高みの見物
「もうすぐ指宿の居場所だ」
ここは町はずれの少し山奥。周りには木々が生い茂っていて、すぐ隣にこの辺りで一番有名な川によって形成されたV字谷が見える。更に少し先には人が落ちるとほぼ確実に死ぬくらいの高さがある断崖となっている。何か登るための手段が必要だ。
俺達、学生警察二年生は助っ人や一年生の足止めの甲斐あって、今回の確保すべき人物である指宿魂子がいる場所を目前にしていた。
少し先に進むと崖の前に人影が見えてきた。
「まだ敵がいるってのか」
隼人が少し苛立った声を上げる。
しかし、その人影の主は見知った顔の男だった。
「皆さん!」
「洋平か! 無事だったのか?」
そこにいたのは202小隊副隊長の万屋洋平。今回の事件の途中で行方不明になっていた男だ。
「無事だったのか?」
「ええ。親切な方に介抱していただいて、全快したので帰ろうと思っていたんですが、怪しい連中を見つけまして追っていたんです」
「怪しい連中?」
「はい。コスプレをした男女二人組がゴーレムについて話していたので、後をつけていたのですが、ここで見失ってしまいました。ですが、そのすぐ後に崖の上から同じような声がしたので、どこかに崖を上がるための道が無いかと探していました」
「崖の上か......」
全員が崖の上を見上げる。
「うっ」
すぐ後ろでうめき声がした。
振り返ると、遊夜の胸部から刃物と血液が飛び出していた。
遊夜は倒れこみ、遊夜の体に隠されていた犯人が姿を現した。
「万屋ァ! テメェ何やってんだ!!」
隼人は怒りで声を荒げている。
遊夜は淡い光に包まれ、その光と共に消滅した。
「洋平。何故こんなことをした?」
俺の言葉を聞いた洋平は虚ろな目でこう呟いた。
「全てはK様のご意思だ」
「はっはっは。中々傑作ですね。こんなに笑ったのは久しぶりですよ」
「誰だ?」
俺は声がした崖の上の方を向く。
そこには軍の司令官を彷彿とさせる出で立ちの男がいた。
「僕の名前はKです。この世界の王になる男です」
「Kだと? 洋平に何をした?」
「ただの催眠術ですよ。今の万屋は僕という王にかしずく一人の奴隷という訳です」
「それで遊夜を殺せとでも命令したのか?」
「いや、僕がした命令は学生警察の二年生を皆殺しにしろということだけです。ただ、最初に殺すなら御劔だという助言は添えましたが」
「何故だ?」
「暗示をかけて一番にあなた方の情報を洗いざらい吐いてもらいました。万屋の話によると御劔は未来を計算できるそうですね。放っておくには少し厄介な能力です。ですが、彼の能力には想定外の変数があると未来を正しく計算できないという弱点がある。ならば、万屋が僕の奴隷であるという想定外の変数があるうちに始末しておくのが合理的です」
「こちらの情報も握られているのか......」
「話すのにも飽きてきましたし、次のショーを始めましょうか。万屋、やれ」
その言葉を聞いた洋平はこちらに襲い掛かってきた。
「K様の仰せのままに」




