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その朝、僕は彼女の半袖姿を初めて目にしたのでした。その同じ日、僅か数時間後、僕は彼女を水着姿で見ていました。僕の驚愕を想像してください。僕にとって、滋子は聖女だったのです。そうして僕は、彼女を水着姿で見ていました。僕だけではありません。皆、彼女を見ていました。彼女は向こう端から僕が立っている端まで、泳いで来ました。彼女は仰向けになって泳ぎました。皆、その乳白色の姿を目で追っていました。近くで、若い男のグループが、彼女のある特定の部位を【すげえな!】と称賛しました。正直に云わせてください。僕はその時まで、それらの部位をそうした関連で考えた事が無かった。一人がもう一人に、彼女に声を掛けてみろと促しました。彼女はこっち端に着く少し手前で泳ぐのを止めて、水中で立ち上がり、僕に両腕を振ってほほえみました。(僕は、水着を着ていませんでした;ただプール端で彼女を見ていただけです。)親愛なる叔父さん、全く正直に云います。僕は少しも得意ではありませんでした。僕は、ただの一分たりとも彼女に水着を着ていて欲しくありませんでした。嫉妬と云う単語の意味が分かりました。彼女は水から出ると、少し赤くなりながら僕の側へ来て、自分の泳法をどう思うかと尋ねました。僕も水着を買って来たらどうか、そして一緒に泳ごうと彼女は提案しました。間違いが無いようにしましょう。彼女が水泳のレッスンを授けている事実は、彼女がその目的の為に最適の装いをしている事をば意味しませんでした。彼女は競泳用では無く、他の三人の女の子と同じ型の水着を着ていました。テレビで女の子が着ているのを見る、上下に分かれた、あの種類です。彼女の濃い青の水着を着て、滋子は僕の前に立っていました。僕はベンチに腰を下ろして、見ないようにしました。気分が悪いと云いました、家に帰らなければならない。彼女は僕の隣に掛けて、あの深刻そうな、ラファエロの目で見つめました。




