表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂 気 前 夜   作者: Raymond Kobayashi 訳:天野なほみ
30/55

29


   思うに射精衝動は性欲の一つの現れ、言い換えるならば性欲の特別なケースです。もしそうであるならば、ここで次の事が言えます。自ら汚す行為は射精衝動による場合とそうでない場合があると。さて、尋ねさせてください。ここに射精衝動が原因で居ても立ってもいられない男がいます。彼の頭の中には必然的に特定の客体が存在するでしょうか、射精衝動が彼をして欲っせしむる、ある特定の者が?僕は答えが否であると言います。ちょうど、飢えた人間が、食べたい衝動が原因で居ても立ってもいられない時、彼の頭の中に必ずしもチーズとサラミのピッツァが思い描かれているとは言えないように、食べられる物なら何であろうと口に詰め込みたいように、射精衝動の支配下にあって自ら汚す彼は、第一義的にはその捌け口を求めるので、必ずしもマリリン・モンローを思い浮かべるのではない。この場合、彼の性欲に客体が無いと言えます。

   間違えないでください、確かに彼女は僕の思慕の客体でした。僕は彼女に(滋子のことですが)恋していましたし、彼女の顔の映像と彼女の声の音はいつも僕の頭を去りませんでした。前段落に因って僕は結論付けますが、僕の性欲の客体は存在しませんでした。故に僕の思慕の客体と僕の性欲の客体とは一致しなかった。それですから僕は[い]謂うのです:僕は彼女に狂っていた七日間、夜な夜な自らは汚しながらも、彼女をば微塵も汚すことがなかったと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