《シンプル》残党
目を覚ますと、僕は森の中にいた。辺りは真っ暗で、すぐそばで焚火が燃えている。
「あれ? 斉木君。ここって天国?」
糸川さんも目を覚ましたようだ。
僕らは、岩山守人を確保するべく出動していたが、《ラグナロク》のメンバーと思しき半身サイボーグの少女の攻撃を受けた。もう駄目かと思ったけど、学園長から貰ったこの《適正魔術検出用ペンダント》に最後の望みをかけたが、何と逃げ延びたらしい。
「あ、起きたんだ」
声の方に目を向けると、真っ黒な寝袋から寝起きの少女が出てきた。
軽く目をこすった後、腰に身に着けていた二丁拳銃を僕らの方に向けてきた。
「宇宙人を殺すのは初めて。宇宙人の血はどんな色かなぁ?」
は? 宇宙人? とにかく殺されようとしているのは間違いないみたいだし、なんとかしなきゃ。
糸川さんは顔が青ざめて気分が悪そうだし、僕がやるしかない。
「ぼ、僕らは宇宙人なんかじゃないし、血の色も普通だよ。第一、宇宙人なんているわけがないじゃないか」
「でも、空から落ちてきたよ?」
空......大方、逃げる時に発動した魔術が学園長がよく使ってる《転移術》で、あの時は何か発動してくれって必死だったから適当な空中に転移して落ちたところを拾われたんだな。
魔術のことを話しても理解してもらえそうにないし......話題を変えて誤魔化すか。聞きたいこともあるし。
「そういえば、もう一人落ちてきたと思うんだけど、その人はどこにいるのかな?」
言い終えると同時に、二つの銃声が同時に鳴り、弾丸が顔面すれすれの位置を通り抜けていった。
「話逸らそうとしたでしょ?」
「ごめんなさい。勘弁して下さい」
このまま撃たれるくらいなら謝って命乞いでも何でもしてやる。二度も格上の相手から生き延びたからか生に対する執着が強くなったらしい。能力者は死んでも能力を失って生き返るが、学生警察としては死んだも同然だ。
「いいよ。冗談だし」
「は?」
思わず声に出てしまった。
急な展開に戸惑っていると、空中から少女と同じくらいの少年が出現した。
「愛火ちゃん、川の魚釣ってきたよ」
「お帰り。瞬。学生警察の人達、起きたよ」
「そうか。って、一人は唖然としてるし、もう一人はすごい気分悪そうだけど、何かあった?」
「別に。ちょっとお話しただけ」
「そう。じゃあ、まともに話せそうな方はこっち来て貰える?」
「は、はい」
まあ、僕だよな。
そう思った僕は、彼らと焚火を囲んで会話を始める。
「えっと、一応助けてもらったようでありがとうございます」
「いいよ、別に。今日は泊まっていきなよ。明日の朝に学生警察に送るから」
少年が答える。さっきからこちらが学生警察だと分かっているような口ぶりなので何故知っているのか尋ねることにした。
「どうして僕らを知っているんですか?」
「ああ。君達は僕らに会うのは初めてか。僕は元《シンプル》のメンバー、伊藤瞬。こっちは、照木愛火。僕らは君達が《黒渦》と初めて戦った時に遠くから見てたんだ」
《シンプル》。この前、《シャドウ》に壊滅させれた、殺し屋集団。それなら、糸川さんの様子が悪いのも納得がいく。
「どうして殺し屋が学生警察を助けるんです?」
「今は殺し屋じゃないよ。僕らは、組織が壊滅したあと、ある人に拾われたんだ。その人がこの山奥での自給自足の生活を教えてくれたんだ。おかげで殺しをしなくても食べていける。その人に恩返ししたくてさ。その人が嫌がる真似はしたくない。それだけさ」
殺しは褒められた行為じゃない。しかし、彼らも生きるための手段として殺しが必要だったのか。その手段を選らばざるを得ない状況に陥る人を救うことも僕たちがすべきことなのかもしれない。
「でも、一つだけ。《シンプル》には未練があるんだ」
「というと?」
「《ロストレガリア計画》ってあっただろ?」
「うん。幸い、何とか当事者にならなくて話でしか聞いてないけど」
「あれは、うちのボスの発案じゃ無いらしい。加えて、その頃からボスの様子がおかしかったんだ。あの計画の裏には僕らの知らない誰かが絡んでるんじゃないかとにらんでる。僕はその真相が知りたいんだ。何か関連した情報が分かったら教えてくれないかな。仮にも僕らの人生を変えられた計画だ。このままじゃ終われないんだよ」
そう言った彼の目は、先程とは比べ物にならない程の気迫で溢れていた。




