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俺はこの世界で  作者: ロン
メインストーリー:俺はこの世界で邪神を倒す
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82話 修行

 武器の修業を始めて約二週間。

 複数の武器をマトモに扱うには短すぎるこの期間で、俺は一通りの武器を扱えるようになっていた。


「【獣人化】」


 現在の修業場である『グランドフォレスト』の奥で、【獣人化】を起動する。

 同時に常世刃を槍の形に変形させ、マナウルフの胴を凪ぐ。

 獣人の膂力と槍の遠心力に耐えきれなかったのか。マナウルフは胴に鈍い音を響かせながら飛んでいき、地面に落下する。


 立ち上がろうとはするが、骨が折れているのだろう。

 上手く体に力が入らない様子の狼の体は、中々起き上がらない。


 だから、というのも違うが。

 俺は【妖人化】を起動してから得物を弓の形に変更。

 弓を持っている左手の上に、火の魔力を纏わせた右手で触れる。

 そして鋭く息を吐いてから、右腕を引く。

 延長線上にある弦もその時に引き、同時にある魔法を発動させた。


「《炎の矢(ファイアアロー)》」


 本来は手から放つべきその魔法を、弓につがえて敵を射つ。

 基本的に弓を使わず、常世刃の変形では矢が出てこないために考え付いた、俺なりの弓矢運用方法だ。


 普通の矢と同じように放たれた魔法はマナウルフの頸を穿ち、生命活動を停止させる。


 そして一息吐く俺の隙を突くべく、他の魔物が現れた。

 ゴブリン三体、マナウルフ二体、オーク一体。

 そいつらを倒す方法を考えながら、俺はもう一度【獣人化】を起動した。


 今度の形は鎖鎌。鎖部分の先端には分銅が付いていて、これのお陰で鎖鎌の鎖部分が上手く機能してくれている。

 遠心力に任せて殴るもよし、投げて巻き付けるでもよし。今日の俺は、後者を利用することにした。


 腕を使って鎖を数回回転させてから、ゴブリンに向かって投擲。

 左腕が外から内に行くような投げ方をされたため、鎖も同じように角度を付けて飛んでいく。


 しかし、ゴブリンとて木偶の坊ではない。

 手元にあった棍棒を使い、乱暴に鎖を弾き飛ばした。


 しかし───。


「甘い」


 そうするのであれば、同時に何匹かで俺に飛びかかるべきだった。

 そうされてもまだ手はあるが、それでも、鎖を弾いて様子見するよりはマシな手段であっただろうに。


 鎖を持ち直してから、今度は体も使っての回転に踏み込む。

 弾かれたお陰で先程の勢いが死に、回し易くなっていたことが功を成した。


「ギィ!?」


 先程よりも速く重い一撃がゴブリンに迫る。

 ゴブリンは同じように鎖を棍棒で弾こうとしたが───遅い。

 ゴブリンの棍棒が鎖の進路を阻むより先に、鎖がゴブリンの首に巻き付いた。


 それを外すために両手を使うゴブリン。その行動は同時に、自ら武器を手放したことを表していた。


「…」


 そして仲間を救うため、他のゴブリンが突撃してくる。

 マナウルフやオークはまだ様子見なのだろう。いつでも飛び出せるよう構えているものの、未だに襲ってくる気配はない。


 ゴブリン二体は前方左右から、弧を描くような起動で迫ってくる。

 槍を使って迎撃しようとしたが───中断。折角だ。他の武器も使わなければ。


 再び武器を変形させる。

 鎖鎌の鎖部分が消えて、鎌が歪む。

 鎖鎌だったものは、一瞬にしてその姿を短剣のものに変えた。


 それを逆手に持ち、左のゴブリンの首に滑り込ませる。

 錬姫さんが作った武器なだけあり、その性能は武器としての部分だけでも一級品だ。


 短剣は呆気なくゴブリンの頸動脈を裂き、程なくして絶命させる。

 それを見届けることなく、俺は【常人化】を起動。


 それに合わせて常世刃の形を普通の剣に戻してから、《電光石火》を用いてもう一体のゴブリンの移動。

 背中を切り裂いて、その傷口に《サンダー》を叩き込んだ。


「キィィィイイイィィィ!!?」


 同時に聞こえる、ゴブリンの悲鳴。


 そして地面に崩れ落ちるのを確認してから、俺はマナウルフに向けて飛び出した。


