サロン
案の定、小さな門をくぐり一歩なかに入ると一気に精霊が押し寄せてきた。
ノエルに手伝ってもらいなんとか精霊達をなだめ、やっとのことで屋敷の中に入ることができた。
「はあ…はあ……やっと入れた……」
「そのうちあいつらも落ち着くさ。それに訓練を始めればあしらい方も分かってくる。…悪いが一休みしてる暇はなさそうだ」
「え?」
ノエルがうんざりとした顔で前方の廊下に目を向けている。
何だろうと俺もそちらに顔を向けると、廊下の先のドアが勢いよく開かれた。
「ノエル!その子が新しい子?!」
ドアを開け放つと、男の子がものすごい勢いでこちらに向かってくる。
さらさらとした黒髪をなびかせながら走る彼は、そのままのスピードで無邪気な笑顔のまま俺に激突した。
俺より少し大きい彼を貧弱な俺が支えきれる訳がなく、二人揃って床に沈んだ。
「ティア!危ないだろう!ウィルを殺す気か!」
「だってだって、久々の新しい仲間なんだよ!嬉しいじゃん!」
「お前と違って頑丈じゃないんだ。ちゃんと手加減しろ」
「はーい」
ノエルが少年をどけ、俺を持ち上げた。
「大丈夫かウィル、怪我はないか」
「ビックリしたけど大丈夫です…」
「もう!ちゃんと風の精霊にお願いして怪我しないようにしたもん!」
ティアは頬を膨らませながら俺の方に近づいて触ろうとするが、ノエルがそれを許さない。
「あのね、僕はティア!これからよろしくね!もう!ノエル邪魔しないでよ!」
「とりあえず部屋に行くぞ。みんなもう来ているんだろう」
「そうなの!もう大変!みんないつもは約束通りになんか来ないくせに、全員昨日から集合してるの!おかげでこっちは大変だよ」
ティアが出てきたドアを開けると、そこはサロンのような空間だった。シンプルだが高価だと分かるソファーにテーブル。壁も天井も床も白いせいか、広く清潔な空間に見える。
高い天井に合った大きな窓は庭につながっており、そこにもテーブルとイスが置いてある。
光が降りそそぎ明るい空間だが、なんだか落ち着く。
その部屋には三人がソファに座っていた。
一人はテーブルの上のケーキを一心不乱に食べている小さな女の子。
その向かいのソファーに座ってお茶を飲んでいる妙齢の女性は、グリーンの美しい長い髪が腰までのび、真ん中で分けた長めの前髪からのぞくシンプルな眼鏡が彼女を聡明に見せていた。
最後の一人は体格のいい、というよりは巨人といっても差し支えない男性が、女の子の座っているソファーの後ろに立ち、女の子の口を拭いたりして世話を焼いていた。
小説の内容を一部変更させていただきました。