沈黙の狙撃手
「《天の光》!!」
私は天界からの光をゴーレム達に照射する。ゴーレム達は中身が霊なので、光には弱いようだ。特に私の異能力、《天使》の力で放つ光には滅法弱い。個体によっては照射されただけで動かなくなる程だ。
「《発光》!!」
私の後ろでは、学生警察の一年生の岸田君、二年生の真君と遊夜君が前衛のサポートと指揮を取っていて、その更に向こうでは、剣崎って奴と妹の魔子がゴーレムと戦ってる。
私は、後衛として時々、前衛のサポートをしつつ後ろから来るゴーレムを一手に担っている。まぁ、実力と立場を踏まえれば妥当なので不満は無い。
雑魚ばかり相手にしていても暇なので、前衛のサポートと指揮を担っている中衛の会話に聞き耳を立てることにした。
「昼間のゴーレムより強いって聞いた時はどうなるかと思いましたけど、何とかなってますね」
この声は岸田君ね。
「いや、戒と天子さんが力を貸してくれてるのが大きい。今やってる、光で弱らせてから攻撃したり、遊夜の未来計算と俺の指示でできるだけ無傷で立ち回るなんて作戦が実行できるのは、あの二人が俺達よりずば抜けて戦闘力が高く、多くのゴーレムを引き受けてくれてるからだ。要は、大きな戦力がいるから俺達がまとまって戦えているってことだ」
流石は真君。現学生警察No2の司令塔。戦況の理解が適切ね。今の作戦も彼が立てたものだし。本来なら被害が出て当たり前の戦力差で現状被害が無いのは大したものね。
「なるほど。勉強になります」
岸田君の言葉を最後に会話は聞こえなくなった。実際、向こうは忙しそうなので、そこまで話してはいられないのだろう。
こちらはもうゴーレムの数も少ないので一気に終わらせてしまおう。
「真君。こちらはもうすぐ終わりそうだから、残りを倒しに行きたいのだけど少々持ち場を離れても?」
「大丈夫ですよ。少しの間なら持ちこたえられます」
「それじゃ。行って来るわ」
私は、彼らから見えなくなる位置まで移動した。
「さてと......」
私は残りのゴーレムの数とそれぞれの位置を確認した後、光で照らすのを辞めた。
「照らして動かなくするよりぶっ壊した方が速い!」
私は異能により顕現した翼を用い、一瞬でゴーレムを蹂躙し尽くした。
「あ~、スッキリした。この戦い方の方が性には合ってるな。やっぱり」
大きく伸びをして、戻ろうとした時、向こうから真君の声が聞こえてきた。
「おかしい。いくら何でもゴーレムの減りが速すぎる」
何かあったのかと思ったが、すぐに答えはやってきた。一本の矢が私の目の前、というより眼球の前を通り過ぎていった。その矢には紙が括り付けられていた。
「何? いつもの面子で話がしたい。すぐに戻ってこい。って、いっつもいない癖に用がある時だけ呼び出すの止めろっての」
差出人は私の上司にあたるS。《エンデ・デア・ヴェルト》の幹部だ。無暗に無能力者を殺さない、穏便派のリーダーでもある。彼に狙われたら最後、音も無く消されるって噂だ。その噂になぞらえて《沈黙の狙撃手》なんて呼ばれている。主に学生警察の学園長から。
兎に角、用事が出来たので電話でその旨を伝えることにした。
「もしもし。真くん? 上司に呼ばれたから帰ります。そちらも既にかたづいているでしょう?」
「ええ。何故か急に数が減ったので」
「そう。私の上司が私を早く連れ戻すために手を出したみたいね。それじゃあ、また困ったら連絡してね」
そう言って私は通話を切り、矢が飛んできた、遠く離れた高層ビルの屋上に飛んで行った。
「よう」
Sは、弓と二つの超長距離用スナイパーライフルを片付けていた。
「なんでこんな遠くから届くんだよ」
「届くやつで撃ってるからだ」
「暗いし障害物とか距離減衰とか色々あるんだろ?」
「狙った所に飛ぶように撃ってるから大丈夫だ」
なんだコイツ。相変わらず無茶苦茶過ぎて意味分かんねぇ。
適当な会話をしているうちにSの支度が済んだようだ。
「終わったか?」
「ああ。アジトに行くぞ」
と言いつつ、Sは全く動こうとしない。
「え?」
「いや、俺、アジトがどの方向にあるか分からんし、飛べないだろ。連れてってくれよ」
マジで何なのコイツ。




