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船の眺め

作者: 座椅子

わたしは宇宙飛行士だ。

母星から宇宙に飛び、星と星の間を飛び回り、母星へ帰ってくる。

とても具体的に説明すると、黄色い星や青い星、星型の星、四角形の星などを見つけて、その色と形を記録して母星に帰り、みんなに教える仕事をしている。

つまり宇宙飛行士だ。

母星では、王様がみんなにわたしの言う話をよくきちんと聞いて記録するように命令してくれるのでみんなよくきちんと話を聞いてくれる。


母星へ帰り、宇宙船から降りると15歩あるいたところのステージに上がる、わたしの姿が見えたらきっかり30秒間拍手をする、そしてわたしは見つけた星を発表する、例えば「全体が青っぽくて丸い星を発見した!」と言う具合にだ。

みんなは話を聞いて、ときおり「わぁ!」「えー!」などと声をあげて驚く、そして手に持った紙に記録してゆく。

この発表会は3日夜通しで行われ、発表が終わるとわたしは再び宇宙船に乗り星を探しに行くのだ。

わたしはこの仕事が楽しくて仕方がない。

なぜならみんなが楽しそうに聞いてくれるからだ。


今は、この仕事を始めて120年と1335日め、85回目の宇宙飛行中である。

今日も、いつもと同じように、朝だいたい8時くらいにジリジリとうるさい目覚まし時計で目を覚まし、ベッドから勢いよく飛び起きると、すぐに黄色いふかふかのパジャマから鉄の色の宇宙服に着替えて、運転席に座り、そこから日がな一日双眼鏡で外の世界を眺めては星を見つけて記録していた。

そして星を見つけるのに飽きたら、タバコを吸っては、煙の形が何に見えるかという連想ゲームのようなことをして時間を潰すのである。


今日がいつもと違ったのは、タバコを灰皿にやるときに間違えて3つめのボタンを押してしまったことである。

運転席には3つのボタンがあり、

ひとつめはピンク色の出発するときのボタン、

ふたつめは緑色の母星に帰るボタン、

そして、みっつめは、キケン!押すな!と大きく書かれている、鉄のカバーで覆われていて、そのカバーを外して上から強く叩かないと押せないボタン。

それをタバコを灰皿にやるときに間違えて押してしまったのである。

運転席の白い室内灯が赤い光に変わり、ビーッビーッという警告音が宇宙船全体に響き渡った。

わたしは120年と1335日め、85回目の宇宙飛行にして、とんでもないことをしてしまったのではないか、と思ったが、タバコを再び口に咥え、シガーソケットで火をつけ8本の足をパネルの上に乗せた。

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