現状報告
学生警察に撤退命令が出た後、私、岸田正義は直ちに撤退し、現状報告の為の会議に出席していた。
「これはどういうことよ!」
花澤先生が生徒の状況まとめたプリントを見て、珍しく声を荒げている。
プリントの内容は以下の通りだ。
101小隊
隊長 吹雪氷華 消息不明
副隊長 緋ノ宮火憐 消息不明
隊員 風間翔 生存確認(寝返り)
隊員 雷鳴徹 消息不明
102小隊
隊長 岸田正義 やや消耗
副隊長 切島礼二 行動不能(精神障害)
隊員 糸川結衣 戦闘不能(精神障害)
隊員 斉木力 戦闘不能(完全消耗)
201小隊
隊長 夢想魔子 異常なし
202小隊
隊長 竹中真 異常なし
副隊長 万屋洋平 消息不明
隊員 御劔遊夜 異常なし
隊員 桐谷隼人 行動不能(精神障害)
「徹に何かあったら......」
花澤先生は心底不安そうな表情で席を立つ。
「私はこれで」
花澤先生が部屋から出ていこうとしているのを見て、学園長が理事長に無言で合図を送る。
「《止まりなさい》」
突如、花澤先生の体の動きが止まる。
「どういうつもり?」
「規律を無視した行動はお控えください。ただでさえ人員が不足している今だからこそ、きちんとした行動方針を立て事態に対処すべきです」
「くっ......徹......」
花澤先生が再び席に戻ると、学園長が話を再開した。
「まず、ゴーレムの作成者が分かった。名前は岩山守人。建設業をしている男だ。彼の能力はゴーレムの作成。作っても動かすには動力を別に用意なければならない。よって、本人に戦闘力は無い。彼の確保は糸川と斉木にやってもらう」
「分かりました」
二人が声を揃えて返事をする。
「この二名は戦闘が出来ないので、護衛にサヴァを付ける。協力するというからには働いてもらうぞ」
学園長がサヴァという男に目を向けると、サヴァは注告を始めた。
「働くこと自体は構わないが、一つ、注告を聞いていただきたい」
「なんだ?」
「私の宿敵であるKという男がこの事件に一枚嚙んでいるはずだ。彼が力を手に入れる前に始末しなければ今学生警察が守ろうとしている市民もいずれは死ぬ」
「その時は、僕が止めるから心配無用だ」
「その時が来たらあなたは負ける」
「何故分かる?」
「私は、現在から25年後の未来からやってきた。それまでの大まかな出来事なら書物に記される限りでは把握している。Kを早期に始末していただきたい」
「分かった。私が対処しよう。Kがどこにいるのか把握してるのか?」
「いえ。とある書物によると、Kはこの戦いの終盤に力を手に入れた状態で現れたと記されています。それがどこで手に入れた力なのかは誰にも分からない」
「そうか。まあいい。場所にはいくつか心当たりがある」
「学園長」
私は、質問の為に挙手をした。
「私たちは何をすればいいのでしょうか」
「戦闘可能な生徒達にはゴーレムの動力の供給源となる人物を探して欲しい」
「でも、どうやって?」
「目星はついている。秘密結社《ラグナロク》の構成員、指宿魂子。恐らく、ゴーレムに霊を憑依させて操っているはずだ。彼女の居場所を特定してもらう」
「待って下さい。そんな組織、初めて聞きました」
「先程から話題に出ているKが率いる新設の組織だ。状況から見て、今回の戦いは《ラグナロク》が仕組んだと考えてほぼ間違いないだろう。《ラグナロク》には、僕が知る人物も数人在籍している。指宿魂子もその一人。彼らの目標はA、《エンデ・デア・ヴェルト》のリーダーの抹殺だ。で、敵が《ラグナロク》だと分かったところで協力してくれるかい? 夢想天子」
「リーダーに仇なす者を放ってはおけません。利害の一致ということで協力させていただきます」
「ちっ。猫被りババアが」
「魔子と3つしか変わりませんよ?」
学園長の呼びかけに答えた夢想さんに夢想先輩が悪態をつき、喧嘩が始まる。
うちと同じく姉妹の仲は良好ではないらしい。
そんな彼女らを無視して、学園長は話を進める。
「じゃあ、夢想天子は生徒達のサポート、先生方は消息不明の生徒の捜索でもしてもらおうか」
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会議が終わって外に出ると、謎の男が話しかけてきた。
「学生警察ってのはここか?」
「そうですが」
「へえ。壊し甲斐がありそうだな」
男が放った強烈な殺気に足がすくみ、声も出なかった。




