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俺はこの世界で  作者: ロン
メインストーリー:俺はこの世界で邪神を倒す
13/125

12話 ウォールとリエイトの勝負

 突然、リエイトと名乗った神が二つの分身を作り出す。

 本体を含めて三人になった彼女は、其々の相手を見ている。かくいう私にも、分身の一人が敵意ある視線を送って来ているのだ。私としてはマリア様の容態の方が気になるのだが。

 いや、もしかしたら、彼女ならマリア様の状態のことも知っているのではないだろうか?

 その考えに至った私は、彼女の提案、つまり闘いの申し込みを受け入れることにする。


「私にもやれというのか?良いだろう」


 そう言った瞬間、私を見ていたリエイトの分身が私目の前に瞬間移動し、私たちを包み込む形で半球を展開。結果私の目は闇に包まれる。

 そして、闇が晴れると、


 さっきまでいた神殿を数倍広くしたような部屋が目に入った。


(見た目は少女でも中身は神、という訳か)

 マリア様も転移程度なら出来ることを知っているので、それほど驚かなかった。


「どうかなウォール。この部屋の出来は?」

「あぁ、良いと思うぞ」


 前言撤回だ。まさか転移だけでなく、新しい空間まで作っていたのか。

 早く事を済ませたいので、私はリエイトに話掛ける。


「単刀直入に聞く。お前、マリア様に何かしたのか?」

「まぁ、うん。ちょっとしたイタズラを、で、僕をどうする?」

「勿論、私が仕える神を侮辱した罰として、お前を斬る」

「うん、それなら話は早いね。じゃあ、早速やろうか?」


 そう言って、リエイトは構えると同時に凄まじい殺気を放つ。

 その殺気に、私は一瞬気圧されそうになるが、直ぐに立て直して自分の得物である大剣を構える。

 そんな私の様子を見たリエイトが、小さく笑う。

 ………恐らくだが、このリエイトは相当弱い。私はラックのような直感や、【危機察知】のような【スキル】も持っていない為、詳しくは分からないのだが、私なら思うからだ。

 ───自分より実力が大きく下回っている相手と戦うことが、楽しい訳が無い、と。

 そう考えると、このリエイトの実力は、精々私と同レベルぐらいだろう。


「じゃあ、このコインが落ちればスタートだよ」

「……………」


 無言を肯定と取ったのか、リエイトはコインを弾く。空をクルクルと軽やかに回るコインがそのまま下へと落ちていき、それが落ちたことが見えた瞬間、


「行くよ。《ファイア》!」


 リエイトが魔力を帯びた炎を放って来た。ここで【スキル】を使い、手の内をバラすのも良くないので、そのまま回避する。

 自分が動こうと思ってからのタイムラグがそれなりにあるが、その分相手の動きを見れば一応カバー出来る。それを見たリエイトは、私が即座に行動出来ないのを見越して急接近してきた。

 加速しながら、拳に魔力を溜めている様子が伺える。あれに当たれば、きっと私は為す術なく吹き飛ばされるだろう。少なくとも、自分があれを避けられないことは分かるし、あれを普通に防げないことも分かっているつもりだ。ラックの様に軽装であったり、魔法の扱いに長けていればどうとでもなったのかもしれないが、そうではない私には、この攻撃を防ぐ術は持っていない。


 ──────私に【ジャストカウンター】が無ければ、の話だが。


(【ジャストカウンター】)

 リエイトの拳が私の顔面、いや、私の鼻の皮膚に当たるかどうかというギリギリのタイミングで【スキル】を発動する。

 その結果、拳の純粋な破壊力や纏っている魔力を倍以上で跳ね返された(・・・・・)リエイトが凄まじい勢いで吹き飛んだ。

 ………勿論追撃はしない。私はラックの様に速く移動できないし、遠くまで届く魔法を撃つこともできないからだ。だから私は、敵を待つ。本当の戦闘だと、そのまま敵が逃げてしまうこともあるが、私は追わない、追えない。だが、それで敵が増えても私には関係ないのだ。

