正義散る
「あれから10分......いつまで隙を伺っていれば気が済むんだい?」
岸田君は、《虚像》で姿を消して以降、全く音沙汰がない。だが、正義感が強い奴特有の雰囲気というかオーラのようなものがぼんやりと感じられるあたり、近くにいるのは間違いない。
正直、目には見えなくとも、実体がある時点で風を起こして道端に落ちているゴミか何かを使えば今すぐにでも正確な位置を掴んで切り伏せること自体は可能だが、それでは面白みに欠ける。
そもそも僕は道楽の為に戦っているのだから、相手が何か手を打とうとする限りはチャンスを与えるべきだろう。そうでなければ、力を抑制してまで雑魚と戦う価値は無い。
とは言え、流石にこれ以上待つくらいなら別の相手を探した方が良さそうだ。
そう思った僕は武器を捨て、手を後ろに組んだ。
「ほら、隙だらけだよ」
「なら、遠慮なくいかせてもらう!!」
突如、僕の目の前に膨大な光エネルギーが姿を現した。
「へぇ」
僕は、感心の声を漏らした。
「風間君の視界から消えていたおかげでありったけのエネルギーを集めることが出来た。これだけの力を制御するのも困難だがこの至近距離なら外さない!!」
「なるほど。自分でも制御出来ない攻撃を当てる為にわざわざ近くに潜んでいたってわけだ。待った甲斐はあったよ」
「これで終わりだ! 《光子聖剣 出力20倍》!!」
巨大な光の剣が僕を穿とうと襲い掛かる。これをまともにくらえば流石にタダでは済まないだろう。
もっとも、その仮定は全くの無意味だが。
「《疾風》」
「何!? 消えた?」
岸田君の攻撃は、地面に大きなくぼみを作り、その役目を終えた。
「消えていないよ。君じゃあるまいし」
「何故、無傷なんだ?」
「簡単さ。君の攻撃より僕の方が速かったってだけ」
「は?」
「まぁ、論より証拠ってことで。《疾風斬》。」
「ぐぁぁぁ!」
「真っ二つに割れた感想はどうだい?」
僕がそう言いながら振り返ると、傷口が想定よりやや右にずれていた。真っ二つにしたつもりが、右腕を飛ばした程度にとどまっていた。
「また《虚像》か。まぁいい。時間が延びただけだ。放っておいても時期にゲームオーバーだ」
その場から立ち去ろうとすると、丁度、車が一台やってきて、運転手の女と目が合った。
一般人か。趣味ではないが、見られたからには消しておくか。
「あのー。すみません。道の真ん中に居られると、通れないんですけど......」
首を落とした。
一般人に罪は無いが、許してくれ。
少し申し訳なく思いながらもその場を去ろうと女に背を向けた。
「ぐっ」
突如、背中に痛みが走る。
「通れないので、死んで下さい」




