囚われの学生警察
目が覚めると、薄暗い部屋の中にいた。
辺りを見渡すと、二人の女の子、緋ノ宮さんと吹雪さんが倒れている。そして、鉄格子を挟んで見知らぬ男が椅子に座って本を読んでいる。
「目が覚めたかい?」
男がこちらに気付いて話しかけてきた。
「誰だ?」
「そこに紙が一枚落ちてるでしょ? まぁ、名刺みたいなものだからそれを読んでみてよ」
裏返っていた紙を手に取ると、男の写真が目に入ってきた。指名手配書だ。
大まかな内容をは以下の通りだ。
《無能潰し》 天賦ヶ丘秀一
懸賞金 言い値(生死は問わない)
罪状 危険な思想の持ち主
「指名手配書にしては無茶苦茶だな」
「そうでしょ? でも、名刺にはちょうどいい内容だよね」
「それで? 超高額賞金首がどうして学生警察を牢に入れなきゃならないんだ?」
「それはちょっと言えないかな。でも、安心してよ。君達に何かしようって訳じゃないし、然るべき時が来たら解放するよ」
然るべき時。それがいつかは分からないが、この古びた家が奴のアジトなら解放されるときに場所が分かる。学園長に報告出来ればお手柄だ。そうすれば、俺の株が上がり、モテる。
こんな事でも考えていないとやってられない。ゴーレムにボコボコにされたかと思いきや、気がつけば牢の中で目の前にやばそうな男。状況についていけない。
「はぁ? なんだここ?」
緋ノ宮さんが目を覚ました。
「やぁ、目が覚めたかい?」
「お前、誰だよ?」
以下、再放送につき省略。
「? ここは?」
緋ノ宮さんが俺と同じやり取りを終えると同時に吹雪さんが目を覚ました。
「やぁ、目が覚めたかい?」
この人は実はロボットなのではないかと疑っていると、緋ノ宮さんが話しかけてきた。
「あのさ、その......助けてくれてありがとな」
「え? 何のこと?」
心当たりが全くない。
「俺様がピンチの時に、ゴーレムを倒してくれただろ?」
「いや、俺はやられたとこまでしか覚えてないんだけど」
「記憶が無いのか? まあいいぜ。借りはいつか返すから」
「ああ......」
話が終わったあとも必死に思い出そうとするも、成果はなかった。
そうこうしているうちに、吹雪さんが例のやり取りを終えて帰ってきた。
「これ、今日の夕食だそうよ」
そう言って、吹雪さんは持ってきたトレーを机に置いた。
皿の上には寿司が並んでいる。
「これ、何か入って無いよな?」
緋ノ宮さんが尋ねると、天賦ヶ丘は笑いながら答えた。
「あはっ。何も入って無いよ。あ、もしかしてわさびが欲しかったかな? すぐに用意するね」
こうして、天賦ヶ丘は台所らしき場所へ消えていった。
「ふぁにもふぁいってにゃいふぃたいよ」
振り向くと、吹雪さんが口に何か入れたまま喋っていた。
「え?」
何を言っているのか分からないので、聞き返すと、口の中のものを飲み込んだ後にキリっとした表情で、
「何も入って無いみたいよ」
と、繰り返した。
「あ、そう。俺たちも食べるか」
「そうだな。俺様も腹減ったし。お~い! わさびまだか~?」
「はい。持ってきたよ。ごめんね。今はチューブのやつしかなくてさ」
「ってちがーーーーーーーーーーーーーーーう!!!!!!!」
急に緋ノ宮さんが声を荒げた。
「これ、閉じ込められた奴と閉じ込めた奴の会話じゃないだろ! 大体、こっちには異能力者が三人もいるんだ。出ようと思えばいつでも出れるんだぞ!」
それを聞いた天賦ヶ丘は急に真剣な表情になった。
「確かに、ここを壊すくらいなら君達には造作もないことだ。鉄格子がある以外は民家と大差ないからね。でも、生きて帰れるかは完全に別問題。外にはゴーレムがうろついてるし、何より僕がいる。さっき、何もする気は無いって言ったけど、逃げるならそれなりの対応を取らせてもらうよ」
あまりの気迫に言葉を失っていたが、天賦ヶ丘はそれを見かねてかまた、笑顔で話し始めた。
「さあ、食べてよ。一応、僕が作ったんだ」
こうして、学生警察と指名手配犯の奇妙な生活が始まった。




