眠そうな侵入者
「それでは早速今日から訓練を始めよ…」
「すいません、少しよろしいですか」
「!?」
突然入り口の方から声がした。びっくりして体がビクッとしてしまったじゃないか。
でも、ここには俺と父様とローランドしかいないはず。ランスロットは父様達と入れ違いで屋敷に向かったし…。
「そのバッジ…君は、統括機関か…」
「はあ…一応そうなりますかね…」
入り口の前に立っていたのは一人の青年だった。
深い緑色の髪をしており、後ろの髪は短めなのに前髪が邪魔で顔が見えない。背はランスロットと同じくらいで、細身の体型である。しかしどこか頼りない感じがあり、細いというよりは華奢な感じを受ける。
入り口の壁に寄りかかっているためなのか、口調が妙に弱々しいせいなのか、全体的に眠そうでやる気が感じられない。
黒のシンプルなジャケットに黒いズボンを履いている。その上から足下まである黒いローブをかぶっている。
胸元には統括機関のシルバーのバッジが光っている。
「どうやってここまでたどり着いたんだい?統括機関とはいえ、そう簡単には入れないはずだけど」
確かにこの男、全く気配が感じられなかった。俺はともかく、父様やローランドが気配に気づかないわけがないのに。
それに、二重結界も張ってあるのに…。