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審判

「お………き…!」


 遠くからぼんやり声が聞こえる。


「おい…!!」


 その声も段々とハッキリしてくる。


「良い加減に起きろ!!!」


 急に耳元で叫ばれた感覚になり、勢い良く飛び起きた。


「あ、やっと起きたな」


 声の主を探すと、俺の目の前に女性が立っていた。まるで裁判官のような服を纏っており、顔は中々の美人だ。


「んー? あれー?」


 確か俺は死んだはずだぞ? どうしてだ? 息も出来てるし、視界も黒く無い。


「混乱しているみたいね。まあ、無理もないか」


 突然目の前の女性が話しかけてきた。


「その言いようじゃ、何か知ってるのか?」

「ええ」

「どうしてだ?家には俺以外に居なかったはずだが」

「だって私は神様だもん」


 こいつ、なにを突拍子も無い事を言ってるんだ?


「いやいや、頭がめでたいのは分かったからさ。そんな事より早く家に帰してくれないか?」

「貴方、信じてないわね?」

「当たり前だろ。んな嘘丸出しの言葉、誰が聞くんだよ」

「ふむ、良いだろう。ならば信じさせてあげるわ」


 女性がウインクをして悪戯的な笑みを浮かべている。なんだ、コイツは。危険な感じがするぞ。例えるなら小悪魔的な。


「なにをするつもりだ?」


 彼女は何も言わずに目を瞑った。


「なるほど、昨日は小説を書いてその後は久々の買い出しに行ったようね。買ったのはインスタント類と水とコーラ、か。銀行で引き出したお金を全部使う程買い込むとは。まったく、どれだけ外に出たく無いのよ」


 俺は唖然とした。俺の行動が全て当てられたからだ。畜生、ここまで言われたら信じるしか無いじゃないか。


「ほう、どうやら信じるようね」

「もしかして俺の考えてる事とか読めたりする?」

「モチのロンよ。なんてったって私は神様だぞ?」


 なんでこんなアホそうな奴が神様なんだよ。キリスト教徒が知れば泣くぞ。


「あー、キリスト教ねー。あっこの神も居るわよ?」


 目の前の女は、さも当然と言った顔でそう言った。


「え? 神様って他にも居るのか?」

「人間はね、死ねば自動的に信仰している神の元へ行って審判を受けるのよ」


 得意げな顔で説明してくる。クッソ、なんか腹立つ顔だな。


「じゃあアンタは何教の神様なんだ?俺は無宗教のはずだが」


 俺はふと疑問に思った事を彼女にぶつけてみる。が、その答えは俺の予想を遥かに上回るものだった。


「私は名前はサタン。かつてはルシファーとも名乗っていたわね」

「サタン……? 悪魔じゃねーか!!」

「あら、失礼ね。神に昇格したのよ」

「どうして昇格出来たんだよ……。お前キリスト教の神様に謀反起こしたんだろ?」

「一体何百年前の話をしてるのよ。確かに叛旗を翻して長く決別してたげど、かなり前に仲直りしたのよ。下界には伝わってないの?」

「聖書には悪魔だって事しか書かれてなかった気がするが……」

「情報遅いわね。新約聖書も出てたんじゃないの?」

「そんな事俺に言われても知らねーよ」


 俺は無宗教で且つキリスト教に興味が無い。よって聖書に関しての知識も皆無に等しい。知っているのはアダムとイブが林檎を勝手に食べて、この世界に追放された事とか。あ、聖書では無いが、高校の授業で実はキリスト教とイスラム教はユダヤ教から派生したってのは習ったな。


「ま、そういう事で私は宗教の神とは別で存在しているのよ」

「なんだかややこしいな」

「まあ良いわ。それよりね、光が存在するのなら必ず闇が存在する。この2つの関係は切っても切れないものなの。神様に導かれる者が居るのならそうで無い人間も居るわ。私はそうした人間たちを裁いているの」

「神に導かれない人間ってのは?」

「主に下界で大罪を犯した者ね」

「ちょっと待て。俺は大罪どころか犯罪なんて犯した事ないぞ」

「貴方は例外よ」

「脅かすなよ……」

「貴方は生まれる世界を間違えてしまったのよ」

「なんだって?」

「だから、貴方は生まれる世界を間違えてしまったのよ」


 彼女はその言葉と共に、少し申し訳なさそうな顔をしている。


「はあ? 何を言ってるか分からないんだが……」

「貴方は本来別の世界に生まれるはずだった。だけどこちらの手違いで地球に生まれてしまったのよ。つまり、私たちのミスね」

「すまん、ちょっと本気で何言ってるか分からない」

「貴方は本来違う世界に生まれる予定でした。でも私の部下がミスって貴方の魂を地球に送っちゃったのよ」

「ふーん。だから死んだ俺はここに来たと」

「ええ。ちなみに、死んだのにも理由があるわ」

「え? あるの?」

「貴方はそんじょそこらの人間とは大いに違う者だったの。簡単に言うと、地球の人間の身体の容量を圧倒的にオーバーした力を持っているのよ。それも私を凌ぐ程にね」


 いつの間にやらサタンは真剣な表情をしている。


「力? 具体的には?」

「体力、知力、魔力、筋力、敏捷力等々、要はゲームに出てくるステータスって感じね」

「その俺が生まれる予定だった世界の住人たちはそんなに強いのか……」

「いえ、こんなに力が強いのは貴方だけよ。全ての力が私を上回っているもの。今までは地球の環境のせいで力が引き出せなかったけど、適切な訓練さえ積めば貴方も神になれると思うわよ?」


 俺も神様になれる、か。別に興味は無いな。魂を裁くのって大変そうだし。

 

「そうなのか。それで、その力が俺が死んだ事となんの関係があるんだ?」

「貴方が死んだ日、貴方の身体は力を抑え込むのに限界を迎えていたの。心当たり無い?」

「妙に日差しが痛かった気がするな」

「それが前兆ね。貴方の力は身体の制御を振り切り、とうとう暴走を始めたの。それが貴方が死んだ原因」

「そうなのか……」

「そこで提案があるの。貴方、転生しない?」


 サタンは人差し指をピンと立てて俺にそう提案してきた。


「転生? アニメやラノベの?」

「ええ。全ての原因は私にあるわ。だから、貴方には特別に転生をする権利が与えられます」

「また赤ちゃんからやり直すのか。めんどくせーな」

「だったらある程度育ってからここの記憶と地球の記憶を思い出すってのはどう?」

「おお! そんな事が出来るのか!」

「当然よ。私は神様だからね」

「じゃあ、それでお願いするよ」

「分かったわ。それじゃあ早速魂を送るわね」

「はいよー」


 彼女が俺に手をかざしたかと思うと、黒い光が俺を包み始めた。


「あ、それと色々サービスしといてあげるわね」

「サービス?」

「ええ。楽しみにしておいてね」

「ああ。わかった」


 光はより強くなり彼女の姿はもう見えない。


「それじゃあ、またいつか会いましょう」


 その声が聞こえた瞬間俺の意識はフェードアウトした。

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