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狂 気 前 夜   作者: Raymond Kobayashi 訳:天野なほみ
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   故に、僕は自慰しなかった。“僕はしないんだ”は嘘で無かった。そうして、僕はそれを真実にしなければなりませんでした。それを、僕はしました。多くの試行錯誤の末。最初の射精があって二年と八ヵ月後、最終的に。一つのライターが効き目を発揮しました。それ以降、僕は[もうか]孟軻の本を開けばいつも直ぐにそれを脇へ放り出して深い溜め息をつくのでした。あの男の云う通りだ、ホルンこそは無秩序の根源である、と自分自身に云ったものです。彼は誰よりも良く知っていたでしょう。

   子供の時分、こむら返りで目を覚まされる事がありました。頻繁にでは無く、偶にです。同じぐらいの頻度で、睡眠時の射精がありました。全部で四回だったと思います。それは大学に入って初めて経験した事で、十ヵ月間悩まされた現象です。大学に入って最初の学期、その前日は眠らず、その日も朝方まで起きていて、非常に疲れて眠りに落ちました。間もなく、二年近く忘れていた異様な苦痛で目を覚ましました。その後も時々、正確には三度、疲労に押しひしがれた時には特に、あの痺れるような発作で飛び起きる事がありました。そして奇怪な夢を見ていた事に気付くのです。この際ですから僕の叔父には洗いざらいぶちまけてしまいましょう。これは非常な恥を忍んで云うのです。それも[ひっきょう]畢竟、滋子への僕の思いがどんなものかを推し量って貰う、これも何かの手掛かりにならない限りでないと考えるからです。実に、こんな事を書く途中で彼女の名前を記す事を、彼女に対する侮辱のようにさえ思うのです。

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