38/55
37
さて親愛なる叔父さん、オバアチャンの追悼式が行われている間、僕が本当はどんな心境だったか想像して下さい。貴方が疑ったように僕は具合が悪いのでは無かった。ある人を知っているような気がして逃げ出そうか逃げ出すまいか真面目に考えているのでした。彼女はその晩のピアニストでした。彼女の名前は滋子でした。彼女がピアノに向かって歩もうと席を立って二列後ろに座っていた僕を見たとき、彼女は若干唇を開いて小さな悲鳴を上げました。僕はそれを聞いたのみならず、今度は証拠がありました。彼女の母親がそれを聞いて【どうしたの!】と彼女にささやくのが聞かれました。彼女が鍵盤の前に場所を占めたとき、僕の思いの中にあったのはオバアチャンではありませんでした。ひとり目を瞠って見る者がありました、一人ほかに下を向く者がありました。二三音の弾き違えが聞かれました、僕は自分の罪を数えました。彼女は信じがたく美しかった。僕はやっとダブル・チェック出来ました。




