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狂 気 前 夜   作者: Raymond Kobayashi 訳:天野なほみ
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   僕は自分の中に潜む悪を正当化する積もりは毛頭ありません。夢は貴方以外には話せない事柄です。それを一方では認めながら、睡眠中の現象である夢精は、意志の力の及びにくい種類の生理現象だと、一方では考えるのです。少なくとも、この特定の夢の中で起こった事を、僕の意志で阻止することは不可能でした。意志の範囲内の事、それは克服し、克服し続けました。一度ライターの威力を知った者にとって、射精の欲求は意志の力で抑えられる種類のものでした。“本物”の射精衝動には二度と屈しませんでした。じきに魔婦も諦めたのでしょう、大学で二年目を迎える前には、あの、僕の知力を奪う現象、脳髄を麻痺させる痙攣的生理現象に、完全に勝利したのです。“お前が何を云おうとね、ジャン、僕はしないんだ。”ここにおいて、軽井沢以来四年と三ヵ月、僕が作り上げて来た真実は、事実になりました。勿論、僕は聖なる男ではありません。イエスは僕に姦淫した責任を負わせるでしょう。僕は[えんじん]閹人ではありません。そうであろうとしたに過ぎません。そうして殆ど成功しました。

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