読み合い
「ちょっと待ちなよ」
追手の要求を無視しながら、俺たちはひたすら走り続ける。
「真、大丈夫? 運動そんなに得意じゃないでしょ?」
「あと数分で開けた土地に着く。それに、いつもは後方から指揮と援護をしているからあまり動かないが、いざという時の為に最低限のトレーニングはやっている」
「さすが真。抜かりないわね」
「ちょっと。僕の話聞いてる? イチャイチャしてるカップルを追いかけさせられるこっちの身にもなってよ」
「は? べ、別にイチャイチャなんかしてねえし! あと、まだカップルじゃねぇから!! 適当なこと言ってんじゃねぇ!!!」
魔子は顔を真っ赤にして言い返した。そこまで怒らなくてもいいだろうに。
これには壁山も呆れ顔だ。
「はいはい、そうですか。これ以上追いかけるのも退屈だし、とっとと捕まえますか」
そう言うと、壁山はアスファルトの中に消えていった。
「魔子。周囲警戒。特に足元」
「了解」
俺も足元を警戒していると、丁度足元から手が出てきた。
俺はすぐさま銃口を向けつつ、手から距離を取った。
すると、アスファルトの中から再び手の主が姿を現した。
「ちぇっ。読まれてたか」
「手に弾丸を受ける覚悟があれば、俺を捕らえられていただろう?」
「どうせそこまで読んでたんでしょ? それに、そこに関しては読み外してもいい」
その通りだ。
壁山が最も簡単に俺たちを捕らえる方法。それは、俺と魔子のうちのどちらかに壁山自身が触れた状態で《物体透過》の能力を使い、片足だけでもアスファルトに埋めること。それなら、振れやすい俺の方に《物体透過》で触れる直前まで隠れられる足元から狙って来ると読んでいた。
もちろん、分かったところで俺には避けられないが、触れる瞬間は《物体透過》を解除しなければならない。つまり、銃で撃つことが出来る。痛覚を酷く嫌う壁山にはこれ以上ない牽制になる。牽制にならなかったとしても、手に一発入れられる。
「真、あれ」
突然、魔子が進行方向を指さして話しかけてきた。指の指す先を見ると、今までに見たものより一回り大きいゴーレムが立ちふさがっていた。
「気づいたみたいだね。僕だって、君たちがあそこから最も近い開けた土地に向かうこと位、読んでいたよ」
「何?」
「《物体透過》は、周りにものがあればあるほど多彩な行動が可能だ。ものが少ない場所に逃げるのは当然だろ? 僕だってそうする。だから、先回りして配置しておいたんだ。君たちを足止め出来るゴーレムをね」




