前進
「数年ぶりに現れた精霊使いにこちらのコミュニティもそわそわしているんだ、君に会ってみたいと。新しい仲間が増えることは稀だから、みんな嬉しいんだ。ぜひみんなと話してみてほしい。精霊使い同士だからこそウィリアムに教えられることが沢山あると思っている。考えてみてはくれないか」
リヴィエ大尉は真剣な目で俺の目を見つめてきた。その綺麗な蒼い目で見られると落ち着かない。
俺が何も言えず視線を彷徨わせていると、隣の父が優しく話しかけてきた。
「ウィルが嫌なら、行かないという選択肢もあるよ。でも、私は言ってみる価値はあると思う。まだこのコミュニティについては謎が多いけど、私は大尉を信じてみたい。もし、ほかの精霊使いと会うことでなにかいい変化があるのなら、積極的に試してみるべきだとは思う。それが今ではないとしても、いずれはね」
父様は俺の頭を撫でながら続ける。
「残念ながら私では精霊についてウィルに何も教えてあげられない。だから最終的に、精霊については精霊使いに指南してもらうしかないんだと思う」
「…はい」
「あまり悠長なことは言ってられないぜ。悪魔がウィルを狙っているかもしれない以上、ウィルは一刻も早く精霊を使役する術を学ぶべきだ。そのためにノエルを連れてきたんだからな」
「分かっている。それでもウィルはまだ八歳なんだ、考える時間が欲しい」
「…父様、僕、行きます。行ってみたいです」
父様が俺を思ってくれていることは分かるし、その気持ちはとても嬉しい。でも、ワイアットの言うことも理解している。このままのペースでは家族と暮らすことなんてまだまだ無理だということも、精霊使いとしての訓練をだれかに頼まないといけないことも。
俺は早く、前に進まないといけない。