王子再来?
「天子さん、いつもの人は一緒じゃないんですか?」
「城ケ崎か? あいつは、今頃、ゴーレムをぶった斬ってるだろ。無能力者絶対守るマンだし」
適当に雑談をしつつ、僕、御劔遊夜はパトロールを再開していた。
せっかくなので、同行している《エンデ・デア・ヴェルト》のメンバー、夢想天子さんに色々訊いてみることにした。
「《エンデ・デア・ヴェルト》って一枚岩じゃないんでしたっけ?」
「ああ。《エンデ》は異能力者を殲滅する為に組織されたが、異能力者の周りにはしばしば無能力者もいる。そいつらが異能力者を守ろうとすることもある。その時にその無能力者もまとめて殺す派と殺さない派に分かれてる。もちろん、犬猿の仲だ。組織の性質上、最終的にはメンバー同士で殺し合うことになるって全員分かってるから、和解とかする気は私を含めて一切無いし、出会ったら戦う運命にあるってわけだ」
「天子さんは殺さない派ですよね」
「そうだな」
「どうして異能力者の僕を殺さないんですか?」
「異能力者は死んでも能力を失って生き返る。だから今ここでは殺せない。......なんてつまらないことは言わないさ。妹の友達を直接手にかけることはしたくないってだけだ」
「はあ。ありがとうございます」
予想外の発言に何故か感謝の言葉を述べてしまった。
ふと、見ると、前方から僕に負けず劣らずのイケメンがやってきて話しかけてきた。
「すみません。人を探しているのですが。Aと呼ばれる人物に会うにはどこに行けば良いか知りませんか?」
A。《エンデ・デア・ヴェルト》のリーダーの呼び名だ。
もちろん、天子さんが黙ってはいない。
「あんた、誰?」
「僕は、元学生警察101小隊隊員の風間翔と申します」
「ふーん。御劔くん、知ってる?」
「僕らが一年と合流する前に殉職したという生徒がそんな名前だった気がします」
「少し訂正させてください。僕が殉職しそうになった時、Kさんに助けていただいたんです。その時から僕はKさんに忠誠を誓い、《ラグナロク》のメンバーとして恩返しをすることにしました」
「随分、簡単に寝返ったんだな」
「元々、異能力を活かした仕事に就きたいと思っていただけなので」
「あっそ。とにかく、《ラグナロク》ってことは私の敵だ。ぶっ殺す」
天子さんは、風間といくつか言葉を交わした後、異能力を発動して交戦態勢に入る。
背中には純白の翼が生え、頭上には光輪が浮いている。
「あまり戦いたくはないですが、そっちがその気なら仕方ないですね」
風間もそう言い、剣に手を添える。
「《旋風刃》」
風間は高速で抜刀。正面からの斬撃は天子さんを......襲わない。
「前方右上、左、真後ろ」
「オッケー」
天子さんは斬撃の方向を聞くと、直ちにすべて防いだ。
「驚きました。まさかほとんど見えない斬撃を防ぐとは。でも、今のはほんのあいさつ代わりです。既にこのあたり一帯には空気の刃が無数に仕掛けてあります。分かってても防ぎきれませんよ。特に後ろの先輩はね」
僕のことだ。確かに、僕は相手の攻撃を計算することは出来るけど、あくまで対処できる攻撃が増えるに過ぎない。分かっていたところで対処できない攻撃を受ければ確実にやられる。
「あんた、綺麗な顔してやらしいな」
天子さんは、そう言いながらポケットに手を入れる。
ポケットの中で小さくカチッという音がした。
すると、僕たちの周囲にいくつかの多角形平面が出現した。多角形の内部には真っ暗な闇が広がっている。
僕たちは完全に覆われてしまい、外の様子は全く分からない。
そして、多角形平面は次第に近づいてきて僕らを飲み込んでしまった。




