遺言
「やはり最悪の未来への序章が始まってしまいましたか」
「どういうことだ、サヴァ?」
サヴァの言葉に俺が問いかける。
「私がいた未来ではK率いる《ラグナロク》が学生警察やその他の組織を全滅させ、能力者の善悪の均衡が崩れた。そして、Kはそんな世界で人々を虐げている。Kの娯楽の為に多くの人々が傷つけ合い、命を落とした」
「どうにかならないのか?」
「ここは私が」
サヴァはそう言って前に進み出た。
「君か。僕を止める為に未来から来たんだって?」
Kの言葉にサヴァは怪訝な顔をする。
「何故それを?」
「君の記憶を読ませてもらったよ。もっとも君がこちらに来てからの記憶しか覗けなかったけどね。それより前の記憶にはアクセスできなかった。どうやら自分でも知らなかったけど、僕の能力は今までに発生した事象に関する記憶を操作する力で、未来に発生する事象に関する記憶は対象外みたいだ」
「成程。では、私の作戦はまだ生きているということですね」
「何!?」
「Kは人体に不具合を起こし、死亡する」
サヴァは、自分で書き上げた文章を音読しながら、Kに見せつける。
見せられたKは失笑して問いかける。
「これは?」
「私の異能力、《未来作家》は、記述した未来を現実に起こすことが出来る。主語と述語を明確に記述する必要があるが、主語は私の中で一意定まる名称であれば偽名でも構わないし、述語に記述された事象に至るまでの経緯は曖昧にすることでその範囲を拡張できる。これによって発生することがあり得ない事象は起こせない弱点も軽減できる」
よく分からないけど、要は手広く網を広げておけば引っ掛かるってことだろう。多分。
しかし、Kには全く変化が起こらなかった。
「何!? この表現なら※※※※※※したり、※※※※※※してもおかしくないはずだ!」
少しグロテスクだったので、聞かなかったことにした。
「なるほど。人体ね......あいにくもう人間はやめていてね」
「どういう意味だ?」
「僕のこの新しい力、《操蟲術》は異世界から持ち込まれた力らしくてね。その世界は僕のような魔術師は人間によく似た別の生き物とされているんだ。元々この世界に無かったものだから、この世界に持ち込まれた時にその性質を継承したみたいだね」
「人間ではない......ならば、書き直すまで!」
「遅い。《地獄蟷螂》」
「ぐはぁ......」
サヴァは急いで筆を走らせるも間に合わず、Kが召喚したカマキリの腕に刺されてしまった。
「我が主の御父上。これを」
サヴァは最後の力を振り絞り、一冊の本を俺に向かって投げた。
俺は本を懐に入れ、サヴァの最期の言葉を聞いた。
「私の意思を継いで欲しい。雷鳴徹」




