新しい人生
激しい頭痛と共に気がついた。辺りを見渡すと俺はベッドに眠っていたようだ。徐々に断片的な記憶が戻ってくる。
「あ」
思い出した。30秒も無いうちに全てを思い出した。前の世界での事、サタンとのやり取りの事。この世界は魔法が普通に流通している事。流通どころか魔法で優劣をつけている節もあるようだ。ちなみにこの世界の伝承では魔法は神様たちも使用するらしい。この世界は地球よりもサタンたちが居る所に近い気がする。
そして俺の名前はカルロス・ロイアン。この世界のある国の王家に生まれた。 現在は7歳。数日後に外国の学校へ留学する予定である。どうやらこの世界の学校は魔法学校が主流のようだ。奇跡的に小学校から大学まで、どれも卒業年数は変わっていない。俺が入学するのは「テスカドル魔法大学附属小学校第二校舎」である。
尚、テスカドル魔法大学は地球のハーバード大学のような世界屈指の名門大学だ。その附属校は小学校、中学校、高等学校がある。ちなみに小学校だが学科も何個かある。
魔法が使える者は第1進学科、高等魔法科、特別魔法科に入る。入試は筆記テストと魔法テストの2つで構成され、合計の点数が9割以上取れれば特別魔法科、後は成績の高い者から高等魔法科か第1進学科のどちらかを選択できる。だが当然合格点ギリギリだった者には選択権は無く、必然的に第1進学科へ入学となる。
各学科の説明をすると、『第1進学科』は魔法と学問を修めて、そのままテスカドル大学の進学を目指す学科である。定員人数は500人だ。
『高等魔法科』は進学科よりも高度な魔法と学問を修め、テスカドル大学附属中学校よりも偏差値が高い中学校への進学を目指す学科だ。定員人数は100人である。
そして、『特別魔法科』は魔法に優れた人物しか入れないが、定員人数が決まってないのと入試の点数が9割以上を超えないと入れない為、特別魔法科には生徒が居ない学年も多い。
それから、魔法が使えない者は普通科、教養科、第2進学科のいずれかに入学する。入試テストは筆記テストのみ。
『普通科』は地球の高校などの普通科と変わらない、学問を学ぶ学科だ。進路は様々でそのまま系列の中学校へ上がる者もいれば別の中学校へ進学する者もいる。
『教養科』は普通科より上に位置し、高度な学問を修める。
『第2進学科』は主に魔法が使えない者がテスカドル大学への進学を目指す為の学科である。
このように俺が通う予定の学校はこんな形で成り立っている。ちなみに俺は特別魔法科に合格した。サタン曰く、俺は神様にもなれるほどの力を持っているらしいが、ようやく目に見えて実感が出来てきた。なるほど。俺が王族っていうのがサービスか。
突如部屋のドアがノックをされた。
「カルロス様、起床のお時間です」
声の主はメイドだった。
「うん。分かった」
ドア越しに返事をする。ベッドから出て服を着替える。こんな規則正しい生活は前の俺だったら考えられないな。それにしても広い部屋だ。たった7歳の子どもにこんな素晴らしい部屋を与えるとは、流石王家だな。部屋を出て普段朝食を摂っている広間へと向かった。
「父上、母上、おはようございます」
「ああ、おはよう」
「おはよう、カルロス」
俺の両親はいつもよりも早く、もう席に座っていた。
「みんな揃ったね。それでは頂こうか」
「はい。頂きます」
「頂きます」
頂きます、は父上の考えのもと、食事の際は必ず言う言葉だ。父上は見た目はヨーロッパ系だが日本とあまり変わらない価値観を持っているような気がする。
ふむ、相変わらず美味しいご飯だ。ちなみに料理長が毒見役を担っている。王家だからという理由で命が狙われたりするのは困ったものだが、父上を支持してくれている国民やこの城に勤めている者たちには感謝で一杯だ。
「ロナウド、テスカドル王国へ行くのは2日後だが大丈夫か?」
「大丈夫ですよ父上。少なくともロイアン家の名に恥じるような行いは致しません」
「おお、これは頼もしいな。だが小学校に入学すれば色々な人たちと関わる事になるだろう。そして中には考えが合わない者も居るはずだ。その時は頭ごなしにそれを否定するのでは無く、ちゃんとお互いに認め合うのだぞ?」
父上は何かを決める時は必ず相手の意見を踏まえた上で決定を下す。そのやり方で今までやってきている。
「勿論心得ております」
「流石私たちの子どもね」
父上と母上は俺の言葉を嬉しそうに聞いている。
「ならばもう安心だな。私は今日の午後から外国で会談があるから見送りは出来ない。だから今伝えるぞ。ロナウド、学校を楽しんで来なさい」
「はい!」
父上は微笑みながらそう言ってくれた。両親に日頃から次期国王としての自覚を持つように言われている。だが近年はこの国の経済が少々低迷している。この世界には国債という物が無い為、銀行は存在するものの単純にお金を預ける機関となっている。その為国の資金源の大半は税金によって成り立っている。だが、この国の税金は国民の生活を優先している為、他国と比べると安い。俺が国王になればまず最初に前の世界の政治や経済を取り入れるつもりだ。
「ごちそうさまでした」
俺が1番最初に食べ終わった。
「僕は荷物を整理しますので先に失礼します」
「ああ」
「ええ」
俺は自分の部屋へ戻った。