 ──────私の【スキル】である【ジャストカウンター】は、ありとあらゆる力を跳ね返す。たとえそれが物理攻撃でも、魔法でも、世界すら破壊する衝撃だろうと、タイミングさえ合わせれば、例外なく、だ。

 そのタイミングがギリギリ過ぎて、まともに体得するのに一年半は掛かってしまったが、それも良い思い出だろう。

 そんなことを考えている内に、リエイトがこちらまで戻って来ていた。警戒心を高める私を気にせずに、私に称賛の言葉を放つ。


「う、ぐ。もっと手加減すれば良かったなぁ。甘く見てたよ。まさかあの速度の攻撃に正確な反応を返すとはね。一応、予想はしてたけどさ」

「そうか。私の【ジャストカウンター】は甘くは無いぞ?」

「そうみたいだね。それじゃあ、これならどう?」


 そう言ったリエイトは、高速で移動しながら大量の魔法を放ってくる。放たれている魔法は全て見えにくい風属性で、基本の《ウィンド》から、斬撃の様な《風切》、小さいが速い《風の弾(ウィンドショット)》など様々だ。

 私はそれらを大剣で弾き、避けられそうなものは避け、それでも対処出来ないものは【ジャストカウンター】で跳ね返す。だが、大量の攻撃の内、幾つかは私に届く。鎧がある程度のダメージをカットしてくれるが、魔法の衝撃で体に痛みが走り、その結果集中が疎かになり、被弾する量が増える。


(このままでは、埒があかないな)

 被弾する量が増えるのを承知で、体の動きを抑える。そして、一つ、はっきりと息をした。

 これをするのは、とてつもない集中力を必要とする。

 ───行くぞ。


「…………ハッ!」


 リエイトの攻撃を、全て【ジャストカウンター】で跳ね返す。しかしそれでは、高速で移動しているリエイトには当たらない。当然だ。【ジャストカウンター】は跳ね返す【スキル】であり、跳ね返した力が追尾する力は持っていない。

 だが……


「うぁっ!?」


 リエイトが呻き声を上げる。高速で移動しているにも関わらず、何故リエイトに被弾したのか?

 答えは単純だ。【ジャストカウンター】は追尾性能を持っていないが、跳ね返す角度を調節することは出来るのだ。つまり、私は攻撃を跳ね返す速度とリエイトの速さを計算し、その上で攻撃を跳ね返したのだ。

 暫く反射による偏差射撃を続けていると、リエイトがこちらに近づいてきた。どうやら、接近戦に持ち込むらしい。

 私は大剣を使い、リエイトのラッシュを防ぎ、隙があれば攻撃をする。リエイトの攻撃には、最初ほどの力は宿っていない。私の【ジャストカウンター】を警戒しているのだろう。しかし、その分速さは増している。それは少しずつ私を傷付け、その結果、私は一瞬、リエイトから意識を反らしてしまった。

 それを見逃すリエイトではなく、容赦ない連撃を仕掛けてくる。

 まず、鎧の上からボディブローをくらい、天井近くまで吹き飛ばされる。リエイトが追撃を加えようと跳んできたので、タイミングを計り【ジャストカウンター】を発動させるが、フェイントでタイミングを外され不発。《風の槍(ウィンドランス)》で横に吹き飛ばされたあと、いつの間にか移動していたリエイトに踵落としをされる。その一瞬に、どうにかして剣を振り、リエイトの腹を半分ほど切り裂いた。


「ガハッ!?」


 最後に天井近くから落ち、大剣から手を放してしまった。この衝撃のせいか殆ど体が動かない。遅れて、グチャ!という生々しい音が聞こえた。恐らくリエイトも落ちてきたのだろう。


(負けて、たまる、か)

 私は這って移動し、剣を探して掴むと、まず立てないかを試みた。結果は失敗。どうやら立つ力は残っていない様だ。それを確認すると、私は剣を投げる。他でもない、私の真上に。

 こんなことをする奴は他に居るのだろうか?いや、多分居ないだろう。私のやろうとすることは、下手をすれば私自身が死ぬのだから。

 狙いは、リエイトの頭。一度確認したあと、剣に意識を向ける。

 剣が私の頭に落ちてくる。私はそれに合わせて【スキル】を発動し、


(【ジャストカウン……】!?)

