束の間の休息
早朝。目覚まし時計が僅かな時間差で何度も鳴り響く。
「朝か」
ここは学生寮。学生警察が寝泊まりする施設だ。
私は、自分の部屋を出て、202小隊の共有スペースに行くと、斉木君がいた。
「おはよう。斉木君」
「ああ。おはよう。岸田君」
「糸川さんはまだ寝てるのか?」
「そうみたいだね。彼女、裏社会の人間を見ると目の前で仲間が殺されていく光景が浮かんでくるらしい。昨日は、3人と遭遇したから精神的に疲弊してるみたいだ」
「そうか。切島君も桐谷先輩と保健室で休んでるそうだ。そういえば、斉木君は大丈夫なのか? 能力の使い過ぎで一時的に使えなくなっていたろ」
「僕なら平気さ。霊ヶ峰の襲撃からも時間が立ってるし、ほら」
斉木君はそう言うと、念動力でコーヒーの入ったカップをテーブルの上に運んだ。
「いつも飲んでるでしょ?」
「いや、私が飲んでいるのはココアだ。コーヒーは飲めない」
「知ってる。これは僕のだ。ココアも用意するよ」
「ああ。頼む」
それから、私と斉木君は他愛のない会話をした後、各々自由に過ごした。
今日は、休日にするから生徒は休めと理事長から言われている。町の様子も先生方が見て下さっているので余程のことが無い限り出動することは無い。
昼を少し過ぎた頃、糸川さんも自室から出てきたので、3人で食堂に向かった。
食堂に着くと、2年の先輩方が先に食事をしていた。
私たちも食事を持って先輩方と同じテーブルについた。
「それにしても指宿魂子の居場所は分からず、生徒で動けるのは6人って相当キツイな」
竹中先輩が不満を漏らした。
「そうですね。先輩方のお知り合いの方々が協力してくださって何とかなっているのが現状ですからね。そういえば、剣崎さんは?」
「あいつは超が付く程のロングスリーパーだからな。まだ寝てるよ。放っておけば勝手に起きてくる。それより101小隊の奴らが心配だ。揃って消息不明な上に、無事に帰って来たとしても、元々仲間の風間が敵として待ち構えているときた」
「確かに、花澤先生も戻ってないみたいですし、どこにいるのかまだ分かりませんね」
「ああ。まあ、吹雪は状況的に《無能潰し》が絡んでるのは間違いないが、奴も神出鬼没でどこにいるのか分からないからな」
話していると、二人の剣士が食堂に入ってきた。
「《剣姫》はどこだ? 私と私の2番弟子で町のゴーレムを一掃したぞ!」
「お師匠。こちらには居ないようです」
直接会ったことはないが、資料で見たことがある。《剣技王》と秘密結社《エンデ・デア・ヴェルト》のメンバー、城ケ崎斬夜だ。
その二人の話に竹中先輩が食いついた。
「《剣技王》、ゴーレムを全滅させたのは本当ですか?」
「ああ。《剣姫》とゴーレムの討伐数で競っていてね。気が付いたら町からゴーレムがいなくなっていたよ」
この人、花澤先生にいい様に使われてないか? と思ったも束の間、竹中先輩が私たちに告げた。
「みんな、今すぐ出動だ。町にゴーレムがいなくなった今、次にゴーレムが現れた場所の付近に指宿魂子がいるはずだ」
「もう遅い」
また一人、食堂に入ってきた男がいた。影山さんだ。
「どういうことですか?」
竹中先輩の問いに影山さんが答える。
「既に町にゴーレムが再び出現し、町中をうろつき始めている」
「そんな......」
「安心しろ。居場所は既に掴んである。全員のスマホに送っておいた」
「ありがとうございます」
「では、私は別件があるのでこれで失礼するよ」
そう言って、影山さんは食堂を去った。
「《剣姫》もいないし、私たちも別の場所を探しに行こう」
「いえ、私は組織に戻りますので、ここからはお師匠が勝手になさって下さい」
あまり仲良くなさそうな会話の後、剣士の二人も帰っていった。
私たちも指宿魂子を確保すべく、出動する支度を始める為に自室に戻った。
食堂には終始マイペースで一人、食事をしていたサヴァだけが残った。




