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美少年で人生やりなおそ  作者: うもうぶとん
精霊編
57/73

入学式へ 2

何か企んでいるような笑みを浮かべた父様に少し不安を覚えたが、虎太郎を抱えて外に出ると屋敷の門の外に久々に会う人たちが待っていた。


 「ハイナーさん!ノエル!」

 「お久しぶりです…」

 「久しぶりだなウィル。訓練をすると言っておきながら中々顔を出せなくてすまない」

 「いいえ、忙しいのは分かっていますから。ルドルフやテオに魔法の訓練も見てもらっていますから、心配しなくても大丈夫ですよ。ノエルはノエルの仕事に集中してくさい」

 「ありがとう」

 「今回はハイナーのステルス魔法と、リヴィエ大尉の護衛付きで外出できるようになったんだ。本当に感謝しているよ」


父様はそう言うと俺の頭を撫でた。久しぶりの再会に会話を楽しみたい所だが、入学式の時間も迫っているので馬車に乗り込んだ。


リアルどこでもドアみたいなシステムがあるから学院までそれで行けばいいんじゃないかと思うが、ああいうドアはきちんと規制されていて、特に学院のようなセキュリティがしっかりしているところでは不用意に使えないようになっている。魔法が発達している割にアナログな移動手段がまだまだ使われているのは、そこら辺の線引きが曖昧なところがあるからという理由がある。長距離を緊急の用事で移動しなければいけない場合以外は、ほとんどの人が魔法以外の交通を利用している。魔法でパーッと移動できると思っていた俺には結構衝撃だった。


ノエルとハイナーに久々に会えた喜び、それに寝不足から来るテンションの高さも加わり、行きの馬車の中は多いに盛り上がった。


 「ところでその白いのは精霊か?」


不意に、そうノエルが聞いてきた。


 「そうです、名前は虎太郎っていってまだよく言葉が喋られないんですけど…」

 「だがコタロウの周りはとても気が落ち着いている。よほど相性が良いらしい。良いパートナーを見つけたな。この調子なら言葉だってすぐに話すようになるさ」

 「そうだと良いんですけど…僕も早く虎太郎とお喋りしたいです…」

 「焦る必要はないさ、コタロウはウィルとずっと傍にいるんだからな」


そう言って笑うノエルは俺の膝の上にいる虎太郎を撫でた。


 「ノエルも契約してるんですよね…?」

 「ああ、俺のはあまり他の人に姿を見せたがらないんだ。契約と言っても俺の傍にずっといる様な奴ではないし、かなり自由な関係だ。そのうち会わせたいとは思ってるんだが」

 「気にしないでください。いつか会えるのを楽しみにしてます」

 「ああ、難しい奴だが仲良くしてやってくれ」


そう言うノエルの顔は照れているのか少し赤くて、気恥ずかしそうに目線を外へとずらす彼は初めて見る青年の顔だった。








 「わあ〜!おっきいね!」


馬車に揺られてしばらくすると、魔法学院が見えてきた。とてつもない広さだと聞いていたが、実際に目の当たりにすると塀の終わりが見えないし、見上げると首が痛くなるほど高い。学院唯一の出入り口である門も、縦も横も住んでいた屋敷の倍はある。いつもは閉じられているその門も、今は俺たちのために開かれている。


 「他に入学式に来る人達は居ないの?」


俺たちがくぐると途端に閉じられてしまう門を見ながら聞いてみるとノエルが答えてくれた。


 「学院は多くの子ども達が在籍している。子ども達を預かっている以上、警備は万全にしなければならないから、入学式や卒業式に保護者であっても立ち入ることは基本的に許されていない。昔は許可していたが、その隙を狙って魔物や悪魔が侵入してきた事件があってな。それ以来人の立ち入りを厳しく制限しているんだ。今回もエインズワース大佐と俺、ブランデル中将の働きかけがなかったら入ることもできなかっただろうな」


そ、そんなに大変なことなのか…そうとは知らずのんきに入学式に出られるなんて喜んでしまったことが少し恥ずかしい。


 「ウィリアム様の同級生になる子達は一週間前を目処に入寮済みですから、出入りする生徒も居ませんし静かなものですね」

 「普段は生徒が沢山行き交っているからね。さて、入学式はあの大聖堂で行われるんだ。私達は二階の来賓席から入学式を拝見しよう」


大聖堂の前に着くと馬車を降りた。周囲には誰もいない。


 「もう入学式は始まってるから静かにね」


そうウィンクしてルーに言い聞かせる父に続いて建物に入った。



大聖堂に入ると、進行役の教師が話している以外は静かなもので、厳かな空気に包まれていた。

案内された席は壇上とは反対側の二階席だった。生徒が向いている方向とは逆だし壇上からも一番遠く、カーテンがあるおかげで振り向いても俺たちの顔は見えないだろう。席に着いたときには既に式は始まっており、俺の同級生達が大聖堂の前列の椅子に座っていて、その後ろに上級生達が座っている。壇上では新任の教師の紹介が行われていた。


 「では次に、学校の警備体制強化について私からお話しします。ここ一年の間で魔獣や悪魔に関係する事件が増えています。それを受けて、これからはこれまで以上に国と連携して警備を行うことになりました。外部の参加を許可していた一部の行事も今年から見合わせることになり、皆さんには窮屈な思いをさせることになるとは思いますが、理解していただきたい」


やはり学院も警備を強化するのか、高等部に入学したら本格的にルーや家族には会えそうにないな。


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