新しい家族 2
「…ル…!…ウィ……!……ウィル!」
自分の名前を呼ぶテオの声で目が覚めた。
「ああ、よかった」
ぼんやりとした意識の中で、練習場の高い天井と俺の顔を心配そうに覗き込むテオとランスロットの顔が目に入った。自分が床に仰向けに寝転がっているのに気付いて、起き上がろうと肘をついて体を起こそうとするとすかさずランスロットが支えてくれた。そうやってゆっくり起き上がると、自分の腹の上に温かいものが乗っていることに気付いた。はっきりしない意識の中で、その温もりを何となく撫でた。そうするとその温もりは俺の手にすり寄ってきて、俺もまたそれを撫で返した。
「光が収まったかと思ったらウィルが倒れていたので焦りました。もしかして契約が上手くいかなかったのか…と。でもその様子だと契約は成功したようですね」
テオがそう言うのをどこか遠くで聞きながら、腹の温もりに目をやると白い毛玉が乗っかっていた。
「けだま…?」
そう呟くと、毛玉だと思っていたものがもぞもぞと動き、顔がこちらを向いた。
「虎太郎……?」
白い毛玉は、よく見ると灰色の虎模様が入っており虎太郎を彷彿とさせた。ただ違うのは、それは猫ではなく虎だったということだ。小さいホワイトタイガーが俺の腹の上に乗っていた。
「虎に…なってる…」
そう言うのがやっとで、また俺の意識は白い光に引きずりこまれていった。
俺が再び目を覚ましたのは、自室のベッドの上だった。無駄に広い屋敷に比例して、自室もそれなりの広さがある。クイーンサイズのベッドは両手を伸ばしても、この体ではまだ有り余る。腕を布団から出して肌触りの良いシーツの上に腕を滑らせると、ひんやりとしていて心地いい。その冷たさで徐々に目が覚めていく。シーツに熱が移る頃には意識がすっきりと冴え、深呼吸すると体にこもっていた熱が吐き出されて空気が循環していくのがわかる。ゆっくりと起き上がると、足元に小さく丸まっている虎太郎がいた。それが微笑ましくて、ふふっと笑うとそれに気付いた虎太郎が起き上がり俺のもとまでよちよちと歩いてきた。布団の上は歩きづらいのか、ひどくおぼつかない足取りなのが可愛くて悶えた。
「虎太郎、これからよろしくな」
俺のもとまで来た虎太郎を抱き上げると目を合わせてそう言った。虎太郎はそれに答えるように俺の鼻をぺろりと舐めた。
そうやってしばらく虎太郎と戯れていると、部屋のドアが開かれた。
「お目覚めになりましたかウィリアム様」
ランスロットがそう言ってベッドサイドまで近寄ってきた。
「おはようランスロット、俺どれくらい寝てたのかな」
「ほんの2〜3時間でございます。丁度ご夕食の支度ができましたので、様子を伺いに参りました。起き抜けですから、少し時間を遅らせますか」
「いや、お腹も空いたし食べるよ。虎太郎のこともみんなに紹介したいし」
「かしこまりました」
虎太郎を抱いて夕食の席に向かった。