《死霊使い》指宿魂子
「私のお相手はあなた一人ですか?」
指宿は少し物足りなそうな表情を浮かべる。
「私は201小隊隊長、夢想魔子。こっちの戦力の中じゃ一番強いつもりだよ」
「それは素晴らしいですね。ですが、私の力は彼氏曰く、《ぼくがかんがえたじくうさいきょうのどりーむちーむ》? だそうなので、何人かこちらに連れてきた方がいいかもしれませんよ?」
《僕が考えた時空最強のドリームチーム》?
随分とたいそうな表現だけど、ネタはある程度割れてる。私も舐められたものね。
あと、こんなコスプレ女に彼氏いるのかよ。
「一人で大丈夫だよ。それが私の仕事だから」
「そうですか。それでは......」
銃声が鳴り響き、銃弾が私の脳天をすり抜けた。
「なっ!?」
私は驚きを隠しきれなかった。
巫女の格好の中に混じっていた異物である銃に手を伸ばして発砲するまでの動きがあまりに洗練されていて、それ故の凄まじいスピード。それでいて寸分の狂いもなく私の急所を撃ち抜いた。
「すごいです。この《ボブの早撃ち》で倒れなかった人は殆どいませんよ?」
なんか私の株が上がってるみたいだけど正直キツイな。
さっきは見えてた銃を警戒してたから《幻想化》で何とか間に合ったけど、あれがいつ飛んでくるか分からないとなると、相当ストレスになる。
そもそも、《幻想化》による《幻想状態》は物理攻撃による外傷こそゼロに出来るけど、痛覚は七割減が私の限界。全く効いてない訳じゃないし、連続して使いすぎると元に戻れなくなる。
とにかく、中距離から遠距離は不利。なら、距離を詰めて、銃を撃つ暇を与えない!
私は異能で顕現した翼を用い、一気に距離を詰める。
充分に近づき、鎌を振り上げた瞬間、新たな脅威が私を襲う。
「《暴風区域》」
「っ!? 風?」
私は突然発生した竜巻に吹き飛ばされ、元居た場所に押し戻された。
この技がある限り容易には近づけない。
「はぁぁ!」
私は異能で闇エネルギーを集めて指宿に向かって飛ばした。
「《大地の壁》」
私の唯一の遠距離攻撃も隆起した地面よって防がれてしまった。
「くっ。どの距離でも隙が無い」
「当然です。私の《降霊術》は死んだ人の霊をこの体に降ろすことで、その人の異能力や技能を行使できます。通常は降霊には時間がかかりますし、体に霊を降ろしている間は霊の人格が出てくるのですが、私は指宿家の歴史でも類を見ない天才だそうなので、一瞬で降霊できて、霊に体を乗っ取られることもありません。つまり、相手がどんな手を打ってきても対応できる能力を持った霊を降ろして対応可能なんです」
随分厄介な異能力だなぁ。でも、仮に封じることが出来たとしたら?
指宿自身には何が出来る? 霊の能力が厄介なだけで指宿自体には何の能力もないはず。
仮に霊を降ろさずにそれなりに戦えるとしても、その土俵ならこっちに分がある。
私は、手錠を取り出し、再び翼で距離を詰めた。
「同じことをしてどうするつもりですか? 《暴風区域》」
指宿の周りを暴風の障壁が囲む。
しかし、今回は私もその中に侵入できた。
《幻想種》の異能の中でも、翼を持つ想像上の存在の力を使用できる異能は、体を《幻想状態》にすることで、物理法則を超えた高い飛行能力を得ることが出来る。
最初は普通に飛行して、同じ手だと思って同じ技を使ってきたところで、飛行速度を上げて相手の懐に潜りこんだのだ。
「もらった!」
比較的風力の弱い竜巻の中心部に侵入した私は隙をついて、指宿の右手に手錠をはめた。
その瞬間、竜巻はどんどん衰え、消滅した。
出来れば左手にもかけたかったが、体の異変を察した指宿に蹴飛ばされ、その隙に距離を取られてしまった。
「危ない危ない。危うく捕まるところでした。......異能力が使えないみたいですけど、これがうわさに聞く異能力を封じる手錠とやらですか?」
「これであんたの異能は封じた。その手錠は鍵が無いと外せないよ」
すると、指宿は不思議そうな顔で質問していた。
「? 私の異能、まだお見せしてませんよね?」
「はぁ? 竜巻起こしたり、地面を隆起させたりしてたじゃん」
「それは霊の異能であって私の異能ではありませんし......」
「だ・か・ら! 霊を降ろすのがあんたの異能なんでしょ?」
「ああ。《降霊術》のことですか? これは異能ではありませんよ?」
「は?」
「《降霊術》は指宿家に代々伝わる一種の技術のようなものなので、異能ではないんですよ。その証拠にほら」
一発の銃声とともに私の胸部から血液が溢れ出す。
「そんな......これは《ボブの早撃ち》!?」
「そうですよ。この手錠に異能を封じられているので、霊の異能こそ使えませんが、《降霊術》自体は使えるので例の技能は使用可能なんですよ。それにしても......心臓を貫いたつもりでしたが、この手錠、結構重いんですね。手元が狂って少し狙いを外したようです。こんなもの......えいっ!」
指宿はとてつもない怪力で手錠を無理やり外してしまった。
「反則だろ......」
私は本音を漏らすと同時に意識を失った。




