安全地帯
「ティアは一番そういうものに敏感ですからね。ルドルフが最初に来た時なんか逃げ回って大変だったものね」
「ミーナっ」
ルドルフが赤くなりながらミーナを静止する。ルドルフの反応を不思議に思っていると、隣のティアがこっそり教えてくれた。
「ルドルフは昔、隣国で特攻隊長をやってたんだ。そのせいでここに来たときはすごく荒れてたんだよ。その空気に耐えられなくて僕が逃げ回ってたの」
「そうだったんだ…」
今はそんな面影も無い。アマリアの世話を甲斐甲斐しく焼く姿は兄のようで、とても微笑ましい。
「本題に入るぞ、薬草や植物に関してはミーナが教える。体術や体の使い方はルドルフ、魔法全般は俺が教える。精霊との付き合いはそのうちわかるようになるが、ティアに聞けばいいだろう。ウィル、他に質問はあるか?」
「…あの、僕はここに通うことになるんでしょうか…?それとも、皆さんに来てもらうことになるのでしょうか…」
訓練に協力してもらえることになったのはわかっているが、ここにいるみんなに合う為にはここに俺が来るかみんなに来てもらうか、どちらかしかない。
「それなんだが、今日のようにハイナーの力で行ったり来たりするのは困難だ。訓練のように頻繁なものはなおさらな。エインズワース大佐とも話し合って、ウィルにはこの屋敷でしばらく暮らしてもらおうと思っている。君とこの屋敷は相性がいいみたいだし、ここなら悪魔から精霊達が守ってくれる。精霊が集まるとそれだけでパワーが強くなって、外部からの魔力の干渉を防いでくれる。悪魔からも、統括機関からも身を守れる。君の安全のためにもここにいるのが最前だと思っている」
「わかりました。父様も賛成しているのなら特に異存はありません。……ですが…あの…」
歯切れの悪い俺を見て、みんなが心配そうに見ている。
「どうしたの?ノエルが怖いから嫌とか?それとも俺がしつこくて嫌になっちゃった?」
心配そうに見上げてくるティアに慌てて答える。
「そ、そういう訳ではないんです…ただ、また家族と会えなくなるのかなって……」
この年になって家族と合えなくてごねるとか格好悪すぎる。恥ずかしさで語尾が小さくなる。
「そのことなら心配ない。見せたほうが早いから着いてきてくれ」
「…?…はい」
その言葉の意味が分からないまま、ティアに手を引かれてノエルの後を追った。