「【妖人化】」


【妖人化】を起動して、常世刃の形を杖に変える。

 同時に、《電光石火》でマナウルフに急接近。杖で頭を殴り付け、怯んでいる間に《雷切》を発動し、胴を薙ぐ。


 何とか生き残ったマナウルフと、もう一体のマナウルフは俺に勝てないことが分かったのか、逃げ出した。

 それを追うことなく、俺は一体目のゴブリンとオークに目をやる。


「キィ!キィキ」


 それに気付いたゴブリンは、小さい悲鳴を上げてから撤退する。

 マナウルフが殺されなかったのを見て、逃げても殺されないと思ったのかどうかは知らないが、俺は追わないので問題ないだろう。


「───さて」

「……ヴルルルルル」


 残ったオークを改めて睨む。

 するとオークは、低いうなり声を上げてこちらを威嚇してきた。


 それを戦闘の合図だと勝手に判断し、もう一つの能力を起動させる。


「───【鬼人化】」


 それは、俺が玄鬼さんに勝ったときに手に入れた、新しい力。

 鬼人(ワーオーガ)の特性は、有り余る筋力と───魔力の欠乏だ。


 その特性の説明は後でするとして。

 見た目の変化だが…一部分を除き、あまりない。

【■■化】で手に入れた変身能力では、髪や目の色が変化する。

 それは取得した相手のものに依存していて、【獣人化】ならアグニの赤。【妖人化】ならナチュルの黄緑。【狂人化】なら反転の白。【廃人化】は…分からないが、恐らく“青”原遊夢の青。


 しかし、玄鬼さんの髪や目は黒色で、俺とは大差ない。

 強いて言えば若干筋肉が強くなった気はするのだが…服の上からでは分からないだろう。


 それでも、違いはある。

【常人化】と【鬼人化】の一番の違いは、角の有無だ。

 世間一般で言う鬼には、多かれ少なかれ角が生えている。その中で、玄鬼さんの角は太く、強固で強そうなものだ。

 それをトレースしたような角が、俺の頭にも生えている。



 ───話を特性に戻そう。

 筋力の増強とだけ言えば【獣人化】と大差無いように思えるが、【獣人化】と【鬼人化】は全く違う能力だ。


 まず一つ。【鬼人化】状態では、速度の増強が見込めない。【獣人化】は野を駆ける獣のようなしなやかな筋肉で、その用途はどちらかと言うならば、瞬発力や速力に利用されるものだ。

 対して【鬼人化】は、昔話にでも出てきそうな鬼そのもの。クレーン車のように、スピードを捨て、攻撃力にだけ特化している。


 つまり、【獣人化】を柔とするなら、【鬼人化】は剛の力なのだ。

 因みに、魔力の使用に関しては【鬼人化】の方が悪化しており、《電光石火》すら起動出来ない。


 そして、常世刃は一つの変身に対して、三つの武装を持っている。

【常人化】は、剣と短剣、杖。

【獣人化】は、短剣と鎖鎌、クロー。

【妖人化】は、弓に杖、短剣。

【狂人化】は【常人化】と共通で、【廃人化】は弓に銃、短剣と剣の二刀流だ。


【鬼人化】は───。


「一、撃!」


 鬼人そのもののスペックを用いて、オークへ一歩踏み込む。

 その瞬間に、常世刃を“鉄拳”の形に作り替え、そのままオークの鳩尾にボディブローを放つ。


 オークが怯んだのを確認してから、今度は回転し、鉄拳を“ハルバード”に変え、ハンマーのようにオークを叩く。


「オオオオォォォォオオオオォォ!!?」


 雄叫びを上げながら、オークが槍を突き出してきた。


 それを、形を鉄拳にすることにより回避してから、“大剣”に変更。

 見よう見まねでユートの一撃を再現し、オークを一文字に両断した。


「───ふぅ」


【常人化】状態に戻ってから、血を払う。

 周りに敵が居ないことを確認してから、俺は『グランドフォレスト』から脱出。

 家に帰ることにした。


 常世刃の使い勝手は上々。

【廃人化】を手に入れる前の俺だったら使いこなせなかっただろうが、今は【廃人化】があるため、二流程度の技量には追い付けるのだ。

【鬼人化】

鬼の力をその身に宿す。

【獣人化】とは違い、単純に壊す為の力が発達するが、反面魔法の能力が著しく下がる。


外見的には、頭に角が生え、筋肉が少しだけ盛り上がる

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