セカンドフェーズ
ああ、痛い。
ボクは、学生警察の斉木力に上空から叩き落された。間もなく地面に到達する。そうすれば、この痛みとは比にならない痛覚がボクを襲い、あるいはその暇もなく......
「ふふっ。なんておかしいか。この位、アイツが何とかしてくれる」
代われ。
「分かってるよ。いつも通りよろしく」
ボクは、もう一人の自分と意識を交代する。
「まぁ、何とかなるだろ。俺なら」
「これで僕の勝ちだ」
斉木はそういうが、こっちからしたら何を早とちりしてんだって話だ。ムカつくからぶん殴っとこ。
「中々の一撃だったぞ。正直、死ぬかと思った」
俺は幽が思ってそうなことを伝える。
だが、斉木は渾身の一撃で俺を倒せなかったことに対する絶望と俺の変化に対する動揺で話が耳に入らない様子だ。
「君のその瞳は一体......?」
「知らないのか? 異能力の《第二段階》」
「《第二段階》?」
「まぁ、学生警察なんて二年になるまで生き残る奴しかロクなのがいないし、わざわざ教える必要もないのか」
「なんだよ。《第二段階》とやらが僕に知れると負けるのか?」
「挑発のつもりか? いいぜ。乗ってやろう。実演付きで授業してやるよ」
俺は、服に付いた土を払い、斉木を指差す。
「まず、お前みたいなただ異能力の力を借りてるだけの状態は《第一段階》」
俺は、親指で指して続ける。
「次に、異能力そのものである俺が自ら力を使う状態が《第二段階》」
俺は、幽の生霊を全て体の近くに引き寄せる。
「最後に、《第一段階》と《第二段階》の違いはいくつかあるが、一番の違いは異能力の力を最大限に引き出し、強化形態に移行できることだ」
「強化形態だと!?」
「《憑着》」
「憑着? この感じ、あの時と同じ......」
「そうだ。幽の生霊を42体、この体に憑依させた。霊感が僅かでもあれば、分かるくらい強力な霊力だ。俺の周りに薄っすら白い靄が見えるんじゃないか?」
「確かに。あの時は一瞬で分からなかった」
「これは俺に限った話だが、この姿は、霊のように飛び回る飛行能力以外は使えない。その代わり、飛行能力は霊一体の21倍、身体能力は元の43倍だ!!」
授業を終えた俺は、瞬時に斉木の目の前に移動し、蹴り上げた。幽がやられた時よりも高く。
「がはぁ......この脚力、人間じゃない......」
「俺の存在は異能力そのものだから、確かに人間ではないな。もっと高くまで行くぞ。やられっぱなしは性に合わないんでな!」
俺は斉木を上空に蹴り飛ばしては、自分も上昇しを繰り返して大気圏ギリギリまで到達した。
「僕はここで死ぬのか。僕には人一人守る程度の力もなかった。悔しいな」
斉木は涙ながらに呟いた。
「学生警察としてのお前は死ぬが、この世界には能力を失って生き返るってルールがある。人間としてのお前は死なねえよ。そんなに人が守りたきゃ、将来出来るかもしれない家族でも守ってな」
「そっか。なら、糸川さんを今回だけでも逃がしてあげてくれないかな」
「はぁ? それとこれとは話が別......」
俺は、斉木の目を見て彼の意思を察するとともに少し戸惑ってしまった。
最期まで人を守ろうとする彼の行動が理解しがたいようで既に理解しているような不思議な気分になった。
「あっ」
気が付くと斉木は既に視界になかった。
急いで後を追うが、間に合わず、地上まで降りるとそこにいたのは虚ろな目をした糸川のみだった。
俺が視界に入っても意に介さない様子だ。元々、仲間が目の前でやられていくことでトラウマが植え付けられたみたいだが、あそこから自由落下した斉木のなれの果てとそれが消滅するところを見ていよいよ精神が完全に壊れたみたいだな。
「あいつには悪いが、もはや介錯してやるべきか」
拳銃に手を伸ばすと突如、四肢が何かに縛られた。
「これは、リボン?」
リボンの先を目で辿ると、禍々しいオーラを放つ何かがそこにいた。
「......カラ......コセ!!」




