パトロール《臨時小隊04》
僕の名前は御劔遊夜。学生警察202小隊の隊員で、今は臨時小隊04の隊長としてパトロールに来ている。
そこまではいいんだけど、他の隊員は二人とも難を抱えている。
霊ヶ峰幽の襲撃でかなりのダメージを受けている上に、限界を超えた能力の使用でしばらく能力を使えない斉木君。
同じ件で、裏社会の能力者に対して一種のトラウマを植え付けられた糸川さん。
加えて、能力使用不能の斉木君以外は他の学生警察に比べると能力があまり戦闘向きとは言えない。
以上の理由から、戦闘はなるべく避け、ゴーレムや指名手配犯についての情報を集めている状況だ。
聞き込みをしている途中、十字路を右に曲がるとゴーレムがいた。
「まずい。二人とも下がって」
咄嗟に二人に退避するように告げたが、どうも様子がおかしい。
ゴーレムの頭が破壊されている。他の部位もボロボロで今にも崩れ落ちそうだ。少しの間観察していたが、動く気配もない。
ふと、見ると電信柱に隠れているお婆さんを発見したので事情を聴いてみることにした。
「すみません。学生警察です。あそこのゴーレムについて話を伺いたいのですが」
生徒手帳を見せて尋ねると、お婆さんは快く応じてくれた。
「あら、お疲れ様。私が散歩していたらあの怪物が襲ってきたもんだから驚いて腰を抜かしちまってねぇ。もう駄目だと思ったらそこの別嬪さんに助けられたんじゃ」
お婆さんの指さす方を見ると、認めたくなくとも認めざるを得ない程の美少女がこちらに歩み寄ってきた。普段なら、これほどの美少女を前にしたら既に食事にでも誘っているはずだが、そんな気は全く起こらない。
というのも、この美貌には既に見慣れているし、その内に秘めた醜さを知っているからだ。
「あら、御劔君じゃないですか」
満面の笑みで話しかけてきたこの女性は夢想天子。201小隊隊長の夢想魔子の姉だ。
「どうしてここに?」
僕はなぜ彼女、というより秘密結社《エンデ・デア・ヴェルト》のメンバーがここにいるのか尋ねた。
「どうということはありません。お婆さんがあれに襲われているところにたまたま通りかかったら、なぜか急にこちらの方にやってきたのでズ......懲らしめて差し上げただけです」
少し素が出かかっていたがお婆さんや後輩がいる手前、正体と本性がバレないように猫を被っているらしい。
このままではやりづらいので三人には席を外してもらおうか。
「学園長、聞こえてますか」
僕が大声をあげると、空から学園長の言葉が脳に直接響いてきた。学園長いわく、《伝心術》というテレパシーに似た魔術らしい。
「もちろん。状況が状況だからね。上空から町全体を見下ろして教師陣の指揮をとっている」
「僕はこの人と行動するのでお婆さんを安全なところに、後輩たちを保健室で休ませてやってください」
「なるほど」
そう言うと、学園長は空から降ってきた。やけにまぶしいと思ったら全身に着けられるだけの宝石細工を身に纏っていた。
「持ち場を離れて大丈夫ですか?あと何ですかその格好」
「これは我が数多の姿が一つ、《大天才魔導士チヒロ》。そして、我が《分身術》の前には持ち場という概念など無意味」
夏らしからぬ風が辺りを吹き抜けた。
「......三人とも僕の近くに来て」
そう言うと、学園長は三人を連れて魔法陣に消えていった。
最強なのにメンタルは最弱だなぁ......




