希望の子
正午を告げるチャイムが鳴る。
普段は、午前の授業が終了し、食堂へと赴く時間だが今日は違う。
「これが《時空転送装置》か。もうすぐここから俺の子どもが出てくるのか」
机が端に避けられた教室の中央に佇む奇妙な装置。
今日の正午はここからこの俺、雷鳴徹の子どもがタイムトラベルしてくるらしい。
中学では全くモテなかったこの俺にもちゃんと妻と子供ができるんだ。小学校の頃は......あまり思い出せないが、似たようなものだろう。
とにかく、俺は他の人とは一味違った期待に胸躍らせていた。
「なんだか動き始めたようね」
吹雪さんの言う通り、《時空転送装置》は音を立てて動き始めた。
間もなくして、辺りがまばゆい光に包まれた。
「随分と派手な装置だな」
光が収まったようなので、恐る恐る目を開くと、そこには金髪ショートヘアーの少女が立っていた。
少女はこちらに気付くと飛びついてきた。
「パパ、久しぶり。あんまり変わってないね」
「お、おう。会うのは初めてだけどな」
「そっか~、ここって二十五年前だっけ? いや~、まだ私の時代のつもりでいたよ。パパったら五年前にKを倒しに行って戦死しちゃうからさぁ~」
俺、三十歳半ばで死ぬのか。
あっさり衝撃の事実を告げられ、微妙な感情になっていると、緋ノ宮さんが震えるような声が聞こえてきた。
「金髪......まさかとは思うけど俺様の子じゃないよな?」
「どうなんだ?」
俺が本人に尋ねた。
「ん~、ママは物心ついた頃にはもう亡くなってたらしくて、会ったことないし、ママの知り合いで生き残ってる人あんまりいなくて話もあまり聞いたことないんだよね~。あっ、そうだ。サヴァ居る~?」
「サヴァはKにやられたよ」
「そっか」
「随分あっさりしてるんだな」
俺の言葉を聞いて少女は一瞬、明るい表情を曇らせた。
「あっさり片付けないとやってられないよ」
やはり彼女も前線で戦う者、仲間の死を多く経験しているからこそ、今の振る舞いが出来上がったのかもしれない。
俺は、少女の頭をなで、慰めようとした。
「辛かったな。え~と、あ、名前聞いてなかったな」
名を呼ぼうとしたら知らなかったという事実に直面した結果、どうにも歯切れの悪い言葉になってしまった。
「プッ、あはは! 確かにそうだね~」
少女は笑い始めた。何はともあれ、普段の調子に戻ったようで良かった。
「私は愛。二十五年後の未来では《希望の子》って呼ばれてました。今から手続してこのクラスの転校生にしてもらうからみんなよろしく~」
「え?」
みんなが口をそろえて疑問符を浮かべる。
「いや、お前、どっからどうみても小学生くらいだよな?」
緋ノ宮さんがみんなの疑問を代弁すると、愛は可笑しそうに答える。
「何言ってんの~? 確かに小柄で童顔だけど、みんなと同い年だよ~」
「そ、そうなんだ......」
こうして、学生警察一年生に新しいメンバー、《希望の子》雷鳴愛が加わった。
これで第四章完結です。ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。ブックマークなども更新の励みになっております。
第五章は、第四章で何人か出てきた指名手配犯とドンパチする話になりそうです。
第十章で作品自体の完結になる予定です。まだ、半分以上ありますが、お付き合いいただけると有難いです。私もなるべくお待たせしないように頑張ります。
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