とある指名手配犯の一日
僕の名前は天賦ヶ丘秀一。しがない指名手配犯だ。
指名手配犯の朝は早い。毎朝六時に起きて、家の周りを散歩している。いつもは何人かとすれ違うけど、最近は代わりにゴーレムがうろついている。人だと普通に挨拶してくれたり、僕のことを指名手配犯だと知っている人は目を合わさないように通り過ぎていくから無害なんだけど、ゴーレムは随分と道を塞ぐもんだからまいっちゃうよ。
散歩が一通り終わったら、朝食を作る。今は高校生三人と一緒に住んでるから四人分。メニューは、だし巻き卵、鮭の塩焼き、白米だ。
最初は、毒を疑っていた彼らも今じゃ全部残さず食べてくれる。まぁ、食べないと身が持たないけどね。
その後、高校生三人を再び牢の中に閉じ込める。最近では、あきらめがついたのか抵抗することなく、むしろ自分から入ってくれる。
ここからが最近で一番の娯楽、高校生たちが暇で始めた訓練を見ることだ。雷に炎に氷、剣に拳にレイピア。これらが飛び交う戦いはとても色鮮やかで見ていて飽きない。
訓練が終わると、昼食を振舞ったあとに僕も交えてもう一度訓練を行う。
しかし、この訓練も今日で最後。昨日、どうやら僕に軟禁を命じた人の目的が達成されたみたいだからね。
「いつも言ってる通り、僕を殺してこの鍵を奪ったら出してあげるよ。ただし、奪った鍵は誰かが肌身離さず持っていること」
「そんなの聞き飽きたぜ。大体、殺す必要はねえ。俺様たちは学生警察、天賦ヶ丘さんは指名手配犯だ。逮捕で充分だろ」
「緋ノ宮さん。何も分かってないね。今までは殺さないように手加減してたけど今日は本気で殺す。君達がここにいる必要が無くなったからね。君達だってここから出る為に訓練を続けてきたんでしょ?」
「それは......」
「さぁ。僕を殺して君達が才能ある一流の人間であると証明してくれ!!!」
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一時間後。僕の家は少し前までの静けさを取り戻した。
「よいしょ」
僕は立ち上がって、散らかったり汚れたりしている我が家の掃除を始める。
血の汚れは今まで経験したことが無かったから少し手間取ったが一時間もかからず、我が家は元通りになった。
「久しぶりに楽しい戦いが出来たけど、また一人に逆戻り。少し寂しいな」
僕は、地下室に向かった。地下室には僕が独自に集めたありとあらゆる情報が書物として保管されている。もちろん、誰にもその存在は明かしていない。
「次は誰にしようかな」
僕は書物のうちの一冊を手に取り、次のターゲットを探し始めた。




