表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少年で人生やりなおそ  作者: うもうぶとん
幼少期編
8/73

変態さんこんにちは

振り向くと白く長い髪をなびかせた青年が立っていた。背は父と同じくらいだろうか、細身ですらっとしている。タキシードを着ているということは、夜会の参加者なのだろう。

彼は妖艶な笑みでこちらに近づいてくる。月明かりに照らされているせいか、とても神秘的な雰囲気だ。

タキシードを着ていなかったら男性か女性か見分けがつかなかったかもしれない。いや、それ以前に人間なのかも怪しいところだ。


 「僕は男です」


女の子に間違われることは少なくないが、今日はちゃんとタキシードを着ているのに…。


 「ああ、申し訳ありません。あまりにも可愛らしかったので。君はもしかしてウィリアム・エインズワース殿かな」

 「そうですけど、あなたは…?」

 「やはり…私はテオドール、テオドール・ベクレルです。テオ、とお呼びください」

 「はあ…」


やばい、ちょっとおかしい人に絡まれてしまったかもしれない。


 「君の父、エインズワース公爵にはずいぶんお世話になったものです。それにしても、珍しいですね。公爵は滅多に夜会には参加しないのに、今日は君たちもつれて参加とは」

 「今日はユリエルのお披露目もかねているので、僕とルシアンに会わせたかったみたいです。年の近い友達が少ないから…」


 「そうですか…ユリエルと…。では私ともお友達になってはくれませんか?友達は多い方がいいでしょう。ウィル、と呼んでもかまわないですか?」


テオは僕の手を取り、目の前に跪いた。俺とテオとじゃ年が離れすぎてて友達っていう感じにはならないと思うんだけどな…。

軽くうなずきながら後ずさっていると


 「テオドール!何をしている!ウィリアムから離れろ!」


ユリエルの怒号がとんできた。ああ、ルーがびっくりしてしまっているではないか。


 「おやユリエル、ごきげんよう。すっかり反抗期になってしまって…昔はあんなに私に懐いてくれたのに」

 「いつの話をしているんだ。だいたい、お前のような変態に懐いていたのは俺の人生の汚点だ」

 「汚点とはひどい。あの頃のお前は可愛かったですよ。もちろん今でも可愛いですが」

 「だまれ!」


すっかりおびえてしまったルーをユリエルから預かると、ルーは俺にぎゅっとしがみついてきた。ああ、俺の天使は今日も可愛い。


 「そちらの天使はウィリアムの弟君かな?初めまして、テオドールと言います。お名前を伺ってもよろしいかな?」

 「…るしあんです」


おそるおそる顔を上げてルーが名乗ると、テオは崩れ落ちた。


 「何と愛らしい!兄弟揃って、いや親子揃ってまるで絵画のような美しさだ!」


この人やっぱり変態だ。どうしよう…

変態の登場に戸惑っていると、足音が聞こえた。


 「ウィル、ルー、そろそろお暇しよう」

 「「父様!」」


父様の登場に心底ほっとして、ルーを抱えたまま駆け寄る。

すると、俺とルーを抱き上げてそれぞれおでこにキスをくれた。


 「やあテオドール、君も来ているとは知らなかったよ」

 「ごきげんよう、エインズワース公爵。ああ、今日もお美しい」

 「ありがとう。でもウィルとルーには程々にね。この子たちはあまり知らない人に慣れてないんだ」

 「申し訳ありません…おびえさせるつもりは無かったのですが、あまりにも可愛らしかったものですから…」


急にしおらしくなったテオをみて、あんまり悪いやつでなないのかもと感じた。


 「二人とも、こちらはテオドール・ベクレル。今は魔法学院に通っているから、

  君たちの先輩にあたるかな」

 「学院の先輩として困ったことがあれば何でも仰ってくださいね。必ず力になりますので」 


学生なのか!ずいぶん大人びている。しゃべらなければ儚げな麗人で通りそうなのに、なんだかもったいない。


 「ああ、そうだ、挨拶回りも済んだし屋敷へ帰ろう。ユリエル、今日はありがとう」

 「い、いえ!」

 「おとうさま、こんどゆーりにおにわのばらをみせてもらえるおやくそくをしたの!またここにきてもいい?」

 「そうか、よかったね。ぜひまたお邪魔しよう。ワイアットにも話しておこう。お前達二人が来ると言ったら喜ぶだろうね」

 「やったー!」

 「では帰ろう。ユリエル、テオドール、また」


 「ウィリアム、ルシアン、また近いうちに会おう」

 「はい、お三方にまたお会いできるのを楽しみにしています」


俺たちは馬車に乗り込むと、ブラウニング家の屋敷を後にした。


その日を境に、エインズワース家には美しき二人の天使がいるという話が社交界で瞬く間に広まることになるとは

俺は知りもしなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