね」


「そうかそうか。それでは数冊集めておくよ」


「ありがとうございます」


 よーし、これで政治に関する事は大丈夫だろう。

 情報はあるだけあって損は無いからな。


「そうだ、ウェークにはもう会ったかい?」


「いえ、まだですが」


「だったら後から会いに行くといい。うちの使用人に部屋を案内させるからね」


「分かりました」


 その後はいつのまにか消えていた叔父さんも交えて談笑をしていた。

 お互いの近況報告が主だったが。

 ともあれとても楽しい時間を過ごせた。


「さて、そろそろウェークに会って来ます」


「わかった。おい、案内を頼む」


 ドアの近くにいた使用人に叔父さんが声をかけた。

 

「それじゃ、僕はこれで」


「ええ。また後でね」


 皆に見送られて部屋を出た。


「ロナウド様、ウェーク様の部屋へ案内致します」


「ありがとうございます」


「本来はウェーク様が伺うなるべきなのですが今は授業中です故、ご容赦ください」


「いえ、気にしてませんよ」


 気の利く執事だ。

 ちゃんとこの家の者をサポートしている。

 俺は執事の案内に従って建物内を歩き始めた。

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