S隊
「それで、《ラグナロク》との真っ向勝負に勝ち目がないから協力して欲しいってこと? 魔子ったら随分素直で可愛い子になったのね?」
「自分の力量では助っ人して不足? 馬鹿だとは思っていたがよもやここまでとはな。恥を知れ、剣崎」
「やっぱ、このババアぶっ殺す!!!」
「死ね!! このクソメガネ!!!」
駄目だこりゃ。
魔子も戒も天子さんや城ケ崎さんの言葉にすぐカッとなってしまう。これじゃあ、話にならない。
俺達がS隊のアジトを訪れた時には天子さんと城ケ崎さんしかいなかったので、話を始めたが、この調子ならSさんを待つべきだったな。
「天子さん、Sさんは今どちらに?」
天子さんは、怒涛の勢いで迫りくる悪魔の翼を天使の翼で軽々といなしながら答える。
「S? 四時間ほど前にトイレに行ったきり戻ってきませんね。城ケ崎、電話してみて」
「その位自分で......」
「あ!?」
「......分かりましたよ。」
城ケ崎さんは、一瞬、反抗しようとしたようだが何故かすぐに天子さんの言うことを聞いた。
「もしもし、リーダー? 今すぐ、スイッチ押してください」
すると突然、黒い多角形の平面が出現し、その中からSさんと思しき人物が飛び出してきた。
S隊には、隊員もしくはその持ち物を転送することに特化した隊員がいて、他の隊員はその隊員に現在地を伝えるためのスイッチを常備してして、いつでもこの部屋に帰って来れる仕組みらしい。
「初めまして。学生警察、現202小隊隊長の竹中真です」
「《エンデ・デア・ヴェルト》、S隊隊長のSだ」
俺は、今回訪ねた理由をSさんに話した。
「かくかくしかじか、という訳なんです」
「成程。かくかくしかじか、ということか。俺達が協力すること自体は構わない」
「と言うと?」
「俺達が《ラグナロク》の連中に手を出すこと自体は、異能力者狩り集団として問題は無い。問題は、学生警察の面子だ。例えば、俺達が今回の件の主要人物である指宿を倒したなんて世に知れたら、学生警察の信用は間違いなく地に落ちる。いざという時に役に立たない無能の烙印を押されるだろう」
「それは......」
「俺達に出来るのは、雑魚の殲滅と他の幹部の足止めだけだ。指宿はお前たちが自分で倒せ」
「ありがとうございます」
俺は、深々と頭を下げた。
「と、いう訳だ。お前たち、まずは雑魚狩りだ」
「Kを探さなくて良いのですか?」
城ケ崎さんの問いにSさんが答える。
「問題ない。そもそも《ラグナロク》はKの組織だ。ピンチになれば顔を出すだろう。門田」
「何ですか?」
部屋の奥の扉から目の下のクマが異様に濃い男が出てきた。
「オペレーション《ジェノサイド》だ。ゴーレムの位置は特定できるな?」
「は? あれ、めんどくさいんですけど」
「褒美に今月の課金額の上限を引き上げてやる」
はじめは心底嫌そうな顔をしていた門田さんが、その話を聞いた途端、真面目な顔になった。
「これ、カード買いに行くの俺なんですよね......」
呆れる城ケ崎さんを他所に話は進む。
「町中に飛ばしてる索敵ノード《バリミツケール》で、全てのゴーレムの位置情報を検索......完了。各メンバーの転送順路、タイムスケジュールを作成......完了。じゃ、リーダーの合図で転送開始するんで、転送されたら次の転送時間までに指定したゴーレムを討伐して転送した位置に戻ってきてください」
「オペレーション《ジェノサイド》、開始」
Sさんの合図と共に、門田さんがSさん、天子さん、城ケ崎さんを転送。五分も経たずに町中のゴーレムを討伐して帰ってきた。
「凄すぎる......」
俺が驚嘆していると、Sさんがメンバーに指示を出していた。
「俺は、Kが出てこないか探しに行く。夢想と城ケ崎はこいつらに同行しろ。門田は、ここに残って、こいつらをサポートしろ」
指示を終えると、Sさんはその場で仁王立ちしていた。その後、城ケ崎さんにアジトの出口まで連れていかれた。




