戦いへの決意
少し分かりにくいかもしれませんが、前話の続きということで岸田正義視点です。
突如、現れた男の殺気に身動きを取ることが出来ない。
同級生だけでなく先輩までもが敗北を喫しているこの現状においてこれほどの殺気を放つ男の存在はただただ恐怖であった。
男は刃を抜き、大技を繰り出す溜めのような構えを取る。
「......止めろ」
「あん?」
体は動かないながらも正義感が声となって漏れ出てきた。
「学生警察は壊させない」
「言葉と行動が一致してねえぞ、メガネ野郎。口は達者でも足がすくんで腰も引けてるぞ」
男の言うとおりだ。正義は必ず勝つ。そう信じてこれまで生きてきた。
しかし、実際は違った。学生警察になってからも自らも悪に敗北し、仲間が敗北しているところを目の当たりにした。
同じ正義の道を志したはずなのに、悪の組織に寝返った者もいた。
自分の自信を支えていた正義という存在が私の中で曖昧で不確かなものになりつつあった。
「正義は悪に勝てないのか......」
つい考えが口に出た。それを聞いた男はこう返した。
「何言ってんだ? 正義とか悪とかは関係ねぇ。強い方が勝つ。それだけだ。お前も正義の味方になりたいならそのために力を示してみやがれ!」
男は攻撃の標的をこちらに変え、斬りかかってきた。
「お前の正義とやらが本物なら受け止めてみろ!」
私は、剣で攻撃を受けはしたものの、そのあまりの威力に壁まで吹き飛ばされてしまった。
「ちっ。つまんねえな」
男はため息をついた。
「私の正義は偽物だ」
「何?」
「私とっての正義は、戦う自分の心の支え、戦いのための正義でしかなかったんだ。正義は必ず勝つから自分も勝つはずだと自分を励ますための道具として使っていた」
私は立ち上がりながら続ける。
「だが、あなたに気付かされた。戦いの為に正義を使うのではなく、正義の為に戦うべきだと」
私は男に剣を向け、決意表明をする。
「今ここに、私の正義を、悪を滅することと再定義し、私の持てる力の全てを示し、正義を執行する」
悪に属する人間も、正義から悪となった人間にも、それぞれ自分が正しいと考える信念、言わば正義があるはずだ。
ならば、私は正義と正義のぶつかり合いを制し、私自身の正義が正しいことを証明する。
「この闘志......面白い! 俺は剣崎戒。お前の名は?」
「岸田正義。行くぞ!」
互いに名乗った後、私は剣崎に斬りかかった。
金属音が幾度も鳴り響く。
しかし、私は剣崎の守りを崩せない。
「闘士としては合格だが、剣士としては三下だな」
「確かに剣では遠く及ばないようだが、私には異能がある。《虚像 時間差》」
《透明化》が雷鳴君に敗れてから、考えた派生技。これで隙を作る。
「実態がねぇ......本体はそこか!」
「何!?」
間一髪で攻撃を弾くも、新技はあっけなく破られてしまった。
「何の能力か知らねえが、さっきまでと同じ速度で動くダミーを作り、本体は姿を消してダミーとは違う速度で行動するってとこか? 悪くねえが、闘志が駄々洩れだ。感じ取れる位にな」
「くっ」
「だが、その闘志は称賛モノだ。お前の最大火力で来い。受けてやる」
「称賛感謝する。行くぞ!」
私は、周囲に出せるだけの光の玉を出現させ、その全てを剣に収束させる。
強大な光エネルギーを帯び、輝きを放つ剣を構え、切島君に教わった一撃必殺の刺突を放つ。
「これが今の俺の全力だ! 《光子聖剣》!」
刺突は光の剣となり、剣崎の心臓めがけて直進する。
「《神剣 攻の型 刃砕き》!」
私は、強烈な衝撃にあてられて気絶した。




