初めての仲間
後のお話との兼ね合いで、一部加筆しました。
「ウィル~!元気だったか!会いたかったぞ~!」
「ア、アーサー様!申し訳ありません!屋敷の方にワイアット様が施設に来ているという報告があり駆けつけたのですが、私だけでは止めることが…」
俺を見つけるなりワイアットは近づいてきて、俺をひしと抱きしめた。苦しい。
ランンスロットは申し訳なさそうに父様に謝っている。しかしランスロットにワイアットを止めろという方が酷な気もするが。
「いいよ、ランスロット。彼の強引さはよく知っているからね。しかしワイアット、たとえ君でもこの施設に入ることは許していない。ましてやこの部屋まで無理矢理来るなんて…それと、この方はどちら様かな」
何の説明もしないワイアットにしびれを切らしたのか、父様が珍しく苛つきをあらわにした声で言葉を促す。
「説明するからそんな怖い顔するなよ、せっかくのきれいな顔が台無しだぜ」
「ワイアット」
「へいへい」
ワイアットがわざとらしく、やれやれと肩をすくめる。
しかし、彼が紹介するよりも先にローランドが反応した。
「ノエル…」
その呼びかけがまるで聞こえていないように男は微動だにしない。その様子にワイアットはため息をつき、男の紹介をした。
「こちらはノエル・リヴィエ大尉。魔法学院を卒業後に最速で大尉になった、軍で唯一の精霊使いだ」
それから場所を変えて話を整理することになった。トレーニングルームを出て、いつものリビングに全員が揃った。
「で、もう一度大尉が来た理由を説明してもらえるかな」
父様は俺を膝の上に横抱きし、ソファーに座っている。後ろにはランスロットが控えていて、さらに後ろの壁にはローランドが腕を組んで立っている。向かいにはリヴィエ大尉とワイアットが座り、その後ろの壁に凭れるようにしてハイナーが立っている。
「俺は特別研究室が独自につないでいる精霊使いのコミュニティの代表としてここに来ました。勿論ここに来ることは統括機関には知られていません。知られていたとしても奴らは手を出せませんので安心してください」
「本当にそんなコミュニティが存在するのか…」
父様はハイナーを見た。
「最初からそういってるじゃないですか…」
少し悲しそうにハイナーがため息をついた。