とりあえず、の時間
「あらあらティアったら、もう新入りの子を困らせているの?」
女性がにこやかに話しかける。
「困らせてないよ!」
ティアは頬を膨らませて反論しているが、明らかに困らせていたと思うぞ。
「そのこが…あたらしい…こ…?」
女の子が眠たげな目で俺を見てくる。フォークに刺したケーキが落ちそうになっているのがとても気になるが、隣の男性が素早くフォークをお皿に戻させた。
「そうだ、紹介する。ウィリアムだ、みんな仲良くしてやってくれ」
「ウィルと呼んでください。よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をして挨拶をした。
「私はミーナと申します。こちらこそよろしくお願いしますわ。新しい仲間なんて久しぶりなので、お会いできるのを楽しみにしてたんですのよ」
ミーナはこちらに向かってふんわりと笑いながら挨拶してくれた。彼女の着ている服が白くてふんわりしたものだからか、よけいに雰囲気を柔らかくさせていた。言葉遣いも丁寧で、とても品のある女性だ。
「わたしは…アマリア……よろしくね」
アマリアはとても眠たそうにしているが、ケーキを食べる手は止まらない。甘いものが好きなのかな…?金色の髪に青い目をして、人形のような膝丈の可愛らしい赤いドレスを着ているので動かなければ人形かと思うほどに可愛らしい。
「俺はルドルフだ、新しい仲間が増えて嬉しい。何かあれば何でも言ってくれ、力になる」
短い黒髪に逞しい筋肉、少し大きめの服の上からでも立派な体躯をしているのがはっきりと分かる。今まで綺麗な顔の人ばかりに会っていたからか、とても親近感を覚える。
「僕はティア!よろしくね!僕ウィルが会いにきてくれてすごく嬉しい!」
一番に俺に会いにきてくれたティアはニコニコしながら僕の手を握っている。
「よろしくお願いします」
ティアの手を握り返すと、嬉しそうに笑い返してくれた。
「まあとりあえず座れ」
ノエルに促され、空いているソファーに腰掛ける。隣にティアが座り、空いているミーナの隣、俺から見て左隣のソファーにノエルが座る。
「今日ウィルを連れてきたのはみんなに会わせたかったからだ。少ない精霊使い同士だ。困ったことがあれば何でも協力するし、ここにいるやつはお前が強くなる為に必要なことを知っている。これからは全員でウィルの稽古を付けるつもりだ」
「よろしくお願いします」
座りながら頭を下げた。
「そういう堅苦しいのは無しにしようよ!僕はウィルともっと仲良くしたい」
俺の腕に抱きつきながらティアが見上げてくる。黒髪を見るとユーリとエディのことが思い出され、懐かしくなってティアの頭を撫でた。
「ティアは本当にウィルのことがお気に入りみたいね」
「うん!だって久しぶりの新しい仲間だし、それにウィルはとっても綺麗だから!」
目をキラキラさせながらこちらを見てくるティアに少し居心地が悪くなる。
「そ、そんなこと無いよ…ミーナやアマリアの方が綺麗だよ……」
「ううん、そうじゃないの。勿論ウィルの髪も瞳も綺麗だけど、そういうんじゃなくて、ウィルの周りの空気がとても綺麗で居心地が良いんだ。それこそ、屋敷に入ってきたのが分かるくらいにウィルの持ってる魔力は澄んでる」
自分じゃ分からないが、ティアが気に入ってくれているようでとても嬉しい。
お久しぶりです。
これからも更新の頻度は落ちますが、少しずつ物語を書いていきたいと思っています。
気長に付き合っていただけたら幸いです。