身辺整理
荷物をまとめるっていっても何から手を付けようか。実はこういうことは苦手なのだ。ふむ、まずは必要になりそうな物とそうで無い物に分けるか。よし早速取り掛かるぞ。
そうこうしているうちに、早くも1時間程が経過した。これで全ての選別が終了だな。結局必要な物は衣類や靴、その他消耗品が圧倒的に占めていた。確か向こうの寮にはベッドと机は完備されているんだったな。
よし、荷物を鞄に詰めよう。そう思い立ち俺は鞄に荷物を詰めていった。あれやこれやと鞄に詰め込み、結局トータル1時間弱で身辺整理は完了。ついでに必要無い物も分けていたから、あとで使用人に言って捨てておいてもらおう。
暇だな。外に出てみるか。
☆☆☆☆☆
庭にやって来た。視界一面に草原と木が見える。吹いている風が俺の身体を包み込む感覚が心地いい。いつもは端の日陰になっている所で読書をしている。木の葉っぱが擦れる音や風が頬を撫でる感覚、どれを取っても読書する場所には最適だと思う。
本で思い出したが、この世界は地球の中世に似ている。城の構造や食べ物、更には衣服まで。戦争には魔法を使えない者は鎧を着て剣で戦うし、東方には平たい顔の人種が生活していると聞いた。もしかしたらこの世界にも数世紀後にはインターネットが出来るかもしれないな。
「カルロス様」
少し離れた所に初老の執事が木剣を2本持って立っていた。もうそんな時間だったか。
「ああ。早速取り掛かろうか」
俺は3歳の頃から彼に剣術を教わっている。昔は我が国の騎士の1人だったらしい。当然最初は動きについて行けなかったが、最近は彼の身体に木剣を当てる事が出来るようになった。
「剣術の練習は本日で一先ず休みでよろしいですか?」
「うん。明日は挨拶をして回らないといけないからね」
「畏まりました。さ、これを」
彼は俺を木剣を渡してくる。2本ともかなり使い込まれており、所々が削れている。
「ありがとう」
☆☆☆☆☆
あれから2時間練習した。俺は既に息絶え絶えである。一方執事の方はあまり息切れしていない様子。やはり子どもの体力では到底敵うわけないか。
だが5回。たった5回だが彼の身体に木剣を当てることが出来た。今までは2、3回が限度だったが、今日は調子が良かったようだ。
「ロナウド様、最初の頃と比べるとかなり上達されておりますよ」
「まああんなにやって来たんだからね。当然と言えば当然……だと思う」
週5日、最低4時間。元々体力が無い俺は最初こそは地獄のようだった。だが段々慣れてくると技術面にも気を使う事が出来た。そして徐々にだが指導役を担ってくれている執事の動きを盗めてきていたのだ。
「カルロス様はまだまだこれからです。いずれは私を越えていくでしょう」
言われるまでも無い。 彼は俺の目標なのだ。だから、必ず彼を越えてみせる。
「今何歳だっけ?」
「62で御座います」
「そうか。俺は必ず越えてみせるよ。だから長生きしてその目で見ていて欲しい」
彼には俺が成長した姿を見ていて欲しい。
「畏まりました」
年の割にしわの少ない顔を微笑ませながら彼は答えた。
「次に訓練するのは半年以上先になるな」
「はい。寮は入っても素振りや筋肉をしっかりと動かす事を忘れてはなりませんよ」
「ああ。絶対に今よりも強くなって帰ってくるよ」
「それは楽しみで御座いますな」
汗が気持ち悪いから服を着替えるか。
「僕は服を着替えてからそのまま授業に行くよ」
「分かりました。木剣は私が片付けておきます」
「ああ。ありがとう」
俺は部屋に早足で向かった。
☆☆☆☆☆
現在クローゼットの中の服を適当に引っ張り出して着ている。服と言えば、この世界の正装は非常に着心地が悪い。だからパーティーにはあまり参加したくない。俺が日頃から着ている服はスーツをカジュアルにした様なデザインで、色合いや着心地を俺は結構気に入っている。
「よし」
完全に着替えた。王族だから、という理由で胸ポケットにハンカチを入れたり、ネクタイをしないといけなかったりしないとならない。人の上に立つ者は人よりも何倍も細かい事に気を使わないといけない。これは父上が言っていた言葉の1つだ。だから俺はそこら辺の貴族よりも厳しく礼儀作法は仕込まれている。
だが貴族連中は成り上がりも多いのが事実。そういう者たちは突如手に入れた富や名声により、自分に酔ってしまい自身の身の程を見失ってしまうケースが多々ある。逆に由緒正しい家系の貴族は誇り高いプライドを持っている。故に愚かな行為はとらないし、彼らは嫌味を一切感じさせない。
成り上がり貴族と由緒正しい貴族。どちらが嫌われているかは明白である。俺が国王になったらこの辺の問題も解消しようと考えている。
さて、この後は魔法の授業の時間だ。ちなみに魔法に関しては専属の先生に教えてもらっている。俺は部屋から出ていつもの場所へ向かった。