真の王
「やったか? うっ......」
頭に激痛が走る。
少しすると収まったが、全身の力が抜けて、再び力を入れようにも入らなくなった。
「何があったのですか? 我が主の御父上!」
サヴァや足止めに協力してくれていたS隊の城ケ崎さんに夢想先輩のお姉さん、剣崎さんが駆け付けてきていた。近くには、門田さんの《バリミツケール》らしき小型の機械が浮遊している。
向こう側にも《ラグナロク》のメンバーが集結していた。
「サヴァ、どうしてここに?」
「とても大きな光がこの辺りから発せられたようだったので、様子をうかがいに参りました。聞くところによると、他の者たちも敵味方関係なく光が気になってやってきたようです」
「そうか。俺にもよく分からないけど、Kを倒したんだ」
「えっ?」
サヴァがKの方に目をやると、Kが瀕死ながらもなんとか立ち上がり、ふらつきながらこちらに話しかけてきた。
「この程度で勝ったと思うなァ! まだ僕は立てるぞォ!」
さっきまでのどこか余裕な態度は消え、声を荒げている。
しかし、サヴァはKを見て難しい顔をしていた。
「我が主の御父上。お言葉ですが、こいつはKではない」
は?
驚きのあまり声も出なかった。それじゃあ俺が必死になって倒したKを名乗るこの男は一体誰なんだ?
「何を言っている? 僕がKだ! いきなり出てきて訳の分からないことをほざくなァ!」
どうやら本人ですら信じられないらしい。
「本当だよ」
向こうから黒いフードを被った男がやってきた。漆黒のローブに身を包み、禍々しい杖を持っている。
「誰だ! キサマァ!」
男はフードを脱ぎ、こう答えた。
「僕が秘密結社《ラグナロク》のリーダー、Kだ」
「何を言っている? 僕がKだ! そうだろう? あなたたち!」
Kを名乗っていた男は、指宿や壁山に目を向ける。
しかし......
「お飾りの偽物はもう用済みみたいですよ?」
指宿の言葉にKを名乗っていた男は混乱している。
「あなたたち! 何か知っているんです?」
「知ってるかって言われても、君が偽物だってことくらいかな。僕は君にスカウトされてないし」
壁山の言葉がKを名乗っていた男を更なる混乱に陥れる。
「か、仮に! 僕がKじゃないとして! じゃあ、僕は一体誰なんだ!!!」
「知らない。自分のことをKだと思い込んでいる一般男性とか?」
武田の言葉にKは膝から崩れ落ちた。
俺達からしたらあり得ないような話だが、この男自身も催眠術師みたいだからそういう細工も可能だし、本人も半ば信じざるを得ないのだろう。
「証拠だ。証拠を見せろ! 言葉だけじゃなく俺がKじゃないという証拠を!」
「証拠ねぇ。ダーリン、あれを返してあげたら?」
高梨がKに耳打ちする。Kは納得した様子だった。
「冥土の土産だ。これを」
Kが右手をかざすと、男は少しの間頭が痛そうにしていたが、すぐに驚くような表情に変わった。
「これは!? 僕の異能力に関する記憶!? これは一体!?」
「少し厄介な異能だったからね。異能に関する記憶を消しておいたんだ。あ、でも使い方に関する記憶はあと三分たたないと戻らないよ。とどめを刺す前に使われたら厄介だからね」
「なるほど......記憶を操作出来るってことか......」
「自分が偽物だって分かったかい? 最後にもう一つだけ。君の本当の名前は......」
「そんなものはどうだっていいんです。自分が覚えてもない過去の名などもう捨てた」
「何?」
「Kの名前とその地位を奪う!」
男はKに向かって走り出した。
あんなに傷だらけで何故動けるのか不思議だ。
「やれやれ。《地獄大兜》」
Kの杖が紫に発光すると、地面から黒く巨大なカブトムシが現れ、男を勢いよく突き飛ばした。
「く......そ......」
男は崖の下に落ちた。
満身創痍の彼が崖の下に落ちた後の姿は想像したくもなかった。