「惜しかったね。ウォール」


 それはリエイトに掴まれて止まった。

 リエイトがゴバッと、血を吐く。それは私のすぐ隣の床に落ち、跳ねた血が私の顔に掛かった。

 それに気を取られていると、リエイトが剣を掴んだまま倒れこんでくる。

 私は一瞬反応が遅れて──────


 私は、自分の剣に頭を貫かれて死んだ。



 ------------------


「ここは………?」


 気が付くと、神殿に設けられた自室で寝ていた。鎧も着ていない。

 どういうことか分からず、首を傾げていると、隣から声がかかる。


「一応、僕の勝ちかな?」

「そうだな。折角マリア様の無念を晴らせると思ったのだが」

「いやいや、マリー死んでないから。それに、途中からそんなこと考えてなかったよね?」

「そこまでバレていたか」


 リエイトの一言で、あれが夢では無かったことを悟る。リエイトも神なのだ。死んでも大丈夫な空間程度は作れるのだろう。

 冗談を言うと、本気にはしてくれずに、私の本心を指摘してきた。なんとなく、悪い奴のような気配はしなかったので、普通に戦っていたが、どうやらバレていたらしい。ふと窓を見ると、見事な月が見えて……月?


「済まない、リエイト話は今度だ。私は家に帰る」

「え、あ、うん。いいけど、なんで?」

「今日は妻の誕生日でな。早く帰らないと娘と妻に叱られるうえ、息子が嫌がらせのつもりで脛を蹴り付けてくる。ではな!」

「あ、うん、またね」


 リエイトと挨拶をしたあと、大急ぎで部屋を出る。広間には誰も居なかったので、そのまま扉を開けて外に出たあと、家に向かって全力でダッシュする。

 家に入った私を待っていたのは………


「………ハァー、ハァー、た、ただいま」

「お父さん遅いよー!」

「罰のキーック!」

「おぉぉぉぉ……、さ、流石に止めてくれないか?シルド。アイも、シルドを止めてくれ」

「お父さんが悪いんだからね!」


 なんとなく予想出来てたアイの小言とシルドのキックだった。本当に、脛にキックは凄く痛い。しかも小言も正論なので何も言い返せない。ってあれ?妻の姿は?


「遅かったですね。あなた」

「!?ま、待ってくれルミナ、話せば分か」

「こちらに来て、話をしましょう」

「やーい、お説教部屋だー!」

「反省してね!お父さん」

「シルドとアイも、覗いてはいけませんよ?」

「「………はい」」


 騒がしかった家が静まりかえる。見ての通り、我が家では妻ことルミナが一番立場が大きい。普段は優しいのだが、その分、怒ると恐い。


 結局、あのあとしっかりと叱られ、最後に小声で、「いつも心配だから、せめて記念日には早く帰ってきて」と泣きながら言われた。

 ……..次は気を付けよう。

 こうして、我が家の少し騒がしいルミナの誕生日パーティーは過ぎて行った。

 寝ているときにルミナが私の腕を抱いていたのは、ここだけの話である。

【スキル】解説


【ジャストカウンター】

タイミングを合わせて発動することで、どんな攻撃でも跳ね返すことができる。

物理攻撃、魔法攻撃、呪いなど、例外はない。


※タイミングがとてもシビアであり、使いこなすのは困難。

攻撃を跳ね返す際、角度を調節することが可能。

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