疾風の剣士
「《疾風》」
風間の目が深緑色に染まった。
風間は《第二段階》に到達していたのか。
いくら岸田がこの状況下において真の力を発揮していたとしても、所詮は《第一段階》の能力者。異能力の出力の差が大きい。
取り敢えず様子を見るが、いざとなったらあーしの力を使わなければならないか......
「さっきまでとは雰囲気がまるで別人だな。来い、風間君!」
「言われなくてもそのつもりだよ」
光を纏った剣と風を纏った剣が何度も繰り返しぶつかりあう。
機動力では岸田が劣っているが、風間の攻撃自体は全て防御できている。長所が異なるのみで、何とか互角に戦えている。しかし......
「悔しいけど真剣勝負じゃ攻めきれないみたいだね。あまりに拮抗した戦いはつまらないよね。《旋風刃》」
「《虚像 複製》」
風間君は剣戟の合間を縫って不可視の刃をあーしらに飛ばしてくる。
岸田君はそれに対応するかのようにあーしらの周囲に無数の分身を出現させる。
「無駄だよ。君の分身は実体があるわけじゃない。障害物にはならないよ」
「それはどうかな?」
「何!?」
風間の《旋風刃》によっていくつかの分身が消滅した。
なるほど。そういうことね。
「よっ」
「《剣の檻》」
あーしは上手く避けれたけど、切島はビビッて全方位防御したな。
「風間君の《旋風刃》の最大のメリットは殆ど相手に見えないこと。デメリットは発射地点からまっすぐにしか飛ばないことだ。二つの点が分かれば直線は確定する。私の分身が二つ以上消えた時点で、《旋風刃》はどこを飛んでいるのか丸わかりだ!」
そうだな。ついでに、一つ目の分身が消滅してから二つ目の分身が消滅するまでの時間に気を配れれば、《旋風刃》の移動速度も分かって完璧に対処できる。
切島はもちろん、結衣にも出来ないからうっかりやってバレるかと思ったけど、大丈夫そうだな。
「やるね。でも、分身にも数に限りがある。一体、いつまでもつかな?」
「減った分だけ足せばいいだけのこと」
「あ~、違う違う。今出ている数じゃなくて君がこれ以上分身を作れなくなるまでに作れる分身の数のことさ」
「それまでに君を倒す! うぉぉ!」
岸田は威勢よく再び岸田に斬りかかる。
しかし、風間の目の前まで行ったところで突風に見舞われて押し戻されてしまう。
「異能の出力は僕の方が上だ。君が一度に出せる分身程度、僕が一度に消せない訳ないだろう?」
「何!?」
風間は剣を天に掲げ、周囲の空気を剣先に集中させた。集まった空気は高速で渦を巻き、徐々にその大きさを増していった。
「《風神嵐舞》!!」
風間が剣をあーしらに向けて振り下ろすと、小規模な嵐があーしらを襲った。
その圧倒的な風力は、岸田の分身を全てかき消し、あーしら全員を宙に舞わせた。
あーしらは、仲間の体や一緒に巻き上げられた石に体をぶつけられ、嵐の中に潜む風の刃に全身傷つけられた挙句、嵐が収まると宙にあった体は地面に叩きつけられた。
全員、すぐには立つのもままならない。
「ふう。この技はかなり疲れるからあまり使いたくはなかったけど、これで君達全員ゲームオーバーだ」
「くそぉ」
風間は悔しがる岸田の前まで歩いていき、地面に這いつくばる岸田を見下ろして笑みを浮かべた。
「岸田君には何だかんだ手こずらされたね。そのお礼に岸田君が守りたかった仲間たちが僕に倒されていくのをそこから見させてあげるね」
風間はそう言って、こっちに近づいてきた。
どうする? あーしの力があれば無理やりにでも体は動かせるが......
「これで終わりだ、糸川さん」
あーしが制服の中に仕込んだ小瓶を取り出そうとした時、人影があーしと風間の間に割って入ってきた。
「岸田君!?」
「しぶといな。まだ動けたのか」
風間は自分の攻撃を受け止めた岸田君の剣を弾き飛ばした。
「《疾風斬り》」
一瞬だった。
あーしと岸田が弾き飛ばされた剣に気を取られている間に、その斬撃は音も無く一人の学生警察を殉職させた。
「切島君!!」
あーしは思わず叫び、もう声を出す気力も残っていない岸田君は無言で膝から崩れ落ちた。
風間は顔色一つ変えず、こちらに向き直った。
「さあ、今度こそ君達の番だ」




